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終わりの始まり。

 一応、時系列的にはこの話の後が、一話と二話になります。

 目が覚めたら、知らない場所だった。

 これはよくある事。

 でもそれはあくまで、創作の中でならのお話。


 たしか、僕は妹と一緒に買い物に行ったんだ。

 で、気づいたらここだった。


 

 上半身だけを起こして、周囲を観察する。


 切れかけた蛍光灯が一本、点滅しながらも辛うじて明かりを点していた。

 既視感を覚える、それは作りが学校の教室のようだったから。


 窓は木で打ち付けてあり、閉め切られいる。光が全く差し込んでない。

 黒板、教卓、一クラス分の机、椅子。

 どうやらここにいるのは僕だけのようだ。

 

 薄暗い中で、頭を整理する。目を瞑る必要はない。

 冷静を装うとしたが、やはり駄目だった。

 不可思議な事象に巻き込まれたこと、恐ろしくなった。

 意識が覚醒していくにつれて、それはどんどん大きくなる。

 なぜ、僕はこんな場所にいる。

 記憶を辿り、はっとする。


 そうだ、一緒にいた妹はっ。


 ここには僕一人しかいない。別の場所にいるのか。

 妹の事を考えると、それが恐怖をかき消した。

 立ち上がる。まずはここから出よう。

 そして、妹を探すのだ。


 そう思ってドアに手をかけるが、開かない。

 今度は力を目一杯両手に込めるが、ビクともしなかった。

 施錠されてるのだ。


 血の気が一気に引いた。見たところここには何もない。

 このまま閉じ込められたままなら、近い将来・・・・・・死しかない。

 再び恐怖が舞い戻る。

 死をいう概念が頭を過ぎったことで一気にパニックになった。


「うあぁあっぁぁぁ、うああぁっぁぁぁぁぁぁっ!」


 狂ったように、ドアを開けようとする。

 壊れれば良いと、我武者羅にこじ開けようとするが、やはり全く動かない。

 

 数分その行為に没頭したが、さすがに諦めもつく。


「・・・・・・どうすりゃいいんだ」


 息を切らせてその場にへたり込む。


 これじゃ駄目だ。考えろ。なにか打開策がないか、必死に思考しろ。

 言い聞かせる。想定外の出来事に対処するのだ、それこそ全てを脳にまわして回転させろ。


 ここで、漸く思い出した。

 本来、一番最初に取り出そうとするものだが、なんせ混乱していたのだ。


「そ、そうだ、携帯・・・・・・」


 態々僕を鍵のかかった室内にいれたのだ、望みは薄かったのだが。


「あ、あったっ!」


 ポケットをまさぐると、手にそれらしい感触が伝わった。

 すぐに取り出す。


「・・・・・・あ、あれ、なんだ、これ」


 形はスマホのそれだったが、いかんせんこれは僕が持っていた物ではない。

 とりあえず、手探りで電源を入れた。

 これが、通信端末だったなら、助けを呼べるかもしれない。

 淡い期待はすぐに裏切られる。

 画面に映ったのは、数字の羅列。

 それ以外出てこない。色々を弄ったが変化はなかった。


「なんの数字だ・・・・・・」


 五桁の数字。なにかの暗号か、それともパスワード的な・・・・・・。

 こういうのは、大体何かを開けるための・・・・・・。


「・・・・・・っ!?」


 扉に首をまわした。この教室擬きにドアは二つ。左右にあったが、一つは窓同様に木でしっかり留められている。台風に備えて補強されたかのように。

 だから、僕は最初から片方しか見向きはしなかった、それに観察余裕などあるはずがなかった。

 改めて見ると。


「あった」


 明らかになにか数字を入れるタッチパネル。

 手を触れると、真っ暗だった画面がぼんやりと赤光を放った。

 現れたのは六個の枠。そしてテンキー。

 間違いない。これにさっきの数字を入れればいいんだ。

 震える手で、数字を打ち込む。

 これが予想と違えていたら、期待は絶望に代わる。

 

 全部押し終えると、タッチパネル、そしてスマホっぽい端末から音が同時に流れた。

 ピロピロリーン。扉の方は赤が青に色を変え、スマホの方はまた新たな画面が表示された。


「これは・・・・・・」


 先ほどまで数字しか移っていなかったのに、今は色々コマンドが見て取れる。

 右上にはポイントと書かれ、0となってる。

 他のコマンドも試みたが、指先で押しても反応はなかった。

 灰色になってるから、今は使えないのか。

 ならば、この一つだけ白くなってるのは。

 恐る恐る指で触れる。

 すると、別の画面に移動しまた別のコマンドが。


 殺人鬼を手に入れよう。初回限定のみ。回しますか?


 どういうことだ。

 殺人鬼?

