キョンシー
此の話で、序章は終わりです。
雪原との電話を切った俺は妹が待ってる噴水広場に向かうことにした。
噴水広場はすぐに見つかった。
街の入り口から真っ直ぐ行くとあった。
そして、この時点で俺はある事に気付いた。
そう、妹のゲームでの見た目を教えてもらっていない事だ。
………電話しよう。
【もしもし】
【あ、バカ兄。バグ直った?】
………雪原との事はまた今度でいいや。
【ああ、直ったよ。
それで、今噴水広場に居るんだがお前は何処だ?】
【えーと、私はリアルをピンク髪にした姿で、噴水広場のベンチに座ってるわ】
【そんだけ分かればまあ、見つかるだろ】
えーと、ピンク髪、ピンク髪、居た。そして目があった。こっちに来る。
「はぁ、ようやく来たわね」
「お前、よく俺だって分かったな」
「リアルと変わんないんだから、すぐ分かるわよ。
ていうかバカ兄。その札何?ていうか、明らかに初期装備じゃ無いわよね?何があったの?」
………しまった。紅音はキョンシーの事知らないんだった。
説明しようにもキョンシーになった件は雪原が絡んでるし、絶対紅音に、雪原の事説明しなきゃ駄目じゃん。
…………しょうがないか。
「妹よ」
「何よ?」
「この姿には、深〜い事情が有るんだ。
聞いてくれるか?」
「何よ、勿体ぶって。早く説明しなさいよ」
「では説明するとしよう………」
その後俺はアレが初期バグではない事と、では何なのかと、雪原について話した。それはもう懇切丁寧に。
「…………つまり、バカ兄が兎平原ってとこに居たのも、そんな姿なのも、大腿その篠原って人の所為なのね?」
そんな姿とは、、酷い言い草だな。
「まあ。その通りだな。」
「…………」
………あぁ〜、怒ってらっしゃるな。此れは。
はあ〜面倒だな〜〜。
「ふ、ふ、」
「ふ?」
「ふっざけんじゃないわよーーーー!!!!!!!」
街に木霊する妹の叫び声。
周りからの視線が妹に集まる。
妹は怒りで周りが見えてないらしく、心の叫びを吐き出し続ける。
「何で私がそんな事で小一時間も待たないといけないのよ!!!!!ていうか、バカ兄も何でそんな奴とフレンドになってんのよ!!!!??」
「悪い奴ではなさそうだったからな」
「悪い奴ではあるでしょ!!!どう考えても!!!!運営も何でそんな奴に好き勝手やらせてんのよ!!!??」
「雪原の技術がらとんでもないレベルだからだろうし、彼奴が居ないと困るからだろ。本人があんな小さな会社に入ったのは好き勝手に出来るからだろうしな」
ふむ、そう考えるとやっぱり、頭がいいのだろうな。
しかし、好き勝手する為にそこまでするとは、雪原とは気が合いそうだな。
「今、絶対気が合いそうって考えたでしょ。」
「……ナゼ、バレたー」
「はあ、もういいわ。私としては待たされた事以外を怒るのは筋違いだしね。
本人がまるで気にしてないんだったら、別に問題無いわね。」
「まあ、俺の事で、お前が怒るのは確かによく分からんが、まあ、俺の為にやってくれたなら有難いな。」
有難いって言い方はちょっとおかしいけどな。
「ふぇっ!?……ふ、ふふん。もっと感謝しても良いのよ?」
「ところで、お前は種族何にしたんだ?」
ピンク髪のツインテールに魔女っ娘みたいな格好が今の紅音の格好だが、その格好からは職業が魔法使いかな?ってぐらいにしか分からず、種族は分からない。
「エルフよ。魔法適正が高いらしいからね。」
そう言って、紅音は俺に尖った長い耳を見せつける。
「魔法適正って何なんだ?」
「魔法適正っていうのは、文字通り魔法使いとしての適正で、高ければ高いほど魔法が発動する速度が速いらしいわ」
成る程な。
それにしても魔法かー。
羨ましいな。俺はステータス見た限りじゃ魔法は使えないからな。
そういえば、エルフだから高いって言ったか?聞いてみるか。
「エルフだからとか、変わるものなのか?」
「………本当に何にも知らないのね。
だから下調べはしとけって言ったのに。
怠けるからそうなるのよ」
失礼な。事実だけど。
「良い?そもそも種族っていうは_________」
十分後
「成る程な。大体分かったぞ。」
纏めるとこういう事だ。
種族一つ一つにそれぞれ特化している物がある。
獣人は何の獣人になるかを選ぶことが出来て、何の獣人になるかでなれる職業が変わってくる。ステータスは素早さ特化。
獣身化というスキルで素早さを更に上げれる。
その代わり力と魔力が低いらしいが、職業によっては魔力の不足分を補えたりするらしい。
鬼人は力が強い。魔力は少なめで、素早さは低い。鬼神化と呼ばれるスキルを持っているらしく、それで力が上がるという、脳筋に優しい仕様。
ドワーフは鍛治スキルなどの所謂生産職に必要なスキルのレベルが上がりやすいらしい。
戦闘はあまり得意じゃない。
エルフは魔力、魔術適正、MPが非常に高い。
後、エルフのプレイヤー一人一人が工夫次第で魔術を作れるらしい。楽しそう。
悪魔はステータスは特に秀でたものは無いけど、一人一人がランダムで特殊能力を覚えるらしい。
キョンシーは……分からないらしい。
妹曰く、「職業にも種族にも一人のプレイヤーしかなれない所謂ユニーク職業、種族があるらしいわ」だそうだ。
要するに、
実は俺は凄かった、という事だな(`・∀・´)
「あ、そうだ」
「何よ?」
「キョンシーになって新スキルを覚えたから、試したいんだけど、一番近場の戦闘地帯ってどこ?」
「それなら取り敢えず始まりの平原に行きましょうか」
始まりの平原か。いかにも初期エリアだな。
「よし、早速行くか」
……十分後
始まりの平原に着いたが、早速モンスターが居たな。
あれは……スライムかな?
