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ご馳走

その日の夕方

合計300万マージのお金を手に入れたコモルは、意気揚々とネットカフェに帰ってきた。

「ただいま」

「まったく。君はどうして狩りにこないんだよ!しっかり稼がないと、いつまでも国民を助けられないんだぞ!」

帰ってくるなり、モンスターハントで泥と汗にまみれて不機嫌になっているシャロンに絡まれてしまった。

「わかっているよ。ちょっと金策に行って来たんだ」

そういって、担いでいた袋を下ろす。袋からは金貨がこぼれて、床に散らばった。

それを見て、シャロンがごくっと喉を鳴らす。

「す、すごい。こんなお金どうやって……?」

「まあいろいろとな。お前たちみたいな野蛮人とちがって、俺みたいな文明人はいろいろと売るものがあるのさ」

コモルはにやりと笑いながら、袋をしまう。

「これは俺のものだからな。やらないぞ!」

「なにさ!けち!ちょっとくらいいいじゃん!」

シャロンが悔しそうな顔になったとき、マーリンとタマが大荷物を抱えて入ってきた。

「二人とも、どうしたの?そんなご馳走」

二人が抱えているのは、市場で買ってきた食べ物である。

「今日のお夕食ですよ。市場を回っておいしそうなものをコモル様が買ってくださいました。今日はご馳走ですよ!」

「おいしそうです!」

二人ともうれしそうに満面の笑みを浮かべている。

彼女たちはヒラヒラとした綺麗な服を着ていた。

「……その服、可愛いね。しかも高級素材で作ってある。そんな高い服、どうしたの?」

「コモル様が作ってくれたんです」

それを聞いた途端、シャロンの頬が不満そうに膨れ上がった。

「ず、ずるい!ずるいずるい!二人だけにそんな服をあげるなんて!」

涙目になったシャロンは、ポカポカとコモルの胸をたたく。

「お、おい。落ち着けよ」

「なんで君はボクに冷たいんだよ!君はボクの騎士なんだぞ!それなのに、他のみんなにだけ優しくて、ボクをいじめて!」

そうつぶやきながら涙をながすシャロンに、さすがのコモルも可愛そうになってきた。

「別に二人だけに服をあげたわけじゃないぜ」

「そうですよ。コモル殿は騎士団全員にこの服を仕立てるようにラビット商会と交渉してくれました。明日、他のみんなと一緒にサイズを測りに行きましょう」

マーリンもそういって慰める。

「ぐすっ……本当?」

「ああ。本当だ。別にお前だけ冷たくしているわけじゃないから安心しろ。ハーレム維持のためにはみんな公平に。これがファンタジーの鉄則だからな」

それを聞いたシャロンは、泣くのをやめて笑顔を見せた。

「ハーレムはいやだけど、ありがとう」

そういうシャロンの頭を撫でながら、コモルは心の中で思う。

(やっぱりこいつはチョロインだな。よしよし、騎士団ハーレム計画は順調だ)

彼の野望は着々と進行していくのだった。


夕食

コモルは、気前よく騎士団にご馳走を振舞った。

「すごい……。逆立ち鳥の肉に、チーズザリガニの蒸し焼き。味噌フナ貝のお鍋……」

シャロンは並べられた料理を見て、ごくっと喉を鳴らす。

「コモル様の奢りですよ。皆さん、感謝しましょうね」

マーリンがそういうと、騎士団のメンバーたちも、一斉にコモルに対して感謝の言葉を述べた。

「コモル殿……ありがとう。こんなご馳走は久しぶりだ。姫も喜んでいる」

隣の席のトリスタンからは、手を握って礼を言われる。

「い、いいってことよ。だけどさ……その、もっとまともな食材は売ってないのか?牛とか豚とか……」

コモルは並べられた食材を見て、ちょっと引いている。

ギルドからの帰りに市場に行ったのだが、一般的な食べ物は殆どなく、狩ってきたモンスターがそのまま店で売られているような感じだった。なんとか食べられそうなものを選んで買ってきたのだが、なぜかみんな高い値段がついていた。

コモルの言葉に、トリスタンはちょっと首をかしげる。

「牛?豚?なんだそれは?」

「……いや、なんでもない。だけど、いつかはまともな食材を作れるようにしてやる。俺の胃袋のために!」

「その意気だ。俺たちと一緒に旅にでようぜ。そしていつか、みんなで幸せに暮らせる国を建ててくれ!」

ガラハットがガハハと笑ってコモルの背中を叩く。

騎士団は和やかな雰囲気に包まれるのだった。

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