駆け込み乗車
プルル…と発車ベルが鳴り響いているホームで、俺は、扉が4分の1ほど閉まったころに、どうにか滑り込むことに成功した。
「あれ?」
電車の中から、声をかけられる。
その声の方向を見ると、イヤホンを外している女子高生がいる。
見知った顔だ。
「中学校、もしかして一緒だった…?」
「そうそう。覚えててくれたんだ」
息を荒げている俺に、彼女は静かに声をかけてくれる。
「なんて言っても、私が振った人だからね」
きっと、俺の表情は苦笑いをしているだろう。
なんといっても、その通りだ。
昔彼女に告白をしたときに、まだ早いという理由で振られた。
でも、友達でいられた。
それは、不憫だからという彼女なりの憐憫の情だったのかはわからない。
だが、結果的には、俺と、いまだにメールのやり取りがある程度の友達ではある。
「それで、今はだれかと付き合ってるのか」
そういう俺は、やっと呼吸が落ち着いてきたころだ。
「うん」
その言葉は、一番聞きたくなかった答えだった。
「なら、大丈夫だな」
感情を覆い隠し、俺はうれしそうな彼女に言った。