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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
四話:カワセミの里
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僕はバレンタインにチョコを貰ったことはない。

母親にも妹の美野里からもない。

だから、その日は何も期待しないで学校に行く。

それは、僕が十七年で学んだバレンタインの処世術だ。

昼休み、ピロティで僕と美野里ハシブトの三人で、いつも通り食べていた。


しかし、ハシブトはそわそわしていた。

そんな時、美野里はピンクにラッピングされたチョコレートを取り出した。

美野里の顔はとても赤い。もしかしてボクのチョコか?と思ったらすぐに結論が出た。


「ジャーン、ハシブトさんにプレゼント~!」

「これは、なんだ?」

「チョコレートだよ、友チョコ」

「そうか、美野里が作っていたのはこれか」

美野里の顔は異様に赤かった。そういえば美野里は、ハシブトのことが好きだからな。

それにしてもピンクでかわいらしくデコレーションされたチョコは、友チョコよりも普通のチョコに見えた。


「ハシブトさん、甘いのが好きだから」

「美野里は、気が利くな」

「も、もちろん。ハシブトさんのためなら、あたしはなんだってするわ」

美野里は、完全にハシブトの顔を嬉しそうに見ていた。

ハシブトは、チョコを貰っているがちょっと複雑な顔を見せていた。


「僕にはないのか?」

「ない」

きっぱりと言い放つ美野里。


「なんだよ、それ」

「だって、兄さんはチョコレート食べないから」

「そんなことはない、バレンタインのチョコは男の勲章だよ」

「それに兄さんのこと、あたしは好きじゃないし」


そんな美野里は、ハシブトを照れながら見ていた。

完全に恋人を見るような目だ。

ハシブトは、ピンクのラッピングされたチョコを見ていた。

でもちょっと浮かない顔、そこに美野里が声をかけてきた。


「それより、後は本番だよね。ハシブトさん」

「うむ、そうだな」

その言葉に、僕はハシブトをちらりと見ていた。

ハシブトは、美野里に明るい顔で頷いていた。


「一緒に、チョコレート作ったからね。ちゃんと気持ちが、届くといいね」

「うん、そうだな。だが少し、分からぬのだ」

ハシブトは、とても迷っている様子が見えた。

美野里との間の秘密、それは夜に台所で作っていたチョコ。

それを知っている僕は、もう耐えられなかった。


「ごめん、ちょっと僕は離れる」

「そっ、じゃあ兄さんこれ」

美野里はそういながら、投げ渡してきたチョコレート。

そのチョコは、紛れもなくどこかのスーパーで買ってきた特売のチョコ。


「一応、義理チョコだから」

「ああ、ありがとな」

僕は美野里から初めての義理チョコを、受け取った。

しかし僕はすぐさまその場を逃げるように離れて行った。

(こんなにうれしくないものなのか、チョコを貰うって)

そう思いながら安物のチョコを見ていた。


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