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太古の遺物

それからのコモルは、気が向いたら冒険にでるようになった。

といっても、彼は基本的に狩に参加しようとしない。

「俺の本分はネットカフェの管理人だ。戦闘力はまったくないから、みんな頑張れよ」

「……仕方ないね」

シャロンもしぶしぶ、彼の言い分も認める。

こうして、コモルは狩に参加するのだった。

しかし、実際には狩の経験もない彼が指揮を取れるわけはない。

そんなわけで、コモルのやっていることといえばー

「シャロン。いい感じだぞ。その調子で頼む」

「へへん。僕の力を思い知ったか」

褒められて、いい気分になるシャロン。

コモルはひたすら戦っている騎士たちを褒め称えることで、パーティに参加していた。

いわゆる「遊び人」ポジションである。

「しかし、シャロンは強くなったな。もしかして戦いの天才なんじゃないか?」

それを聞いて、シャロンはますます調子付く。

「ふふ。ボクの攻撃力はすごいんだぞ。見ていて!」

そういうと、シャロンはエッグの巣に向かって駆け出す。

「ひ、姫。危ないです。そこにはスラッグか……」

「大丈夫。エレクトリックショット!」

イカヅチが広まらないように、注意して白い繭に電撃を落とす。

白い繭は一瞬で黒こげになり、中を裂いてみると感電死したリザードの死体が出てきた。

「巣の中にいるから、エッグよりリザードのほうが狩りやすいんだよ。ほら、どんどんいくぞ!」

シャロンは調子に乗って、白い繭を見つけるたびに雷撃を落として始末する。

彼女のレベルはどんどん上がっていった。

夕方になると、狩の成果を自慢する。

「ほら、105個もエッグとリザードを20匹も倒したもんね。これでレベルが10になったよ。ボクはすごいでしょ」

薄い胸を張って威張る。

「ああ、すごいすごい。よっ!伝説の勇者」

「ふっふっふ。ようやく君もボクのことを認めたか。まあこれからはボクが弱い君を守ってあげるよ」

シャロンは鼻高々で言い放った。

うまく彼女を乗せて戦わせたコモルは、自分の冒険者カードを見てほくそ笑む。

「国王レベル3になりました。自宅警備魔法「備品補充」のスキルを手に入れました」

コモルの脳内に声が響き渡った。

「『備品補充』か。結構重要なスキルかも。そろそろジュースの残量が少なくなってきたからな」

コモルはジュースが大好きで、こっそりと一人で飲んで楽しんでいた。しかしながら当然その元になる原液には限りがある。最近では心元なくなっていたので、それが補充できるスキルを手に入れて喜んでいた。

「ふーん。レベルが上がったみたいだね。でもなんか納得いかないなぁ。戦いもせずにレベルが上がるのって」

シャロンはコモルの冒険者カードをみて、そんな不満を漏らす。

「ま、まあまあ、コモル殿にはもともと戦いは向いてないみたいですし。さあ、まだ仕事が残っていますぞ。コモル殿もてつだってくれ」

トリスタンがシャロンをそうなだめた。

「まあ、戦い以外なら手伝ってもいいけど、仕事って?」

「狩の獲物を市場に運ぶことだ。ほら」

トリスタンの言うとおり、ほかの騎士たちは必死になって獲物を袋に入れていた。

「「これを担いでもっていかないといけないのかよ……」

そのあまりの量にコモルはうんざりする。

「仕方あるまい。さあ、君ももってくれ」

ズシンと思い袋を担がされた。

「重い!」

悪戦苦闘しているコモルを見て、ガラハットが笑った。

「少しはカラダを鍛えないとな。レベルが上がったんだから少しは役にたってもらわないとな」

「俺はそういうのに向いてないんだよ。どっちかといえば知的労働がやりたいんだ。あっ。なら運搬するのにちょうどいいものがあったじゃないか!まだ動かせるかも」

コモルはそう思い、以前レプトタートルを倒した所にいってみる。

しかし、そこにはいくつかのネジや鉄片などのガラクタがあるだけで、自動車の残骸はなかった。

「何で無いんだよ。鍵を見つけることができて、動かせるのはあれ一台だったのに」

「仕方あるまい。ああいう鉄の塊は高値で売れるからな。目端が利く冒険者たちに売り払われしまったんだろう。さあ、あきらめて運べ」

ガラハットにいわれて、しぶしぶ大量の荷物を担ぐ。

「うう……ゲームだとこんな苦労はいらないのに。やっぱりこの世界は野蛮だ」

重い荷物を運びながら、コモルは愚痴るのだった。


市場

王都の西側に広がる商業地で、冒険者たちが狩った獲物がそのまま運ばれて食料として売られている。

その他にも、雑貨や衣服、武器や防具、素材にいたるまでなんでも売られていた。

「さあさあ、めったに出ない伝説の盾だよ!50万マージから!」

兎人の親父が銀色に輝く円盤を掲げて、冒険者たちに呼びかけている。

「くっそ!あれは自動車のホイールキャップじゃねえか!俺のものを勝手に売り飛ばしやがって!」

それを見てコモルは悔しがるが、もう後の祭りである。

その他には自動車はこれでもかというぐらい解体されて、売りに出されていた。

「さあ、珍しい水晶の板だよ!」

「この素材を溶かしてで剣を作ったら高く売れるぞ!」

「やわらかいソファだ!ひとつ10万マージからだよ」

ガラス部分は家の窓に使われ、エンジンなどは武器や鎧に、そしてシートは金持ちそうな貴族が買っていく。

中でも一際観客たちの目を引いたのは、余計な部品をすべてはずした車体本体だった。

それらは窓ガラスの代わりに木で扉がつけられている。

「さあさあ、鉄でできた馬車の荷台だよ!雨が降っても風が吹いてもびくともしない上に、やわらかい車輪がついているから乗り心地抜群!こんな荷台は王様だってもっちゃいないよ!」

司会の男の煽り文句で、観客たちの熱狂は最高潮に高まる。

「1000万マージ!さあ、他にいないか?」

それを見ていたシャロンが、コモルの裾を引いた。

「ねえ。コモル殿。あれを買おう。あれは人に渡すのは惜しいよ」

「バカ言うなよ。なんで俺の物を買い戻さないといけないんだ。しかもあんなハリボテに」

コモルは首をふって断る。

「そんなぁ。あれがあったら、国民を買い戻した時に家の代わりになるとおもったんだけどな」

シャロンは残念そうにつぶやく。

「ま、まあ駐車場には他にも車があるから。鍵がなくて動かせないけど家というか、テントの代わりにはつかえるよ」

そうコモルが慰めていると、自動車の車体は2000万マージで王家が落札していった。

「ここじゃ、あんな物が売れるのか?」

「ああ。太古の時代に地球は空から降ってきた赤い星の土に覆われてしまったが、たまに地中からああいう現代では作れない物が発掘されることがある。現代では作れない珍しい物ばかりだから、高値がつくのだ。しかし……」

トリスタンはそこで言葉を切って、残念そうな顔になる。

「どこを掘ったらああいう物が出てくるのか、さっぱりわからないし、町から出たら強いモンスターがうようよしているので発掘作業は危険が伴う。まあ、宝探しみたいなもんだな」

「この時代では作れないものだって?まてよ。だったら

トリスタンの言葉に、コモルはあることを思いつくのだった。

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