幕間
幕が下りたかのような、えも言えぬ終息感。
その感覚が続いた。
俺は、後悔しているのだろうか。
現実世界に未練が無かったわけじゃない。ただ、それと同時に、現実世界に何か夢や希望があったわけでもない。
多分、後悔していない。
どうしても曖昧な表現になってしまうが、きっとそうなのだ。
自分は今どういう状況なのか。
本当に異世界に召喚されているのか、もしかしたら死んでいるのかもしれない。
そんな何も分からない中であっても、考えるのは「PCのあのファイル、隠し指定しておけばよかった」とか、「あの漫画の結末、知りたかったなあ」とかそんな下らないことだらけだった。
結局それが、俺の現実世界に対する正直な気持ちだろう。
久しぶりに話した妹のことが脳裏に掠めたが、それも久しく声を聞いていなかったゆえのこと。のはずだ。
つまるところ俺は、異世界に召喚されるにふさわしい、適合者だったわけだ。
最初に見つけたのが俺で良かったな、制作者さん。こんなの普通断るって。
さあ、この先には何が待ってるんだ?
死んでるなら、天国か地獄か。素行不良の俺は恐らく地獄だろうが。
しかし……
考えつつ、少しずつ幕が上がっていくような感覚に体が包まれるのを感じた。
もし、万が一本当にグロス・オーバーに召喚されるのだとしたら。そこはきっと、画面で見るよりずっと壮麗で―――