遠距離恋愛のクリスマス
よせばいいのに、俺は大学卒業間際に、俺はある綺麗な看護師と付き合い始めた。
彼女の名前は出せないので、仮に、サッチャンとしておく。
当然、卒業後、遠距離恋愛が始まった。
卒業の時点でふられなかっただけ、ましだったかもしれない。
その方が良かったって言う奴もいたが、スルーする。
俺は社会人になって、サラリーマンとしての慣れない忙しい日々を送っていた。
大好きな彼女、サッチャンに会いたくても、会えない日々を送ることになる。
無性に声を聞きたくて、ケータイに電話をしても、簡単にはつながらない。
たまにつながっても、
「 ごめん。 夜勤入りで、寝てたの。」
「 ごめん。 元気そうで、安心したよ。
無理するなよ。 じゃあな。」
「 うん。 〇〇さん(俺の本名)もね。 じゃあ。」
たったそれだけで、終わってしまう。
一杯話したいことあるのに、切なすぎる。
思わず、枕を殴った。
サッチャンと付き合い始めて、初めての盆休み。
社会人になった俺は、念願のフレンチレストランにサッチャンを連れて行った。
「あんまり美味しいもんじゃないね。」と、エスカルゴを食べて笑ったっけ。
考えてみると、ケンカしたことなかった。
たまに会うときぐらい、楽しい時間を過ごしたかったからだ。
サッチャンと付き合い始めて、初めてのクリスマス。
待ち合わせの喫茶店に、時間になってもサッチャンは、来なかった。
周りのカップルの話し声が、ヤケにウザかったね。
そんな時、やっとケータイに、彼女からのメールがあった。
「 ごめん。 緊急オペが入って、行けなくなった。」
「頑張れよ。 無理するなよ。」
無理しているのは、俺。
強がる俺だった。
涙は夜更け過ぎに雪に変わるだろうって、
一人きりのクリスマスを、過ごすはめになった。
サッチャンと付き合い始めて、二度目のバレンタインデー。
サッチャンから、チョコレートが宅急便で届いた。
そのチョコレートは甘いけど、なぜかほろ苦い。
そして、サッチャンと付き合い始めて、二度目の盆休み。
あいまいな関係に区切りをつけようと、僕は決断した。
「結婚」という二文字。
お互い意識はしていた。
ホテルのロビーで待ち合わせしてから、どこで、どう切り出して、
どう言われたかまでは、言いたくない。
はい、あっさり、ふられた。
俺の努力が足らなかったのか・・・・・・・・。
風の便りに聞くと、サッチャンは同じ病院の医者と結婚した。
あのクリスマスの夜も、その医者と一緒だったとか。
俺は、笑った。爆笑だ。
馬鹿みたいじゃなくて、俺は馬鹿だった。
「何がオペじゃ!二人で何してたんや。」と、ガチで腹がたった。
冷静に考えたら、遠くの親戚より近くの他人。
遠くの彼氏より、近くの男友達。
遠くのサラリーマンより、近くの医者かい。
でもよ、声を聞きたいときに、聞ける。
何より会いたいときに、会えるもんな。
あったかい気持ちを、肌の温もりを感じられるよな。
ぶっちゃけ、今でも、クリスマスになるとサッチャンのことを思い出してしまう。
彼女がいてもね。
『元気で、幸せにやっているかな。
今でも、綺麗かな。』
サッチャンのとびっきりの笑顔の写真は、押し入れの古いアルバムの中にまだ、ある。
捨てられない・・・・。
正直、話はしたい。
復縁とか不倫とか考えたことはない。
今の俺なら、彼女と笑って思い出話しができる。
フレンチレストランじゃなくても、居酒屋でも、どこでもね。
努力は必ずしも報われるものではないが、必ず得られるものは絶対にある。
俺は、サッチャンから遠距離恋愛の愛しさと切なさを学んだ。