 回すというコマンドが浮き出て。

 四つに分かれたルーレットがバックに移っている。

 胴、銀、金、虹に色分けされており、胴が一番範囲が大きい、そして虹は全体の一パーセントにも満たないほど細い。

 

「あっ」


 画面に触れるか触れないか、ふいに反応してしまい、ルーレットが回り出す。

 未知なコマンドだったからもう少し慎重にいきたかったのに。

 でも、もう遅い。回転は徐々にスピードを落とし。

 そして針が停止した場所は。

 天辺。虹色だった。


 瞬間、派手なエフェクトが起こり、ラッパが鳴った。


 超絶激レア。おめでとうございます。首切り狂璃を手に入れました。


「・・・・・・なんだ、当たりか? 首切り・・・・・・狂璃」


 僕もよくスマホでゲームはするけど、なぜかいつもレアを引き当てる。同じゲームをやってる友達には毎回妬まれるから困りものだ。

 だから、今回も当然のように確率をものともせずに見た目でも一番良さそうな虹をさした。 だが、これはなんだ。ゲームのようにキャラが出てきたわけではない。

 代わりに表示されたのは、また5桁の数字。

 横にはマップというコマンドが出てきた。点滅している。

 ここまで来ると躊躇うことはない。

 すぐにそれを押すと、地図が画面いっぱいに表示された。


「ん、赤い点と青い点があるな・・・・・・」


 青が現在地か。なら赤い点は。


 閉じ込められていた扉は開いた。マップを見るかぎり、ここは二階で赤い点は一階の一番奥。 ここを出て、そこを目指せという事か。

 なんだかうまく誘導されているような気がする。

 本来妹を捜し回るのが優先だろうけど、圧倒的に情報が足りない。

   

「んっ」


 考えているうちに、映っていたマップが消えた。

 ずっと出てるわけではないのか。

 場所が近そうだったのと、一応記憶は出来てた事で問題はなさそうだけど、次回から気をつけよう。


「とりあえず、向かってみるか」


 なにが待ち受けているか分からないけど、今はこの教室にいても意味はない。

 行動を起こさなければなにも変わらないのだ。


 僕は、扉を開け廊下へと足を踏み出した。 

 

 

 しばらく歩いていくと、廊下の端になにか黒い大きな塊がみえた。


「・・・・・・なんだ」


 廊下も薄暗い、ここからではそれがなんなのか分からなかった。

 

 視認できるほど近づいてみると、それは人だった。


 俯せに倒れていてピクリとも動かない。


「あ、あの~、ちょっ、ちょっとすいません」


 声をかける、何をおいても自分以外の人がいた事が嬉しかった。

 話せれば、今の状況が少しでも分かるかも知れない。


 反応がなかったが、肩を揺さぶり続ける。

 すると、隠れていた顔がぐるりとこちらに向いた。


「ひっ!」


 思わず撥ね除けた。尻餅をついて後ろに後ずさる。

 顔が僕を見ていた。そして譫言のように声を絞り出す。


「だ、誰か・・・・・・だ、誰か、あ、あ、あ」


うわ、うわわ、わわ。なんだ、なんだんだ。


 その顔には、本来あるものがなかった。

 視覚情報を伝達する器官。


 そう、両目がすっぽり抜け落ち、空洞になっていたのだ。


 血の涙を流しながら、その人物は僕に縋るように這い寄る。


 僕が恐怖に戦いていると、その刹那、大きな針が垂直にその頭に突き落ちる。


「あら~、死んでなかった~」


 両目の無い顔がガクッと沈む。

 そしてその横に現れたのは、小柄な女の子。


「ん~、おや、おやおやおやおや」


 おかっぱ頭の少女は、目の周りが真っ黒いクマで覆われている。

 その不気味な眼光で僕をじっと見て止まった。


「・・・・・・いい。いい~。その眼いいよ。いい。欲しい。頂戴」


 少女はそういうと握っていた針を、突きささる頭蓋から引き抜く。そのまま赤く染まった先端を僕に向けた。


 やばい、やばい、やばい。


 この子は本気だってのはここまでの行動で分かる。

 このまま、膠着していては確実に殺される。


 動け、動け、動け、動け、動け!


 脳に何度も指示を送る。でも、なかなか立ち上がれない。


少女が構えを見せた。肘を曲げ今にも穿孔しようといている。


 でも、体は全く言う事を聞かない。先端は僕の目の直線上に置かれた。


 その時、少女の後ろに影がぬっと落ちた。


「おらぁぁっ!」


 突然現れた男が少女に椅子を振り下ろす。


 だが、少女は今いた場所からすっと姿を消した。


「あ~、なに、君~」


 完全に不意打ちだったにもかかわらず、少女は軽く避けた。

 そして。


「なに、その眼、汚い、汚い、いらない、いらない」


 向かい合ったと思ったら、針をその顔目掛けて高速で突き刺した。


「うぎゃああぁっぁぁああ」


 その攻撃に怯み、顔を押さえ前屈みになる男。

 少女は、間髪いれずに手当たりしだいに、突き刺していく。

 腕、足、腹、頭、肩、適当に何度も何度も手が動いた。


 男が倒れる、少女はまだ止まらない。

 馬乗りになると、今度は確実に顔を狙って針を振り下ろしていく。


「邪魔、邪魔、邪魔、邪魔」


 ブツブツ言いながら、氷を割るように何十回と穴を増やしていく。


 自分もああなるぞ。


 漸く脳が分かってくれた。目の前の惨状を見てやっとだ。

 体を起こし、後は必死に足を前後した。


「あ、こら。駄目だよ~、逃げないで、こっちきて~」


 少女はなにか言ってるが勿論無視して突っ走る。


 この先に何が待ってるのかも、分からぬままに。


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