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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
四話:カワセミの里
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俺には好きな女性がいた。

子供だった俺は、晴れた花畑にいた。

そこで、ずっと花を摘んでいた。積んだ花で、花束を作って大好きな女性にプレゼントをした。

「ありがとう」と笑顔を見せた女性。

花束にしゃがみこむ女性は、長い髪、たれ目の俺より大きなお姉さん。

優しそうな笑顔に、俺は照れていた。


お姉さんは、俺に満面の笑みを浮かべてきた。

そんな顔を見ると、俺も笑顔になっていた。

だけど俺の取り巻く状況は辛いものがある。


貧しく、辛く、厳しい、俺の世界。

だけど、そのお姉さんは支えになってくれた。

俺の生きる希望に、なってくれた。


しかし、希望の光は突如暗くなっていた。

ある日を境に、お姉さんはいなくなっていた。

だから俺は、求めていた。お姉さんの代わりになるものを。


スキー合宿から帰ったこの日は、二月最初の日曜日だ。

どうしても僕は、街に繰り出さざるを得ない。

私服でジャンパーの僕が、ファーストフード店で奥の席に座っていた。

茂みに隠れて、双眼鏡を持ってファーストフード店の中でバードウォッチング部。


双眼鏡から見えるのは、ハシブトだ。そしてその前にいたのが、イケメンの男子。

冬なのに、半そでのシャツを着た男。

腕がたくましいその男は、僕がよく知っていた。


(安志、なんで?)

僕は、ファーストフードでハンバーガーをかじりながらバードウォッチングをしていた。


ハシブトに笑顔で、話してくる安志。何を話しているかは分からない。

安志がハシブトと仲良くなったきっかけは、僕が遭難したほぼ丸一日。


その間に、安志とハシブトは距離を詰めたというのか。

いや、違う。今までもそうだった。

安志はハシブトにずっと気があった。そもそも、僕はハシブトの恋人なんかじゃない。

だからこそ、ハシブトが誰を好きになるかなんて気にする必要もない。


(ならば、なぜここにいる?)

僕は、どうしても割り切れなかった。

僕が居ない間に、安志は告白したのが『なぜか』許せなかった。


「ハシブトさんの事、どう思っているの?」

ゲレンデで美野里に言われた言葉が、思い出されていた。


安志とハシブトは、デートしていた。

僕が遭難していたあの日から、ハシブトに安志は告白していた。

おそらく軽い気持ちなのだろう、だけどハシブトは了承していた。

安志は、見た目はイケメンで女子にも人気だからそれは僕も知っていた。

でも、女子とつき合ってもすぐに別れた。別れた女性は二、三十人ほど。

それが学校一のモテ男、安志の特徴だ。


そんな二人を、店の反対側の席から隠れて変装して双眼鏡を持つ僕がいた。

すると、トイレに行く安志が近づいてきた。

僕の席のそばには、うかつなことにトイレがあった。


変装した僕は、身構えて双眼鏡を隠した。眼鏡をかけて、帽子をかぶって目を見えないようにジュースを飲む。

だけど、安志は僕のそばで立ち止まった。


「バレバレだ、喜久」

「な、なんだよ、気づいていたのか?」

ポケットに手を突っ込んでいた安志は、落ち着いた顔を見せていた。


「ああ、もちろんだとも。気になるのか、ハシブトさんの事?」

「そ、そんなことはないよ。偶然、たまたま立ち寄ったから……」

「その割には、用意周到だな。双眼鏡も持ってきて」

「バードウォッチングの帰りだからだ」

「部活もない、日曜日なのにか?」

「ああ、僕にとって鳥は大事な……」

「喜久、俺はハシブトさんに決めたんだ。告白もしたし」


その顔は、やっぱりイケメンでかっこいい。

だけど、僕は安志に一つだけ懸念していた。

(安志はモテる、だけど安志は多くの女を捨ててきた)


「なあ、安志。ハシブトを好きになって捨てるのか?」

「俺は、女を捨てた覚えはない!女が俺を勝手に捨てたんだ!」

不機嫌な顔で僕にはっきり言い放って、トイレへと消えて行った。

僕は、うつむいたままその店を後にするしかなかった。


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