第十二章 “Secret Night ,A Kind Of 「Slight Fever」”〔7〕
距離を詰められているというのに、表情を取り繕えない。
そっちの嘘、という言い方は、もうひとつ隠し事があるということを暗に言っている。
けれど先生は完全に寝ていたはずだ、気づいていないはずだ。だからキス未遂のことではないはずだ。
きっと私が見落としている別のことがあるんだ。そう何度も自分に言い聞かせ、私はとぼけることにした。
「な……んのこと、ですか」
「気づいていないことにしてやろう、とも思ったけどね」
そう言われて、ついに「キス未遂」に気づかれていたことが確定してしまったので、上手く言い逃れもできない私はあきらめざるを得なかった。
演技に付き合うとかいうくらいなら、そのまま黙っていてくれればいいのに。
「……、起きていたんですか」
「いや、本当に寝ていたよ。……途中まではね。まさかまた同じ行為で起こされるとは、思ってもみなかったよ。君は病人じゃなかったのか?」
そんな元気があるなんて、と言外に言われているようで、私は小さくなるしかなかった。
恥ずかしい。そして先生に合わせる顔もなくて、なすすべなくうつむく。
「全く仕方がないね。君も……」
なんでもないような言い方ではあっても、その台詞の内容は私の心を傷つけた。
先生の目に私は、最悪な女に映っているだろうか。それとも恋愛慣れしていなくてふらふらしているお子様か。ひたすら小さくなることしかできないまま、私は小さく声を発する。
「すいませんでした……」
「どうして謝る? あの時気にしなくていい、と言っただろう。君がしくじらなければ、そのまま眠っていてやったんだけどね」
「っ!」
息を飲んでしまった。気にしなくていいというのは、グラスを割ったことだと思ったのに。
そういう意味だったなんて一体誰がわかるっていうだろう。
「……途中で気づいていたならどうして、寝たふりなんか……」
自分が悪いくせについ怒りがこみ上げ、私は少し声を乱した。
だって以前旧校舎でキスしようとした時、先生は寝たふりをしていたけれど、触れる直前に目覚めてくれたから未遂に終わったのだ。
けれど今回、先生は目を開ける気配すらさせなかった。グラスを落とさなければきっとキスしてしまっていただろう。
キスはあくまで先生が気づいていない、というのが前提条件だ。
先生が起きているなら絶対にできない。私だけの秘密にならないなら……教師と生徒の範疇を越えてしまう。私にはそんなつもりは毛頭ないのだ。
中途半端なところで切って申し訳ないです。更新ラッシュが来てます。
書きたい書きたい! これが途切れた時、今回こそ、長期停止しないよう頑張ります。
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こう見えて本当に、多忙です。疲れていますが小説書いて現実逃避です。笑
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こんなだめ作者、駄文ですが、今後もよろしければまた読んでやってください。