スライムらしき魔物が三体居た。
「よし。彼奴を狩ろう」
「分かったわ。じゃあ私は魔術士だから、
後方で援護するわね。」
よし、じゃあ取り敢えずこの呪紋ってスキルを使ってみるか。
………呪紋を使うと、全身に黒色の文字が浮かび上がって、力が湧いて来た。今ステータスどうなってんだ。
ステータス
名前モフ太郎
性別男
種族キョンシー(僵尸)
職業剣士
HP50/40
MP0
力50
防御力20
魔力0
魔法適正0
素早さ50
所持スキル
剣術level2
投擲level1
武術level2
跳躍level1
呪紋
右手装備軍刀
左手装備軍刀
頭防具彼岸の札
体防具彼岸の服
脚防具彼岸のズボン
靴防具彼岸の靴
所持品
僵尸の札
初心者歓迎ポーション
所持金
0G
……スゲー火力特化だな。
HPの最大値が減ってるな。半分になるのか、その代わり力と素早さが二倍か。
強いけど、防御力も下がってるな。五分の四ってところか。
使い所は考えないとな。
なんて考えてると、一体目のスライムが転がって来る。
左の軍刀を振り落として真っ二つにする。
二体目のスライムには右の軍刀を投げつけて倒す。
三体目は……もう倒されていた。
「………戦闘終了か。短かったな。」
軍刀を回収しながらぼやく。
「こんなものでしょ。スライム三体だけなんだから。」
「それもそうか。」
「そんな事より、ドロップ品の回収しないと。」
おっと、そうだった。
さて、ドロップ品は何かな?
スライムボディー✖︎2
スライムコア✖︎1
「どう使うんだ?これ?」
「魔術の研究と、錬金の素材ね。」
「要するに俺は要らねえな」
そう言って俺は紅音にドロップ品を渡す。
「いいの?じゃあ遠慮なく」
「………そういえば、聞きたい事があるんだがいいか?」
「何よ?」
「スキルとステータスってどうやって上がんるんだ?」
「はあ……バカ兄は本当に何も知らないのね。
いい?スキルってのは_________」
五分後(`・∀・´)
「つまり、そういうことよ。分かった?」
ふむふむ。
「分かった。ありがとう」
紅音曰く、
スキルとは、特定の行動を繰り返し行う事で取得出来、levelを上げれる物らしい。
例えば、跳躍という名前のスキルなら、ジャンプしたり、戦闘中に相手を踏む台にしたりしたら、levelが上がるという事だ。
そしてステータスをどうやって上げるかだが、これもスキルと、特に変わってない。
力を上げたいなら相手を攻撃すればいい。
防御を上げたいなら攻撃を受ければいい。
素早さを上げたいなら走ればいい。
地道な作業になりそうだな……。
けど、面白そうだな。
自分に合ったスキルとステータスを自由に取得できる。けど、自由という事はそれだけやる事が多いという事だ。だが、やれる事も多い。これからの楽しみを考えていると我ながら珍しく自然と笑みが零れる。
いかんな。楽しみ過ぎてしまうと、何処かで、失敗しそうだ。
さて、俺が笑ったのが、珍しいのか、さっきから、ブツブツ言ってる、紅音をいい加減元に戻すか。
「おーい、紅音ーー?」
「はっ!!ビックリして、正気を失ってたわ。」
何やってんだこいつ。
まあいいか。
「これからどうする?」
「うーん、そうね、今7時だから、9時まで、ステータス上げしましょうか。」
「まあ、初日はそんな物か。
・・・・そういえば、俺には関係無いけどさ」
「??何よ?」
「MPってどうやって回復するんだ?」
MPの回復方法。一見俺には無関係に見えるが、
回復方法が、どんな手段で可能で、どれだけ速く出来るかどうかは、対魔術士相手に必要不可欠な情報だ。此れが分かるか、分からないかで、相手の技の発動タイミングをより早いタイミングで見切れる。
一撃一撃が、強悪な威力を叩き出す、紅音みたいなタイプだと特にそうだろう。
というわけで、是非教えていただけないかなーと、紅音を見る。
「………本当に何も知らないわね。」
俺今後何回何にも知らないって言われるんだろうな(´・ω・`)
「MP回復する方法は、ポーションを飲む事と、MP回復技があるわね。ポーションは初期の町に普通に売ってるわ。
回復技は魔法職なら自動で覚えてるスキルにあるわ。スキルだから、効果や、次に使えるようになるまでの時間はlevel依存ね。
でも、level上げるのは相当使わなきゃいけないし、level上げても次に使えるようになるまでの時間は大して変わらないわ。」
ほうほう。どちらも其れなりに有用に聞こえるが、後者は奥の手みたいになるのかな?
基本は前者だろうな。自動回復が無いのかと思ったが、恐らくスキルの中にあるだろうな。今後に注目だな。
「よし、じゃあ、9時まで狩るか。」
さて、俺は此れからどういうスキルを鍛えようか?これからの事を考えて自然と笑みが零れる。楽しみでしょうがない。モフ太郎はどう仕上がるのだろうか?
大体の方針は既にたった。後は実行して、其れが何処までこの世界で通用するかを試す。
慌てず堅実に行くとしよう。
嗚呼、雪原には感謝しないとな。
そう思い、破顔う自分が居た。