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孤独を癒すカラス  作者: 葉月 優奈
二話:失意のフクロウ
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昼休み、僕は学校の敷地内にあるピロティに来ていた。

ピロティとは、いくつもの柱に支えられてできたスペースの事。

何本ものそびえたつ芸術的な柱は、外の寒い空気をはっきり感じられた。

だけど、景観はよくベンチとかもあって学生の憩いの場所として利用されていた。


そんな場所で、僕は妹の美野里と近くのベンチに座っていた。

なぜか、美野里はハシブトにいつもお弁当を用意していたが。

美野里は満面の笑みで、ハシブトにすり寄っていた。


「ハシブトさん、あーん」

箸で玉子焼きを持った美野里は、ハシブトに食べさせていた。

美野里の隣のハシブトは全く抵抗することもなく、美野里からもらった玉子焼きを食べていた。


「うまいぞ、美野里」

「ありがとう、ハシブトさん。ほかにも、あたしいろいろ作ったんだよ。

どれがいい、ポテトサラダ?それとも、ウィンナー?」

「美野里は、いいお嫁さんになれるぞ」

「ええっ、本当?」

美野里は、顔を赤くして舞い上がっていた。

隣で僕は、うらやましそうに見ながら購買のパンをかじっていた。


「それにしても、美野里」

「何、兄さん。邪魔しないで、あたしとハシブトさんのラブラブタイムよ」

「はぁ、どうも」そして、僕には冷たい美野里。

でも僕は、美野里に聞かなければいけないことがあった。

近くのカバンから、ゴミ捨て場で拾った雑誌を見せた。間違いなく、生徒会長の所有物である雑誌。

この雑誌が、なにか生徒会長の秘められたプライベートになるんじゃないかと僕は思えた。


「この雑誌、知っているよな?美野里はファッション雑誌、読みそうだし」

「『セゾンティーン』だね、少し古いやつ。一年ぐらい前のだね」

「こういうのって、どういう人が見るんだ?」

「ティーンのファッション雑誌だよ、読モが身近なファッションを紹介する雑誌なんだ。

JK(女子高生)のバイブルだしね、あたしは『DG』派だけどね」

美野里は、雑誌を見ながらあるページで目を止めた。


「ねえ、これ?」

「なんだ?」

「このイラストって何?」


そこには、一枚のイラストが描かれていた。

昨日はちゃんと見ていないけれど、そこには器の絵が描かれていた。

器には人のようなものが、手をつないでいた。


「なんだこれ」

「なにこれ、かわいいわね。兄さんの趣味じゃないでしょ」

美野里の目が輝いていた、書かれたイラストは生徒会長のようなミディアムヘアーの女性。

このイラストが生徒会長なら、彼女はもっと女性的ではないのだろうか。


「ふむ、こういう服が好きなのだな」

「えっ、もしかしてハシブトちゃんも、好きなの?」

「わしが気になるのは、なぜこれをファッション雑誌に入れたかだな」

「ねえ、誰なの?」当然聞いてくる、美野里。

ごまかす必要もないので、「生徒会長だ」とちょっと自慢げに言った。


「えっ、あの生徒会長が?」大きい声を出す美野里。周りの視線は、幸いないみたい。

「ああ、そうだとも」

「あの、冷酷無比な生徒会長が?」

「大げさだな、まあそうだけど」

「狼飼っているらしい、あの生徒会長だよ」

「狼って、日本じゃ絶滅しているぞ、美野里」

「でも、フった相手を広報誌で貼り出したり、部活をつぶしたりの生徒会長でしょ。

あたし、あの人嫌い。友達少なそうじゃない」

「まあ……そうだね」


どうやら、生徒会長は美人ということもあって女子からは不人気らしい。

美野里は不機嫌な顔で僕を見ていた。


「あの生徒会長って、すごいお屋敷に住んでいるんでしょ。

昔からの名家で、なんでも漆器の人間国宝が先祖にいるとか……」

「すごい、そんなに?」

「見た目は美人で、金持ち。天才職人の一門、頭脳明晰、仕事ができる生徒会長」

美野里の言葉に、なんだかトゲらしきものが感じた。

これが女の嫉妬ってやつか。美野里の瞳が燃えているように見えたし。


「でもあんなのをなんで男子は好きなの。信じらんない!見る目無いわよ!」

ふてくされ顔で、ご飯を口に入れた美野里。


「あははっ、そうだね」と笑いを合わせて、(部長にこんなこと言えない)などと心で思った。

「そうか、でも彼女は思いつめているようにも見えるぞ」

ハシブトはそういいながら、ファッション誌を眺めていた。

相変わらず、ファッション誌に書かれた女の子は笑顔を見せていた。


「どこが?明らかに悪魔じゃない。独裁者で、冷酷無比、先生に媚びを撃った悪魔でしょ。

凛とした美人でミステリアス、ありえないわ」

「そうじゃなくて、なんかあの時の生徒会長、寂しそうだったから……」

僕はどこか残っていた、生徒会長が寂しそうに門の中に消えて行ったことを。


「さすがだな、喜久。やはり喜久は優しい」

ハシブトは、そんな僕に同意してくれた。その時の笑顔が、僕に同意しているみたいで嬉しかった。


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