表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

すごい殺人鬼に追われてるよ!

 走る。


 今まで生きてきた中で一番速く、そして無我夢中で。

 もしリミッターがあるとしたなら、今なら振り切ってると確信できる。

 心臓が破裂しそう、酸素の取り込みが追いつかない。

 でも、僕は走る。

 だって、ここで足を止めたら。

 僕は確実に。

 殺されてしまうから。



 薄暗い中でぼんやりと浮き出る白い壁。

 見知らぬ廊下を駆け、表示された場所に急ぐ。

 後ろは振り向かない。

 そのロスが生死の分かれ目になるかもしれない。

 顔を向けたら、眼前に追撃者の顔があるかもなのだ。

 だから足だけを必死に動かす。


 階段を何段も飛び越え、その度崩れたバランスを無理矢理整えながら下る。

 遠い。

 途轍もなく距離を感じる。

 実際はさほどでもないはずなのに、今はゴールが無いんじゃないかとさえ思う。

 

 

 それでも目的地には確実に近づいてる。

 曲がり角を膨らみながらカーブすると、直線の先に扉が見えた。

 ここから100メートルほど。

 万全の状態なら、12、3秒で辿り着く。

 でも、もう息は完全に上がり、太股も悲鳴を上げてる。

 スピードは失速、そうなると倍かかってもおかしくない。

 間に合うのか。

 そもそも、あの扉の先に希望はあるのか。

 もしかしたらさらなる絶望しかないのかもしれない。

 でも。

 それでも。

 僕は手を伸ばすしかない。

 

「追いついたぁ~」


 声が耳に入る。かなり近い。

 その瞬間、僕は床を転がった。

 急に足を止められ、慣性で勢いよく体が飛んだ。

 目を開けると、扉は後少しだった、でもまだ手は届かない。

 俯せだった僕は、上半身を捻って体を半分起こす。

 そして後方を見据えると。

 いた。

 僕を追ってきた人物が。

 すぐ目の前に。


「結構逃げたねぇ~、えらい、えらいよ~、でもどうせ行き止まりだったけど~」


 目の周りが真っ黒で。

 手には千枚通しが握られていて。

 それらを向けるおかっぱの少女。

 

「な、なんで、僕を襲う!?」

 

 ある行程の途中、僕は彼女と遭遇し、そしていきなり刺されそうになった。

 明らかな殺意。

 そして執拗なまで顔を狙ってきた。

 もし、彼女になんだかの拘りが無かったなら僕はとっくに穴ボコだ。


 僕の質問に、彼女は首を傾げ、目線を上に向けた。


「ん~、ポイント? オーナーのため? でも、一番は殺したいから。目が合った瞬間、その眼球が欲しくなったの~」


 なんだ、こいつ。

 一般人とは一線を画す存在なのは、よくわかる。

 話し合いとか、そういうのが一切無駄ってのを悟れるほど。

 これは、この世にいてはならないモノだ。

 人であって人ではない。

 神の手違いで創られた欠陥品だ。

 こんなのを前にして僕はどうすればいいんだ。


 背を向けて逃げるか。

 相手は女の子と高をくくって向かっていくか。


 心の中で首を振る。どちらも不正解。

 選んだ先は両方デッドエンド。

 なら、どうする。

 交渉するにも材料がない。

 そもそも聞く耳を持っているのだろうか。


 待ち受けるは死。


 ふと、脳を過ぎる考え。

 とんでもなく恐ろしい方法。

 とても無理。思いつくだけで行動はできない。


 でも、死を0とするならば。

 全てが終わってしまうというならば。

 やらなくてはならない。

 覚悟を決めなくては。

 このまま死ぬよりは、幾分ましだろう。

 

 だから、僕は色々なものを遮断した。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