ファーストコンタクト
コモルはいきなり衝撃を感じて、目が覚める。
「なんだ!地震か!」
そう思って飛び起きると、店内の照明はすべて消えていた。
「ヤバス!逃げないと!」
そう思ってあわててブースを出るが、受付の店員や客の姿が消えていた。
「おいおい、何が起こったんだよ……」
あわてながらもしっかりとロッカーからかばんを取り出して、店を飛び出す。
一歩出たところで、その場に硬直してしまった。
「○△∵×」
店の周りは、鎧を着た数人の美少女たちに包囲されている。
彼女らはわけのわからないことを話し合っていた。
「○○※?」
彼らの最前列には、金髪ツインテールの美少女が、騎士の格好をした美少女に守られるように固まっていた。
美少女はこっちを見たまま、あんぐりと口をあけている。彼女の耳は鋭く尖っていた。。
「えっ!」
もう一回見直すと、周囲に集まっている人たちの顔があきらかに人間のものではない。
緑色の肌をして大きな目と牙をもつ、ゴブリンと呼ばれるモンスターにそっくりだった。
「ば、化け物!」
恐怖に震えたコモルは、逃げようと外に飛び出す。
「■▲▽▲!」
赤髪の美女が、美少女たちに何か叫ぶ。すると彼女らはいっせいに杖や武器を向けてきた。
「う、うわぁ!」
パニックになりながらも、自分の原付にまたがる。不機嫌なうなり声を上げてエンジンがかかった。
それを見て、鎧を着た青髪騎士が前に立ちふさがる。着ている鎧は、よく見ると胸が膨らんでおり、女ものだとわかった。
彼女が土に剣を突き刺して何か呟くと、周りの地面から水が吹き上がり、コモルを包もうとした。
「くそっ」
コモルは慌ててその場から逃げると、乗っていた自分のバイクにまたがり急発進させる。
「×××」
それを見た赤髪の美女が迫ってくる。彼女は恐ろしい顔をして、剣を振りかざして呪文を唱えた。
すると、炎でできた鞭がコモルを拘束しようとする。
「やばい。」
そう思って、バイクを別の方向に向けて走り出した。
「!?××××」
「しるかバーカ。逃げるが勝ちだ。おらおら、跳ね飛ばすぞ!」
コモルは奇声をあげながら取り囲む美少女騎士に突っ込む。
美少女たちはうなり声を上げて威嚇してくる原付バイクに恐れをなし、道をあけた。
「と、とりあえず、変な奴らから逃げないと。おらおら、どけどけ!」
美少女たちが驚いているうちに、原付は包囲を脱出して門の中に逃げ込む。
そこは、まるで漫画に出てくるようなファンタジーの世界だった。
周囲の建物は中世ヨーロッパ風で、道行く人はゴブリンなのに普通に服を着て生活している。
「ど、どこだよここは!さっきまで日本にいたはず……え?」
バイクの前方に巨大な壁が見えてくる。それは中世風の城の壁だった。
「いったい何がおこったんだ!」
呆然としていると、後ろから声がする。
振り向くと、角が生えた馬に乗った少女たちが追いかけてきていた。
「まずい。これ絶対俺のこと捕まえるつもりだ」
「○○○○!!!!」
白い髪をした少女が杖を振ると、突風がついて彼女たちの体を浮き上がらせる。
コモリはさらにスピードを上げ、バイクで町を走るが、追っ手は信じがたいスピードで追いついてきた。
「△△△△!」
白髪の美少女が杖をふるうと、突風が吹いてバイクのバランスを崩す。コモルは必死に体制を立て直すことで、なんとか転倒を免れることができた。
「マジかよ……ほんまもんのファンタジーじゃねえか。まてよ。チート能力は?魔王を倒せとか無茶ぶりしてくる神様は?もしや眠っていて、テンプレイベントがスルーされたとか?」
そんな風に思っていると、目の前に黒髪で黒いローブをまとった女の子が現れる。
彼女は両手を広げると、通せんぼをしてきた。
「危ない」
思わずコモルはブレーキを踏み、一瞬動きを止める。
次の瞬間、バイクは少女の杖から出た黒い霧につっこんてしまう。すると強烈な冷気が襲ってきて、一瞬でバイクを凍りつかせた。
「あ、終わった」
コモルはあっさりとあきらめて、手を上げて降参の意思を示し、友好的な笑みを浮かべる。
「オーケイ。俺は友達だ。みんな、仲良くしようぜ」
次の瞬間、彼女たちはコモルを押し倒した。
「い、痛くしないで。俺はまだ童貞なの……」
涙目で懇願していると、金髪の美少女がやってきた。
「こ、こうなったら、こいつを人質に……」
コモルはいきなり起き上がり、金髪少女に抱きついて拘束しようとする。
すると金髪少女は悲鳴を上げて逃げてしまい、殺気立った他の者たちに縛り上げられてしまった。
「おい!弁護士をよんでくれ!黙秘権を行使する!」
そうわめく声は無視され、問答無用で引っ立てられていくのだった。