表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/34

冒険者ギルド

次の日

騎士団は馬車いっぱいにエッグやリザードをつみ、大きなタートルの死体を引きずっていた、

「どこに行くんだ?」

「モンスターの死体を冒険者ギルドに持っていけば、換金できる。ついでにこの周辺のモンスターのボスであるレプトタートルが倒されたことをゴブリン国の王に報告して、あの城に住み続けることを認めてもらおうと思ってな」

トリスタンの顔には緊張が浮かんでいた。

「他にもいろいろ必要なものがあるからな。この機会に買い物をするつもりだ。お前はどうする?」

「もちろん、ついていくさ!」

コモルは即答した。

「仕方ない、お前はマーリンと一緒に留守番してもらうつもりだったのだが」

「俺をのけ者にしようったってそうはさせないさ。いい機会だから、この世界のことをいろいろ見てまわりたいしな」

はしゃぐコモルを、トリスタンはなんともいえない目で見つめた。

「見なかったほうがよかったと思うかも知れんぞ」

その言葉は、うかれるコモルには届いていなかった。

冒険者ギルドを兼ねている宿に入り、荷台のモンスターを査定してもらう。

「これは……レプトエッグやレプトリザードがこんなにたくさん。しかもボスであるレプトタートルまで。どうやって倒したんですか?」

「へへん。そこはボクたちの実力ってことで」

ゴブリン族の受付嬢に威張るシャロン。トリスタンは苦笑して告げた。

「ここは私とガラハットが交渉しますので、姫たちは寛いでいてください」

「わかったよ。それじゃシルビア、コモル。食堂でおいしいものをたべよう!」

シャロンは二人の手を引いて食堂に入っていく。中にはごつい顔をした冒険者たちでいっぱいだった。

「……ていうか、ほぼ全員人型モンスターだよな」

冒険者たちの中で、人間の顔をしているのは彼らエルフしかいない。他の冒険者はゴブリンだったりオークだったりトカゲだったりした。

これだけ人型モンスターに囲まれていると、コモルは自分のほうがおかしいような気がしてくる。

「冒険者は自由に国の移動が認められていますからね。最近魔物が活発化しているので、冒険者になる者が増えています。一番魔物が弱いこの国に冒険者が集まっているのでしょう」

シルビアがそう説明する。

あらためてここは見知らぬ世界なんだなと思いながら、コモルは席についた。

「お待ちどうさま。千足ムカデのムニエルです」

ウサギメイドがもってきた食べ物を見て、コモルは食欲を無くす。それは虫型をしたモンスターだった。

「いや……おれは……」

「どうしたの?美味しいよ」

シャロンが食べながら首をかしげる。

「千足ムカデって、絶品なんですよね」

シルビアも足がたくさん生えたが生えた巨大なムカデを、平気で切り分けて食べていた。

(くっ……い、いや、元の世界だって昆虫食ってあったし)

無理やり自分を説得しながら食べてみる。

「……うまい」

貝みたいな味がして美味だった。

そんな感じで食事を楽しんでいると、近くの席から野次が飛んだ。

「みろよ。エルフ族が一丁前に人前で飯を食っているぜ」

「臭え臭え」

見ると、ゴブリンの冒険者が大げさに顔をしかめて笑っている。

それはあっという間に食堂全体に広がり、シャロンやコモルを笑う声であふれた。

「おい。男のエルフだぜ!」

「もう絶滅したとおもったんだがなぁ。よく生きていたもんだぜ」

「ま、どうせすぐ死ぬだろうぜ」

今度はコモルの顔を見て笑い出す

「なんだよこいつら。モンスターの顔しているくせに」

コモルは不快そうな顔になるが、シルビアにたしなめられる。

「しっ。我慢してください。現代では、ヒューマンの顔をしている者は嫌われているんです。特に男性は」

「へっ?なんで?」

きょとんといるコモルに、シルビアはこの時代の常識を語った。

「なるほど。大昔はどこの国でも人間の顔をしたエルフが貴族として威張っていたけど、エルフ王国が魔神族に滅ぼされて以来、完全に立場が逆転したということか」

「ええ。下手なことを言うとこの国の王家に目をつけられてしまいます」

コモルとシルビアがひそひそと話している間に、冒険者たちの話題は滅んだエルフの王国のことになっていた。

「しかし、情けねえよな。お貴族さまと威張っていても、今じゃほとんどのエルフが奴隷扱いか」

「おい。お前もあいつらを買ってやれよ」

一人が調子に乗って言い放つと、言われたほうの強そうな男が顔をしかめた。

「冗談だろ?あんな頭に毛が生えた不細工、タダでもいらねえさ」

そのゴブリン族は、シャロンを指差してあざ笑った。

「……そこのチンピラ、今なんていった?」

不細工といわれた瞬間、シャロンは怖い顔をして睨み返した。

「はっ。俺たちにとっては、てめえらはよわっちい不細工さ。なんたって、女は強くて頭ツルツルしてないとなぁ」

「ああ。みてみろよ。あの生っちろい白い肌。貧弱なツルペタ体形。あんなのじゃ……」

そこまで言ったとき、シャロンの両手が輝きだした。

「ボクが貧弱だって?なら、力を見せてやる!」

「おい!やめろ!」

「やめてください!」

コモルとシルビアが必死になだめようとするが、頭に血が上ったシャロンは聞く耳を持たない。

「エレクトリックサンダー!」

冒険者ギルドに、絶叫が響き渡るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