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「なぁ。にぃやん、オレも混ぜてくれよー。にぃやーん」

 にぃやん、にぃやんと、扉のむこうで(あんず)がうるさい。


「ねえイッチ。アンちゃんも戦力になるよ」

 実の兄貴がそんなこと言ってもいいのか。自分の妹が可愛くないのか? と言ってやりたい。

 相手はワケの解からん異生物だ。だいたいな、異生物の『異』の字はなんかしらんが怖いだろ。異世界だろ、それから異空間、異次元に異物。それから異性だ。不純異性交友……あり? 何か喜色いいのも混じってんなって、なんの話しだっけ?


 そうそう。

「杏が危険な目に遭ったらどうすんだ。心配じゃないのかよ」


「なぁ。何の算段だよー。オレだけのけ者はねえだろ?」

 木の扉をつま先で突っついてガタガタと揺らす音がやけに耳障りだ。


「大丈夫だって、いまのところ命の危険はないんだから」とキヨッペは平気のようだ、ならここで俺が反対することもないかもな。それよりあんまり熱くなっていたら、変な誤解を生むかもしれない。


 俺は変目で見つめてくるキヨッペから視線を外して、ドアの向こうへ伝える。

「よし、いいぞ。アン、入って来い」


「うっひょぉー。ありがてぇ……」

 胸の辺りが妙に盛り上がった白いTシャツに、ぴちぴちの半パン姿。日に日にオンナとしての柔らかみを帯びた体型に変わってきたのがよく見て取れる。


「アニキー! 小ノ葉ねえーちゃん」

 まるでじゃれる子猫のようだ。勢いよく部屋に飛び込んでくると、楽しげに俺と小ノ葉の背後から回り込んで、俺のわき腹から頭を突っ込んできた。


「なぁ、何の相談? どっか行くの? 夏休みも終わりだもんな、海か? 海へ行くんだな?」

 俺と小ノ葉を交互に見上げて、杏は満面の笑みを広げた。


「夏休みが終わろうとしてんのに、海行くような奴はバカって言うんだよ」

「あー。いま全国一千万の人を敵に回したぁ」

「お盆を過ぎたら海に入ったらダメだって知らないのか、お前?」


「え――っ。そうなの?」

 派手に驚いて丸い目をする杏。幼さの残ったこの顔は子供の時のまんまだ。


「毒を持ったクラゲが出てくるんだよ」

 説明するキヨッペにも杏は同じ目をやり、

「へぇー、そうなんだ。いいこと覚えた。あした奈々子に言ってやろ」

 と散々感心しておいてから、

「じゃあ、山行くの?」

 杏は屈託のない笑顔を曝け出し、俺は溜め息混じりで訊く。

「お前、受験生だろ。大丈夫なのか?」


「あー。そっちは順調だぜ。夏季の模試の結果が思ったより良かったんだ」

 グイッと肩から俺と小ノ葉を押し退けて、明るく言いのけた。

「富士山行こうぜ、イッチ」

「ば……バカやろ。のんびりしてやがんな、お前」


 今度は小ノ葉に向かって丸い目を見せた。

「ねー? どーしたの?」

「あのね。戦いの準備してんの」

「戦い? あ……」

 ようやく目の前で正座をしていたキャサリンに気付いた。


「このあいだのキレイな女の子」

 容姿だけな。


「久しぶりでんな……あ……久しぶりね。アンズちゃん」

「ども……」

 こう見えてこいつは人見知りが激しいのだ。こそこそと俺から離れると、借りてきたネコみたいに背中を丸めて、キャサリンと同じように膝小僧をそろえた。


「どう? アンちゃんも戦力になりそうだろ?」

 と言ったキヨッペに、またまた異様な盛り上がりを見せる杏。

