29
目を覚ました僕は、どこかに寝かされていた。
「喜久、起きるのだ」
木製の建物の天井が僕の視界に入っていた。
「えっ?」
小さい声が出て、僕は周りを見ると僕の手にはハシブトがいた。
防寒着、スポーツ店で買った白いジャケットを着たハシブトは僕を見ていた。
悲壮感漂う顔で、覗き込んだハシブトは長い髪が雪にまみれていた。
「ハシブト?」
「起きたのか、喜久よ」
「大丈夫か?」今度は僕の視界に入って来たのが安志だ。
安志と一緒に、部長の声も聞こえた。
「ああ、ごめん」
「こちらこそ、ごめん」
僕と部長安志がほぼ同時に三人謝った。謝りの声が、重なって部長は泣いていた。
部長の涙が、僕の顔にぽたぽたと垂れていた。
「兄さん、死ぬなんてあたしが許せない」
今度はしっかりした声、そのまま上を向いた僕の頬を引っ張った。
頬が引っ張られて、とても痛い。
「美野里……か?」
「兄さん、痛いでしょ。痛がったら、生きている証拠」
「ああ。そういうことか……生きている」
美野里の言うとおり僕は生きていた。痛みがあって、美野里の手を感じられた。
「でも、どうして……」
「イエイヌです」そして、僕のところに顔を見せてきたのは生徒会長だった。
「せ、生徒会長?」
「イエイヌって、もしかして?」
「ここにいますよ、でも今は休んでもらっています」
そう、生徒会長は大きなカバンでいつも持ち歩く狼。
「遭難した時、彼女の力は役に立つな」
僕は、重い体を起こして周りを見るとそこはペンションだった。
学校指定で八人部屋のペンションで、僕が泊まっていた部屋。
そこには、ハシブトも安志も部長も美野里も生徒会長もいた。
その瞬間、僕は自分が孤独で無いことを知った。
「喜久、わしはようやく癒させてもらったぞ。これぞ『カラスの恩返し』だ」
ハシブトの満面の笑みを浮かべて、僕を見ていた。
彼女の胸の中に抱かれたのか僕は嬉しくなった。
僕はそのことを知ると、顔を赤くしていた。
それを見て、みんなが笑ってくれた。
だけど、助かったんだ。その瞬間、全ての疲れが取れてほっとした表情になったんだ。




