二人の殺人鬼、相まみえる。
武器ガチャを引いた僕達三人は、指定された場所へ向かった。
途中、一組の生存者に出会ったがすぐにクーちゃん達によって排除された。
「今、仮に眼球アルバムに出くわしてもなんとかなりそうだね」
二人の殺人鬼に囲まれ僕は少し楽観的になっていた。
「はは、シッスン、それは間違いだよ。眼球アルバムはかなりの手練れ。こっちの戦力が上とはいえ油断できない」
「そう。もしそうなったら眼球アルバムは真っ先にあんたを狙う。私達が途中切ろうが刺そうが殴ろうがかまわず向かってくるはず」
その状況を想像して少し身震いがした。
廊下の先を注意深く観察する。
背中にも目を配る。
いつ遭遇してもおかしくない。
「あ、駄目だ」
ふいにクーちゃんが口を開いた。
「ちっ」
同時に灯も舌打ち。
「・・・・・・・・・・・・」
そして僕は息をのんだ。
これ経験したことがある。
ここに拉致されてすぐだった。
体を蜷局によって巻き付けられる感覚。
圧倒的な死の気配。
「きたよ、眼球アルバムだ」
「あんたは後ろに下がる」
二人が僕の前に立つ。
するとここから突き当たった廊下の横から人影が露わになる。
暗いシルエットは近づくにつれ全体をとらえる。
それに伴い食い込んだ圧力が増す。
「また会えた~。あたし言ったよね~、今度会ったら片方もらうってー」
おかっぱ頭が不気味に声をかけてきた。
目を覆う真っ黒の隈。その視線は僕達、いや、僕の目にしっかりあっていた。
「おい、灯。武器はすぐ先にある。それまで時間を稼げ」
「はぁ? なに、あいつを灯一人に任せるつもりか、いや、いけるけど!」
前の二人が小声で打ち合わせる。
二、三事、交わすとクーちゃんが走り出した。
クーちゃんと眼球アルバムの距離が縮まる。
ぶつかる寸前、クーちゃんはボロボロの本を投げつけた。
それを眼球アルバムは手に持つ千枚通しを刺して凌ぐが、すでにクーちゃんは眼球アルバムを通りすぎ背中を見せていた。
「ん~、どういう事~?」
クーちゃんの行動が理解できないのか眼球アルバムは首を傾げる。
「ま、いっか。これであたしの敵は一人だね~」
再び意識がこちらに向けられる。
「これでいい。勝ち目がないと察すると予想外の行動に出る。でも、一対一ならあいつは灯と殺り合う選択をとる」
事実、眼球アルバムの視線は、灯に移っていた。
刹那、息苦しさが増した。
二人の殺気が衝突した。
先ほどまで小柄な女の子に見えていたが、今は違う。
何十倍にも膨らんだかのように錯覚する。
眼球アルバムを目にいれていると飲みこまれそうになる。
でも、それはこちらも同じ。
吸血殺人鬼灯もまた膨張を繰り返していた。
長い髪がうねりをあげる。
「んん~? なんで灯ちゃんがその子のとこにいるの~?」
「血だよ、血、血が灯を呼んだんだ」
「ふ~ん、あたしもとてもその子の目に惹きつけられる。これはあれだね、その子がそうなのかもしれないね」
「その話は今は無しだ。正直、お前は好きじゃない、血も不味そうだからいらない」
「あら~、それは奇遇だ~」
眼球アルバムが口を開いたまま飛び込んで来た。
「お前の目も濁ってんだよぉぉ! 願い下げだああ」
こうして生存者の内、最高峰に立つ二人の殺人鬼が刃を交えた。
血への渇望。
眼球の執着心。
歪みに歪んだ変質が今溶け出し始める。