「戦力ぅ?」

 目の奥がみるみる輝き。

「カチコミかー。どっかカチコム算段なんだー。オレも行く、行くぜ。どこ?」


「遊びに行くんじゃねえんだぜ」


「分かってるさ。何年何組? どこ学校の連中なの?」

「お前は、押忍番か!」

 呆れた野郎だな。あ、いやオンナか……。


 仲間に入れるんなら正しい情報を与えなければならん。俺は真剣な面持ちで伝えてやる。

「相手は……シンギュリアンなんだ」

「シュン……」

 一刻ほど杏は固まったが、すぐに眉根を寄せた。

「どこのお嬢様学校だよ。弱そうな名前だなぁ」

 さっきから、そればっかだな、コイツ。


「ちょっとアン、こっちへ来い」

「何だよ、アニキ?」

 嬉しそうに膝でにじり寄って来る杏のショートヘアに手を入れてぐしゃぐしゃと掻き乱し、

「あのな。俺たちは番長グループじゃねえんだ。対立校をつぶす話なんかしてねえって」


「とにかくさ。アンちゃんも混ぜてあげるから、そこ座って」


「鬼ごっこに混ぜるみたいに言うなよ……」とキヨッペに言っておいてから、なんか閃いた。

「そうだ、鬼じゃん。鬼が出るんだぜ。へへ、鬼退治か……。アン、よく聞け、俺たちは鬼退治に出かけるんだ」


 杏は、「オニっ!」と絶句してから、

「いいねぇ。オニ退治してぇ。で、どこの学校?」

 ダメだこりゃ。



 ひとまず杏はヘッドロックの刑に処して黙らし、俺はニタニタしている杏の兄貴、キヨッペへ尋ねる。

「それで武器はできたのか?」


「武器だってぇー?! あ、痛ててて」

 俺のヘッドロックを無理に外そうとしたので、さらに締め上げてやった。


「実験的だけどね。陽電極エミッターって言う名前にしたんだ」

 と言ってキヨッペは引き出しを開けて長細い物体を取り出して見せた。


「へ? それが?」

 パッと見は電球の無い懐中電灯だった。


「キャサリンと調べていたら黒コロ丸の体は負に帯電してる粒子からできてることが解ったんだよ。それでプラス電極を作ったんだ」


「それに関してはちょっと訂正しとかなあかんなと思ってまんねん」

 金髪にも見て取れる栗色のサラサラの髪を揺らしながら、キャサリンが頭を下げた。

「初めて黒コロ丸を見た時ちょっと動転したことを謝罪するワ。ホンマすんませんでした」


 やけに素直な言葉に驚きを隠せない俺だが、

「ああ。あんな動揺したお前を見たのは初めてだからちょっとビビっちまったぜ」


 キャサリンは恥ずかしげに宝石のような色の目を潤ませて、

「そうやねん。オドもマナも抜け落ちた真水なんてありえへんから、きっとそれが原因で黒コロ丸が生まれたんやと勘違いしたんや。後で仲間らと分析した結果なんやけどな。黒コロ丸は動物でも植物でもない。これは確実や。ほんでな。店の花たちにも聞き込みをしたら案の定、強いマイナスイオンを二階から感じるってみんなが口々に言うんや」


「そこまで聞いて僕にも思い当たる節があったのさ」

 その後はキヨッペが続けた。


「それがシンギュリアンさ。Ai機器にはびこる電磁生命体だと結論付けたのさ」


「でもマイナスイオンて体にいいヤツだろ?」

 俺の一言でキヨッペの口調に火がついた。


「マイナスイオンが身体に良いか悪いか実証されてないんだよ。だいたいマイナスイオンて言うモノ自体が眉唾なんだ。負に帯電した物体、あるいは分子ってのは確かにあるよ、でもそれが身体にいいなんて、どこかの企業が勝手に言いだしたのさ」

