召喚状と適正確認
意気軒昂と、YESを選択した。
頁をめくるような音。手紙の全文が画面に表示された。
興奮覚めやらないままに、内容に目を通す。
なになに……
*召喚状*
▼おめでとうございます!
▼あなたが一人目の発見者でございます!!
なんだこれは。ワンクリック詐欺かよ。
▼初回限定特典といたしまして、なんと、《無期限異世界旅行の旅》が授与されます!
▼つきましては、いくつかご確認させていただきたいことがございますので、選択のほどをよろしくお願いいたします。
おいおい。本当にワンクリック詐欺の様相を呈してきたんだけど。
▼あなたは三上一馬様でよろしいですか? YES NO
……YES
▼あなたはこのゲームを愛していますか?
YES
▼現実世界への未練はございませんか?
えっと、これは……。
どういう演出なのだろう。
まず、このゲームに自分の名前を登録した覚えなど無いのだが。
ただの演出だと思っていたワンクリック詐欺もどきの招待状。
しかし、これはどうも……
とりあえず、YES
未練が無いかと訊かれると疑問符を付けずにはいられないが、イベントを進めるにはYESが正解だろう。今は、好奇心が勝った。
▼《ペキュリア・スキル》について。ステータスなどは現実の三上一馬様に準拠した数値となりますが、特例として、一つだけスキルを付加させていただきます。スキル名と、その効果をお書きください。
マジか。大盤振る舞いだな。
熟考し、考えをまとめる。
スキル名―――……
それからいくつかの質問を終え、ようやく最後の質問となった。
▼最後の質問です。本当に、現実世界に未練はありませんか? YES NO
ううん。
これがどういう演出で、この先にどんな展開が待っているのか想像しがたい。
いろいろと質問されたが、それはまるで、俺が異世界に召喚されることを前提としているようなものばかりだった。
今まで見つかっていないダンジョン。
どこで手に入れたかも忘れてしまった道具。
そして何より、脳内に浮かんでは消える、このゲームの製作陣の詳細。
このグロス・オーバーの製作陣は、現在まで一切不明。
開発スタッフからサイトのサーバーの在処まで、その全てが謎に包まれ、《未来からの贈り物》と呼ぶ声すらある。
応用される技術のレベルがどれもずば抜けて高いことも、そう呼ばれる所以である。
もし、この《召喚状》が、ただの演出ではないとしたら……
逡巡し、思考を隅々まで巡らせ―――
「YES!こっちの世界でもゲームばっかりやってたんだ。召喚されようがそんなにかわらねえよ!」
▼承認されました。それでは、よい異世界ライフをお楽しみください。
手紙が閉じられ、画面は元通り、小部屋に勇者たち3人が立ち尽くすだけとなる。
体にもこれといった異常は見られない。
「な…なんだ…やっぱりハッタリか……」
一瞬でも身構えた自分が猛烈に恥ずかしくなる。
馬鹿だ俺……
いつの間にか前のめりになっていた体を床に落ち着かせ、仰向けになり―――
勇者たち3人……?
勇者一行のメンバーは、魔法使い、剣士、格闘家に、勇者の4人だ。
一人足りない……
誰が足りなかった?
画面を見ようと体を起こそうと思ったが、力が入らない。
なんだ、これ……
金縛りにあったような、気持ち悪い感覚。
そして、徐々に意識が薄らいでいくのが分かった。まどろみに誘われるように、あるいは場面が暗転するように、俺は、意識を失った。




