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目下最重要案件と必需品

 しかし……

 召喚されたはいいものの、俺はこれからどうするべきなのだろう。

 よい異世界ライフをお楽しみくださいといったってなあ……

 この世界のことについては一通り精通しているわけだし、そこまで困るようなことにはならないと思うが。

 とりあえず、ステータスを確認してみよう。

 ……。

 ええと。

「どうやって見るんだ、ステータス」いきなり困った。

 そうだ。プレイヤーのときはスタートボタンを押せば見られたステータスだが、当然その本人にはコントローラーなど無いわけで。

 見られないのかな、もしかして。

 見られないからと言ってどうということは無いのだが、少し寂しい。ただ、召喚状には、ステータスは現実の俺に準拠すると記載されていたし、多分そうなのだろう。

 もしかしたらそのうち見る方法も分かるかもしれないわけだし。

 

 この世界へ来ることとなった原理や理由は未だ謎――どうにも俺には、ただの第一発見者特典には思えなかった――だが、とりあえずはこの夢のような世界を堪能しよう。

 目下最重要案件は、自身の戦闘能力の底上げだろうか。

 今魔物や盗賊に襲われたら、生き残る自信は無い、事も無いが非常に危うい橋を渡ることになるだろう。

 ここは……6月通りの近くか。となれば、今の所持金で手短に手に入れられて戦闘向きなのは、あの防具と……あの武器が妥当か。

 

 俺は、《あの防具》である、《逃げ腰マント》を頂戴していた。

 老婆から、まるで仏壇に拝むかのようなアクションとともに謝辞も頂戴する。

「ありがたやありがたや。助かりました。まさか、毎日空き巣に入られていたとは…」

「気付かないのも無理はありません。盗人は逃げ腰マントを装備していました。どんな状態からでも容易に逃げ(おお)せることのできるマントです。空き巣は見つかるリスクを恐れてどうしても痕跡を残してしまいがちになりますが、彼の場合はその痕跡を消すことすら容易だったでしょう。なにせ、絶対に逃げられるんですから」

「ありがたやありがたや」

 俺は、《空き巣を捕まえる》というイベントをこなしていた。

 イベント発生方法は簡単で、この老婆の家でしばらく閑談するだけ。その際に、相手の装備の付加効果を一度だけ帳消しにする《無効玉》を3000Gで購入しておくことが、イベントクリアの必須条件となる。少々値は張るが、逃げ腰マントの重要性から考えれば安い出費だった。

 あとは、盗人が部屋に入ってきた瞬間にその玉を屋内で使用するだけ。盗人はなんと子供なので、戦闘にすらならない。

 

 かくして、イベントの報酬として逃げ腰マントを手に入れたのだった。

 逃げ腰マントの性能は単純。

 通常戦闘からなら確実に逃げ果せられる。更に、通常は逃げることのできないイベント戦闘であっても、《戦闘からの逃走》を可能にする。

 というもの。

 戦闘をするだけのステータスを有さない俺にとっては、必要不可欠な防具。まさに必需品だった。

 イベント戦でも、戦闘からさえ離脱できれば、あとはなんとかできる…はずだ。

 俺は冒険者のローブから逃げ腰マントに着替え、次のターゲットへと急いだ。

 次は、武器だ。


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