 相変わらずの力説だな。


「でも店の花たちはマイナスイオンが二階から漂って来るって言ってんだろ?」


「マイナスイオンって言うのは俗な言い方なんよ」

 とキャサリンが口挟み、

「植物族は大気イオンに敏感なんや。たぶんそういう意味の負の帯電物を感じたんやと思う」

 続いてキヨッペ。

「だから僕は陽極電極を空中で振動させるモノを作ったのさ。これで大気を正イオンに帯電して、黒コロ丸を中和させてしまうんだ」

 キャサリンもキヨッペも俺の顔をじっと見て説明を続けるのは、俺の理解度を探るためだ。失礼なヤツラだぜ。当たってるけどな。


 そんなわけで俺の質問は情けない。

「それで……中和するとどうなんの?」

「負の電子が陽極に飛び込んで消えるのさ」

「つまり?」

 この手の話しになると、俺の頭は急激に回転が鈍る。


 キヨッペは肩をすくめて言う。

「黒コロ丸をやっつけられるんじゃないか」

「あ、そっか……」

 俺の腕から力が緩み、杏がヘッドロックから逃れた。頭を擦りつつ、

「高校生って難しい会議をするんだな」

 そのまま小ノ葉の横へとすり寄り、

「でもよー。オレは竹刀持参でカチコムぜ。いいだろ?」

「カチコミじゃねえって言ってんだろ。オニ退治だ」

 横座りする小ノ葉の影から顔だけを出していた杏は、へへっ、と鼻先を指でこすってこの場をいなし、俺は杏を横目ですがめてからキヨッペに最終質問だ。

「武器はできたとしてだな……それでいつ来るんだよ、その技術的特異点ってのは? 来月か? それ以上になると待てねえぜ」

「おっ。オニが来る日だな」

 杏は黙っててほしいな。


 キヨッペは半笑いの顔を俺と杏に注ぎながらこう言った。

「2045年ごろだよ」


「ニセン!」「よんじゅうごねん!?」


 思わず杏と見詰め合った。

「何だよアン。俺と声をそろえるなよ」

「いつのオニ退治の話してんだよ」

 ヤツはちょっと怒った顔を見せやがった。


「いま聞いたろ? 2045年だってよ」

「え~。27年も先じゃん……」

 平たい顔して杏がすくっと立ち上がった。それを見上げる俺。

「どこ行くんだよ?」


「オレ、公園行って素振りしてくらー」


 杏はこっちを顧みることなく扉を片手で開け、

「オニが現れたら知らせてくれよな。オレ忙しい身だから会合は兄貴たちに任せるぜ」

 元気に階段を駆け下りて行った。


「逃げちゃったね……」と小ノ葉。

 俺も杏と一緒に遁走したいよ。


 大いに肩が重くなった気分でキヨッペに尋ねる。

「今から27年先の話し合いを今するって、早くない?」


 ところがキヨッペは心外だとばかりに頭を振った。

「なに言ってんの。ちっとも早くないよ。何が起きるのか分からないんだよ。その証拠にフェアリーテールの二階には謎の生き物が誕生してんだろ?」


「せや。まだ何をするってワケやないねんけど。植物界にも動物界にも所属せえへんモンが蠢いてるのは異常事態や。このことに人間らは誰も気付いてない。警鐘を鳴らしてんのは植物族だけや。せやけどコンタクトがでけへん。でもここには小ノ葉はんがおる。この人のおかげで動物族とコンタクトが取れる。ほんでカズトもそれを見た……」


