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ファイブストーン 〜神魔石を取り戻せ!〜  作者: かなへび
冒険の準備編
1/1

依頼


「今回もハズレかぁ・・・・・・」

俺はボソッと呟いた。

口から漏れ出すような小さな声だったけど、やまびこのように反響して聞こえる。

辺りは静まりかえっていて、ピチョンピチョンと水滴が落ちる音が時折聞こえるだけだ。


「これだったら、いつものやつ受けてた方が良かったなぁ・・・・・・」


——————

————

——


時はさかのぼり、3時間前・・・・・・


「おっちゃーん!いつものやつあるー?」

俺が少し大きな声でカウンターごしに話しかけると、奥から声が聞こえる。

「おーう!アレクかー!ちょっと待ってな!」

奥で資料整理でもしてるのだろうか、ドタバタと物音がしている。

あのおっちゃんの事だ。整理整頓とか下手そうだし、散らかってるんだろうなぁ・・・・・・。


そんな事を考えていると、声の主であるおっちゃんが奥から出てきた。

「よう、アレク。待たせたな!」

俺を見るなり、ニカッと笑うおっちゃん。

爽やかな笑顔であるはずなんだけど、190cmくらいある身長のせいで、なんていうか・・・・・・いかつい。

子供が見たら泣き出しそうだ。

そんな失礼な事を考えつつも、俺は話を切り出した。

「おっちゃん、いつものやつ受けたいんだけど、ある?」

「・・・・・・あぁ、あるぞ。 『レッドキノコの討伐』」

おっちゃんは、ため息混じりでそう言いながら依頼書をピラピラと俺に見せた。

「よし、その依頼受ける!」

「おいアレク、お前なぁ・・・・・・。いつも言ってるけど、そんなんじゃ世界をまたにかける凄腕冒険者にはなれねーぞ?」


・・・・・・むぅ。言われると分かってたけど、いざ言われると少しカチンとくる。

「だって、他にいい依頼がねぇんだもん!

草むしりに、迷子になった飼い猫の捜索・・・・・・。

俺はそういうのがやりたいんじゃねぇんだって!」

少し食い気味に、そう言い放った。

おっちゃんの言いたいことは分かる。

レッドキノコの討伐依頼を受けてるだけじゃ、親父みたいな冒険者にはなれない。

それは正しいと思う。

でもさ・・・・・・。


「もっと他に、討伐依頼ないのかよ!?」

・・・・・・そう、最低ランクの『Fランク』に属してるモンスターである、レッドキノコの討伐依頼しかない。

それほどまでに世界は平和なんだな。

もちろんそれはいい事だけど、そうじゃない。

対象のモンスターを倒すことによって達成する依頼である"討伐"カテゴリだけど、最低ランクのモンスター討伐の依頼しかないってのは、俺にとっては歯がゆい状況だ。

強くなって、お金も稼いで、世界を旅する冒険者になりたいってのに・・・・・・。

もう1年もこんな調子なんて参っちまうぜ。


「まぁ、そういうなアレク。確かにレッドキノコは最低ランクのFだ。冒険者にとっては脅威に値しないだろう。だが、Fランクのモンスターでも、一般人にとっては脅威だ。・・・・・・死人も出る。」

そこまで言って、おっちゃんは俺を見つめてきた。


「お前は、大事なことを忘れるんじゃねぇか?」

そう言われた俺は、何も言えなくなってしまった。

冒険者は、力ない一般人を守る事も役割のひとつ・・・・・・か。


「とは言え、ずっと同じ依頼ばっかりじゃ飽きるだろ?」

・・・・・・ん?流れ変わったな。

俺は、うなだれていた顔を上げると、おっちゃんがいつもの顔で笑っていた。


「今日は特別な依頼が入ってるぞ!」

「その依頼、受けたァ!」

おっちゃんが言うが早いか、俺は全力で依頼を承諾した。

「ハハハッ!その飛びつき様には笑ったぜ」

おっちゃんに笑われたが、それどころじゃない。

俺の脳内は、未知のものに対する好奇心で埋め尽くされていた。

特別な依頼ってなんだ?

姫様の護衛とかかな?

リーシャ姫、かわいかったなぁ・・・・・・。あんな姫の護衛ができるなら最高なんだけどなぁ。

それとも、魔王が復活したとか?

いやいや、そんなんだったら街中大騒ぎだし・・・・・・。


「・・・・・・だ。」

ハッと気づいたら、おっちゃんが口を閉じた。

「んぁ・・・・・・?」

「おいおい、ちゃんと聞いてたか?」

「ごめん、聞いてなかった。 んで、特別な依頼って?」

俺としたことが。妄想が膨らみ過ぎて肝心な依頼内容を聞き逃してたなんて。

今度こそ、おっちゃんの話に集中する。

「・・・・・・近くにある洞窟の探索、及び魔力源の調査だ」

俺は、ガックリと膝から崩れ落ちた。


「おっちゃん、それのどこが特別なのさ・・・・・・」

「まぁ聞けって。お前のそのせっかちさ、いつか損するぞ?」

ぐぬぬ・・・・・・。そういや、よく親父にも話を最後まで聞けって怒られたっけ。


「ゴホン。 今回の依頼だが、どうやらこの街・・・・・・ノエノ城下町近くにある洞窟に異常な量の魔力を検出したらしい。アレク、お前にはこの魔力源を調査し、洞窟に異常がないか探索してきてもらいたい」

そうおっちゃんは言ったが、俺の下がったテンションは、どうにも上がらなかった。

「それさー、また誤検知なんじゃねぇの?」

「そればっかりは俺には分からん。とりあえず調査してもらわんとな? ほら、これ」

そう言って、おっちゃんは細長い棒みたいなのを俺に手渡した。

これの正体は知ってるぞ。魔力測定器だ。

たしか、魔力に触れると量に応じて、棒についてるメーターみたいなのが上がったり下がったりするんだよな。


「とりあえずひとっ走り行ってこいや」

「えー!それだったらレッドキノコの討伐依頼の方がいいー!」

少し子供っぽかったかな。駄々をこねてしまった。

だって、いつも誤検知で何の面白みもない調査より、キノコ相手に戦ってた方がまだ楽しいもん。


「冒険者に二言はねぇ・・・・・・だよなぁ?」

おっちゃんは、少しドスの聞いた声で言った。

俺はもう慣れたけど、子供が見たら絶対なくぞ。

笑うだけで怖ぇのに。


「・・・・・・わかった、わかったよ。行ってくれば良いんだろ!その代わり、これが終わったらキノコも狩るから、俺に残しといてくれよ!」

そう言いながら、依頼書にサインした。

こうなったら早く終わらせて、キノコに鬱憤をぶつけよう、そうしよう。


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