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ネットカフェ召喚

次の日

シャロンたちは。城壁門の側にある騎士団がテントを張っている場所に「女神の願い石」を設置した。

周囲にはゴブリンやオークの姿かたちをした冒険者たちがいて、シャロンたちに冷たい目を向けている。

「あいつら、城壁の外で何やっているんだ?」

「滅びたエルフ国の騎士団らしいぜ。貧乏だから城に入って宿を取る金もないんだろうよ」

そんな声が聞こえてきて、シャロンは屈辱に震える。

「今に見ろ。女神様に頼んで、ボクたちの国を再建してもらうんだからな」

プンスカと怒るシャロンを放っておいて、騎士たちは女神にコンタクトを取る儀式を始めた。

「いいですか?アイ様は「ヒューマン」という種族を守るための神ですが、姿かたちが似ている我々にもきっと手をさしのべてくれるはずです」

トリスタンは期待を持って、黒い板の下についているスイッチを押した。

「「ヒューマン」って?」

「伝説によれば、太古この世界は『ヒューマン」という種族によって、高度な文明が築かれていたそうです。しかし、空から赤い流星が降った夜、この星は大部分が土砂に埋もれてしまい、ヒューマンたちの文明は滅んでしまったのです」

「……そのせいで、こんな世界になったのか」

シャロンが暗い顔で聞く。

「はい。ヒューマンたちはダンジョンに隠れることで、その暗黒時代を乗り切りました。それから数百年後、ヒューマンの文明を引き継ぐものとして、我々エルフ族が創られ地上に送られたのですが……」

トリスタンの声が物悲しく響く。シャロンの顔もどんどん暗くなっていった。

「最初はうまくいっていたのです。我々エルフは共に創られた亜人族の支配者層として国を作り、平和に暮らしていました。しかし、10年前のある日突然『魔神族』が現れ、彼らが生み出したモンスターがエルフ王国を滅ぼしました」

「私の父様もその時にしんじゃったんだよね……」

シャロンはトリスタンの言葉にうなずく。

「私たちエルフ族は最もヒューマン族に近い種族として、その血を守り通してきました。私たちはエルフ族の貴族として、王国を再建しないといけないのです」

「うん」

シャロンは頷く。

「私たちにはある伝説がありました。もし我がエルフ王国が滅ぼされたときは、『女神の願い石」をささげよ。きっと女神は願いをかなえてくれるだろう』と」

「『女神の願い石』を手に入れるため、長い旅を続けるうちに、俺たちエルフ族は散り散りになっちまった」

ガラハットが悔しそうに呟く。

「仕方ないよ。僕たちは住む住居もないホームレスだもん。たとえ奴隷として扱われたとしても、雨露をしのげる場所と食べ物がほしかったんだよ。だからみんなすすんで他の国の奴隷になっちゃった」

シャロンは悲しげに目を伏せる。

「……ねえ、本当にぼくたちが住める国を作れるの?」

シャロンが疑いの目でトリスタンをにらむと、彼女はあわてて本を取り出した。

「だ、大丈夫です。長年王国に伝えられています」

「……うさんくさいなぁ。女神様は本当にお願いを聞いてくれるのかな?そもそも、どうやったら王国って再建できるんだろう?」

シャロンはそうふくれっ面するも、周りの騎士たちになだめられた。

「まあまあ、とりあえずやってみましょうよ」

「でも、もしかして変な王様とかが来たりして、『王国を再建したほしければ、ワシの妻になれ」とか言われちゃったりして」

シャロンはそうブツブツと不満を漏らすが、ガラハットに笑われた。

「まあ、そうなっても最悪ヒューマンの顔をしていればいいじゃないですか。あたいたちエルフの間でも、男は人間の血がどんどん薄くなって他種族の顔をしている奴が増えたからなぁ。まあ、あたいは強くてたくましい男なら、それでいいんだけど」

ガラハットにそういわれて、シャロンも気をとりなおす。

「そうだね。このさい贅沢はいえないか。よし。いくよ!」

シャロンは覚悟を決めて、女神の願い石をじっと見つめた。

「管理マザーホスト・アイにアクセス」

トリスタンがそう呪文を唱えた時、黒い板の表面に女神が映った。

「はーい。AIのアイちゃんだよ。何の用?……って、人間じゃなくてエルフたちかぁ」

アイと名乗った女神は、つまらなさそうにシャロンたちを見る。

「アイ様。お願いです。我らの国を再建させたまえ」

「えっと……いきなり国を作るってのは無理なんだけど、君たちでがんばってよ」

いきなり拒否されて、シャロンたちは動揺した。

「そ、そんな!」

「……もっと具体的に頼んでくれないと。できるだけのことはしてあげるけど、国を再建したいなんて抽象的すぎるよ。そんなの私ができるわけないじゃん。自分たちの手ですべきことでしょ?」

そういわれて、トリスタンは必死に頼み込んだ。

「で、では、みんなが安心して住める場所を作ってください。我々は流浪の民。根拠地が必要なのです」

「ボクたちみんなが寝泊りできて、面白い娯楽にあふれていて、おかしやジュースなんかもあったりする城がほしい」

「こほん。姫」

トリスタンに注意されて欲望がダダ漏れだったことに気がつくシャロン。

「はぁ……わかったよ。君たちの希望に該当する施設はアレだね。

転移衛星にアクセス。過去の世界から、「ネットカフェ」を転移」

女神が呪文を唱えた瞬間、ズズンという衝撃が地面を通じて伝わってきた。

「うわぁぁぁ!なんだこれ!」

「なんでいきなり建物が?」

外から人々の騒ぐ声が聞こえてくる。

「ついでに「自宅警備」のスキルを持っている管理人も召喚しておくから。彼に全部任せなよ。またね」

一方的に言って、女神は消えていった。

「いってみよう!」

テントをでたシャロンたちが外に出てみると、城壁門の外に三階立ての四角い城が現れていた。

「やったぞ!」

シャロンと騎士団は歓喜の声をあげるのだった。


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