 キャサリンは上目に俺を見た。

「見たやろ? 研究所の隅っこにおった連中……」

 キャサリンに言われるまでもないが、俺はそれにうなずき、キヨッペはこぶしを握って力説する。

「とにかくこういう時は同志を集うもんなんだよ。僕たちはシンギュリアンの侵攻を防ぐレジスタンスなんだ」


 レジスタンス……なんかカッコいい響きがある。胸の辺りが熱くたぎってきやがった。

「正義のために働くか……」

 そう想起して、ふと思考を過るものがあった。


「俺たちの周りに適した人材がいるじゃないか」

 ぐるりと部屋の中を見渡して、

「まずこの南側にある商店街には俺たちがいるだろ」

 それから店の外を視線で指で示す。


「他にも正義のためなら立ち上がるヤツらを俺は知ってる」

 本箱に並んでいた高校の名簿を広げて、俺は思い当たる人物をそれぞれに指し示した。


 空手部主将、後藤田忠(ごとうだ・ただし)。ヤツは北側の商店街。肉屋のせがれ。

 剣道部主将、佐藤健吾(さとう・けんご)も同じく八百屋のせがれだ。

 それから、レスリング部キャプテン、藤木山聡(ふじきやま・さとる)は駅前中央の本屋。

 弓道部主将、小平三平(こだいら・さんぺい)はオヤジさんが立花家具の専務。

 柔道部主将、錦田伸三郎(にしきだ・しんざぶろう)はサラリーマンの息子だが、俺たちの仲間だ。

 そう格闘技連合会の連中さ。


「でも仲間になってくれるかどうか……」


 不安げなキヨッペに俺は断言する。

「正義のためだと言えば、あいつらはほいほい参加する」

「だね。正真正銘の正義の戦士だもんね」と小ノ葉も賛同。

「そいつらって、あのアホアホ軍団でっしゃろ」

「ああそうだ。お前がカラかって遊んでたヤツラさ」

 でも俺の考えは間違っていないはずだ。あいつらはこういう話に乗りやすい性格をしている。俺がそうだからきっとそうだ。体育会系のノリってこんなもんさ。


 それでも渋るなら、俺には奥の手がある。

「奥の手?」

 小ノ葉が不思議そうな目を俺にくれた。たぶん背中から生えたもう一本の腕でも想像してんだろうけど、説明は省略だ。

「まぁ、まかせておけって」


 とにかく招集を掛けてみようということに、あいなったのだ。





 午後2時。昼飯時間を少々過ぎたいつもの牛丼屋。


「と言うワケだ。話は分かったか?」


「オジさん。大盛りもう一丁」

「あいよー!」


「オレも大盛りください」

「若もんは食べっぷりがいいから気持ちいいねえ。大盛りもう一丁!」


「こ、こら。人の話を聞けってんだ。聞かないヤツはおごってやらんぞ」


「わーったよ」

 と言って立ち上がったのは 空手部主将の後藤田。この中ではリーダー格だ。


「おい、野郎ども、ちょっと食うの止めろ。カズトの話を聞いてやれ」

「でもよ。異生物だっけ? え? なんだっけ。シンギリアンだっけ? なんだよそれ?」


「ジンギスカン食いてえー。佐藤、お前食ったことあるんだろ?」

 と尋ねる弓道部の主将、小平(こだいら)の質問に同期したように顔を上げる柔道部主将の錦田(にしきだ)

