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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
二話:失意のフクロウ
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冬の夕暮れはとても早い。あっという間に、夜になっていく。

僕はハシブトと二人で、歩いていた。

部長の告白に、今回は関わりを持たないことにした。

好きな人に告白する、それは僕が経験したことのない事。

学校ではそれなりの人間を演じているけれど、好きな人はいない。

あまり人を好きになるのが、僕はうまくないみたいだ。


ピロティで今頃、部長が生徒会長に告白をしているはずだ。

後ろの校舎を振り返っては見ていた。

少し気になるけれど、今回は邪魔しないことにした。


「部長、うまくいくとよいな」

「そうだな、部長の想いが伝わるといい。それに……」

「どうしたのだ、喜久?」

ハシブトは、僕の顔を不思議な顔で見ていた。


「生徒会長も、孤独を癒されたからな」

「孤独は、癒すものだ」

「本当にそうなのか?」

「ああ、わしが思うに孤独はウニのようなものだ」

「ウニって、あの食べるウニか?」

僕の質問にハシブトは笑顔で頷いた。こうして見せるハシブトの無邪気な笑顔はやっぱりかわいい。


「そうだ。ウニは、美味い。だけどトゲがある」

「孤独は美味いのか?」

「美味いぞ、だがトゲがある。わしはこう見えて美食家だ」

「その割には、よく学食の近くにあるゴミ箱あさっているけどな」

「そうなのだ、だがわしは美食家だ。決して趣味などではないのだぞ。

人間が築き上げた文化のうるおいは、ゴミ箱を見ることで垣間見ることができるのだぞ」

ハシブトは、胸を張って言い放った。僕はあきれ顔でハシブトを見ていた。


「はいはい、分かった、分かった。ゴミ箱をあさる美食家ってことだな」

「そういうことだ」

「納得するのかよ!」

「そうだぞ。全てにおいて生ごみの出す臭いのハーモニー、それは素晴らしい。高貴なる香りだ」

ハシブトが、目を輝かせていう言葉に僕はいつも通りに呆れていた。


「にしても、喜久はなぜ部長を助けようとする?」

「ああ、あの人は僕を助けてくれたんだ。だから助ける、人というのはそういうものだ」

「ほう、そうか」ハシブトは相槌をうった。

「前に僕は悩みを持っていたことを、ハシブトも知っているだろう。そう、家族のことだ。

それ故に、僕は人見知りで学校が楽しくなかった。

入学して間もないころから、クラスになじめず僕は一人ぼっちだった。

当然部活に入ることもないまま、放課後は学校近くの河原でぼーっとしていた。

そして、河原で何気なく空を見ているといろんな鳥が飛んでいた。

鳥たちが自由に飛び回るさまをぼんやりと見ていると、一人の男が声をかけてきた。

『君は、鳥を見るのが好きかい?』ってね。それが部長との出会い」

僕の言葉に、ハシブトが歩きながら頷いた。

街灯に明かりがともった校舎から校門までの道を、僕はハシブトと一緒に歩く。

人はまばらで、部活以外の人はほとんど学校に残っていない。


「部長は、純粋に鳥を見るのが大好きなんだ。

『空を飛べる鳥は自由だけど、人間も鳥になれるんだよ』って。なんだか、その言葉で僕は楽になれた。

鳥みたいに自由でもっと考えること。

人間の悩みは、所詮は大空の中ではちっぽけなものだって知ったんだ。

それから、毎日僕は部長と一緒に河原で鳥を見ていた。

そのうち、部長は安志も連れてきて三人で一緒になった。

そして部長は、言いだした。

『かつて、この学校には『バードウォッチング部』があった。

俺たちで再び『バードウォッチング部』を始めよう』って」

「そうだったのか、だから喜久は部長が好きなのだな」

「うん」僕は、前を向いていた。

見える空の夕日は、沈んで灰色から黒の空に変わろうとしていた。


「ハシブト、『バードウォッチング部』は楽しいか?」

「鳥は、みな生き生きしておる。同族を、自分の目で見るのも楽しいものだ」

「まあ、ハシブトらしいな」

「そうだな、面白いな」

「それにして、喜久。前に誰かいるぞ」

「えっ、誰?うそ……」

校門の先、車道を隔てた先に一人の女性が立っていた。


それは、ありえない一人の女性。

同じ学校のブレザーに、ミディアムヘアー、落ち着いた様子でたたずんでいた。

人をひきつけないオーラを放った女性は、思いもよらない人がそこにいた。


「な、な、なんで?」

「扇君、あなたにお話があります」

車の通らない道路を、ゆっくりと渡ってきた女性。

威圧感と静かな表情は、明らかにあの人だ。


「なんで、いるんですか?生徒会長?」思わず僕は、後ろの校舎に振り返った。

「彼の話は、もう終わりました」

道路を渡り終えた生徒会長は、相変わらず冷淡な顔を浮かべていた。

僕は、なんだか悔しかった。冷酷無比な生徒会長がそこにいたので、僕は悲しい顔を浮かべた。


「扇君、私と話をしてくれませんか?」

「どういうつもりですか、黒田会長?」

「特にハシブトさんに、関係のある話です。招待状を送ります、来てくれますか?」

それは、生徒会長が渡した一枚の封筒だった。

僕はそれを見て、なんだか寒気がした。しかしハシブトは、生徒会長に一つ返事で頷いていた。



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