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コモルの苦悩

その夜、二人の騎士が、酒を飲んでいた。

「ガラハット。どうして急に、シャロン姫様を実戦で戦わせようとしたんだ?今までは後方で待機させていたのに」

トリスタンが聞くと、ガラハットはぷはぁと酒臭い息を吐いた。

「そりゃ、あのコモルとかいう奴が現れたからだよ。あいつも姫と同じレベル一だ。同じようにゼロからはじめる奴がいたら、姫もがんばれると思ってな」

「なるほど……しかし、いいのか?もし万が一、姫の身に何かあったら……」

トリスタンは心配するが、ガラハットは無用という風に首を振った。

「このケアンズ平原は、一番モンスターが弱い所だ。レベル上げにはちょうどいいし、寝泊りする環境も整っている。少々きつい修行を施しても大丈夫さ。男もいるから、励みになるだろう」

「男って……コモル殿のことか?」

トリスタンの問いかけに、ガラハットは頷く。

「俺は結構あいつを買っているんだよ。いくら滅んだ国とはいえ、姫は王族だ。なのにあんなにフランクに接してくる奴って、めったにいないぞ。奴は大物かもしれん」

「うむ……それは確かに。神経が太いというか……私もそういうところは嫌いではない」

トリスタンも顔を赤らめる。

「おいおい、お前も本気になっちまったのか?まあ、女ばっかりでいると、たまには男がほしくなるよな。最近の男はアニマル面ばかりだし」

ガラハットはにやにや笑っている。

「貴殿と一緒にするな!私は身持ちが固い家の令嬢なのだ。この体は姫に捧げた物。姫の役に立つと思えば、どんな男にも身を捧げる。逆に、姫に害を及ぼすのなら、誰であろうと斬ってやる」

トリスタンは危ない目をして、剣を振り上げるのだった。


その頃、コモルは自分のブースで、マンガを読みながらこれからのことを考えていた。

(電気は何とかなった。空調も今のところは大丈だ。だけど……この世界を舐めていたかも。人権や法整備が進んだ世界じゃないんだ。自分の身は自分で守らないといけない)

そう思って身震いする。今はエルフ騎士団という仲間がいるのでなんとかなっているが、決して彼女たちは無償でコモルを守ってくれているわけではないのだ。

彼が「騎士」としての役目が果たせないと見ると、容赦なく見捨てられるだろう。

そうなると、ネットカフェにすら残れずに、裸で追い出されるかもしれない。

(強くなることも必要だけど、いざというときにこの世界の金も持っておかないと。このネットカフェの『マンガ』は売れるかな?でも、ここで使われている文字に翻訳しないと……)

シルビアに貸してもらった本を読んで、コモルはため息をつく。この世界で使われている文字はアルファべットで、おそらくは英語を元にしたものと思われるが、残念ながらあまり読めなかった。

「どうしょうかな……まあ、今はなるようにはかならないか」

面倒くさくなってそう思ったとき、トントンというノック音がした。

「いいぞ」

「……」

無言で入ってきたのは、真っ黒いパジャマをきた黒髪美少女だった。

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