「そうそう聞いてるぜ。駅向こうにできたレストランだろ? ジンギスカン鍋な。ヒツジの肉って言うじゃねえか。オレ食ったことないんだよな。美味いのか?」

 だんだん話が逸れてきた。


 牛丼のゴハンを飲み下していた佐藤が平然と答える。

「おうよ。家族と行ったけど美味かったよ。でもちょっと物足りなかったな」

 まぁこいつらの胃袋に入れるには軟弱な食い物ぽく感じるのは、実は俺もジンギスカンを食ったことがない。


「だよな。ヒツジだもんな。オレなら一頭丸ごと食ってやるよ」と言い出したのはレスリング部キャプテンの藤木山。

「へん。オレだったら二頭はいけるぜ」


 放っておくと今から食いに行こうなんてことにエスカレートするから急いで止めに入る。

「お前ら猛獣かよ。ヒツジの話なんかしてねえって。シンギュリアンって言ってだなAi機器を乗っ取る化け物なんだ」


「何でオレラがー?」と誰かの声がして、

「Ai機器なんて一生見ることねえよ」

 もっともなことを言うヤツ。俺も最近までそう思っていた。


「こりゃだめだ。集めた連中の知能を甘く見ていたワ。俺よりひどいな」

 俺はあきらめ気分に陥ったが、キャサリンがすくっと立ち上がった。


「お願いします。協力してください」


「するする。協力します」

 あ、いや。挙手することねえし。


「あ、この野郎、弓道部! 抜け駆けすんな」

「キャサリンちゃん。オレにまかせとば、その黒いの全部食っちゃるぜ」

 お前のほうが化けもんだぜ、レスリング部。


 でもって――。

 店の隅っこで黙々と牛丼を平らげているは、杏と奈々子ちゃん。

「今日はアニキと小ノ葉ちゃんのオゴリだってっから、食えるだけくっとけよ。次いつゴチソウになれるか分からねえからな」

「うん。わかってるよ、アンちゃん」


 そして相変わらずクソまじめなのは剣道主将の佐藤だ。マジな目をして言う。

「まずそれが何か、証拠を見せてくれ。でないと、そんなおとぎ話みたいな事につき合いきれねえ」

 それは一理あるな。俺だってあっちの立場になれば先陣を切って立ち上がるだろな。


「証拠か……。どうだ、キャサリン? サンタナさんはこいつらにもコンタクトの能力をつけてくれるかな?」

「まず小ノ葉ちゃんに聞きぃな。この能力が発揮できるのは小ノ葉ちゃんのおかげやで」


「あたしはいいよ。べつに痛くも痒くもないモン」

 気持ちのいい答えが返ってきた。


「なら、後はサンタナさんだけだな。どうだ?」

 キャサリンはドンブリの隅っこを突いていた箸の動きを止めて、

「せやな。他言無用ちゅう条件で、一晩ぐらいやったらエエんちゃうやろか」

「よーし決定だ!」

 俺は平手でテーブルをどんと叩いて立ち上がる。


「みんな。証拠を見せてやる。それからもう一ついい条件を付ける。これで俺がどこまで本気か考えてくれ」


「なんだよ?」



「この一年間にお前らのクラブに順番に入部してやる。そしてそれなりの成果を出してやる。どうだ、これで俺がどこまで真剣かわかるだろ!」



「マジかよ、神祈(かみだのみ)! 柔道部に入ってくれんの?」

「うそ。剣道部もだぜ?」

「ならレスリングから先に入部してくれ。県大会まであと半月なんだ」

「その次は弓道部だ。神祈くん。こっちは1ヶ月しかないんだ」

「うぉぉ。カズトが空手部に来たら怖いものなしだぜ」


 急激に牛丼屋の中が色めきだし、熱い空気が噴き出した。


「信じられん。スポーツ万能の神祈が格闘技連合会の仲間になるって宣言しやがった。これは奇跡だぞ」

「小学校後半から筋トレとランニングの成果だな」

 と俺はつぶやき、少々遠い過去に思いを馳せる。


 オンナとして育てられていた俺が男に目覚めた時からこのトレーニングは始まっていた。思えばつらく厳しい鍛錬だった。まさかあの訓練がこんなところで役に立つとは思ってもみなかった。


 オレは胸のすく思いで胸中をぶちまける。

「どうだ。さっきの話の証拠を見せた上にこの好条件だ。呑んでくれるか?」


「おおぉ。呑む呑む。全部呑んでやる」

「オレたちに任せろ。何でもしてやる」

「正義のために死んでやるぜ」

「死んだら県大会出れねえよ」


 騒然とする格闘技連合会の連中に俺は立ち上がって手を振る。

「いいか、諸君。本番はまだずっと先だ。だが必ずその時が来る。それまで俺に忠誠を誓ってもらうからな」


「おおぉ! 神祈の頼みなら何でも聞いてやる。オレは誓うぜ」

「オレも誓う」

「お前のためなら死んでやるぜ」


 さすが体育会系だな。ちょろいもんだぜ。


「その代わり、証拠を見てもビビってちびるなよ」

「バカ野郎。オレたちは西立花高校の格闘技連合会だ。しかも全員が主将だぞ。怖いものなんかあるか!」



「おじさーん。牛丼の並みもう一丁!」

 杏の可愛らしい声が熱く盛り上がった空気を一瞬で冷やしやがった。

  

  

ついに次回が最終話です。

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