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52-1 錬金術師の階級です

 即行で馬車の中に設置されている非常ベルを鳴らす。

 と、乗合馬車が緊急停車した。


「へ!? な、何!?」


 水沫君の後ろに居た痴女が驚いてキョロキョロ首を振っている。

 桑色の髪はラプンツェルヘアで可愛いし、黄緑の目に片眼鏡も似合ってる。

 魔女みたいなツバの大きいトンガリ帽子も良い。

 全部の指に指輪がいっぱいでムラなく宝石みたいなネイルが上手に塗られてる。

 素足を飾る沢山のキラキラしたアンクレットも綺麗。

 繊細に編まれた黒いレースのローブは正直に言って最高。

 だが、その下がダメだ。

 黒レースのトップレスブラとお揃いの総レースのショーツ……。ショーツの方は長いレースリボンで余分に布が有るはずなのに、何故か全体の布面積が行方不明なのだ。


 アウトー。完全にアウトー。


「如何サレマシタ?」


 御者の黒い影みたいな妖が、下から素っ飛んできた。


「ふしんしゃ! じあん!!」


 ビシッと痴女を指刺すと、御者は水沫君の後ろで目を白黒させている彼女を見つめた。

 即座に捉えないのは、妖の容姿や性質が多種多様なせいだろう。

 ちょいちょい居るんだよね、着られる服が限られる種族。

 これが、そう言ったやむおえない事情なのか、やはり変態の奇行なのか、御者さんは吟味しなければならない。

 この痴女は、私の勘が100パー後者って訴えてるけどね!!


「ちょっと馬鹿弟子! アンタ弁護してよ!」

「いや無理でしょ! 何でそんな馬鹿みたいな格好で来たんですか!?」

「え? ムラムラしない?」

「アンタ馬鹿なのか!? この状況でそんな事言ったら━━」


「変質者ヲ確認。迎撃システム稼働」


 はい、やっぱ後者でした。

 御者さんの目が赤くなり、パチンと指が鳴った。


 刹那、痴女の体が乗合馬車の外━━それも前方に強制的に出されて、


「グォオオオアアアアア!!」


 馬車を引いていた六足大熊の紐が解ける。

 そして熊は、殺意120パーセントの咆哮を上げて突進して行った。

 あ、顔面抉れた……うわ、わわわわ……ああなるんだ。

 六足大熊めっちゃ怖いな。野生のには遭遇しないようにしよ。


 ……よし、何はともあれ、子どもの敵が一つ排除された。めでたし、めでたし。


 そう思って御者さんが去って行った直後の事だ。


「私今死にかけたんだけど!? 水沫、アンタの地元命が綿菓子より軽くない!?」


 何故、復活してるんだ変態……。

 もう一度非常ベルを叩こうとすれば、「姫様様タンマ! 着替えさせるから!」という水沫君のストップが掛かった。

 ……チッ。






 運転を再開した馬車。

 ローブの中をレースをあしらったグレーのミニチャイナドレスに変えた彼女は、私と水沫君の向かいの席に座った。


「さっきは御免なさいね」

「いいよー!」


 バリバリバリと。

 私は貰ったお菓子を頬張りながら言った。

 ロイ●のチョコなチップスだよ! しかも3箱も!

 お姉さん、子ども心がとってもよく分かってる。


「んで、師匠はこんな場所で何を?」


 バリバリ。

 ん、甘じょっぱいの、すごく美味しい。

 ……はい? 師匠?


「水沫君の、せんせ?」

「そうよ。留学してたこの馬鹿の面倒見てたの。七姫様も気軽に乃杏(ノア)先生って呼んでね」

「……乃杏せんせ」

「んン゛……こう言って素直に呼んでくれた子……しかもちょっと舌っ足らずな感じに呼んでくれた子初めて」


 感動してくれてるとこアレだが、さっきこの人死に掛ける原因作ったの私なんだよね。

 何で生きてるのか聞いたら、転移させられるって分かった瞬間、咄嗟によく似た人形を身代わりにしたらしい。

 あの一瞬でそれが出来た辺り、実力は確かなレベルの先生だと分かる。


「おい、糞師匠。さっさと話進めてくれませんかね?」

「初対面で『ババア』っつった馬鹿弟子に、この感動は分からないでしょうね」

「いや、アンタ実年齢6ぴゃぎゃぼふが!?」


 水沫君の顔面が、凹んだ。さっきのクマの一撃に負けず劣らずのパンチだ。

 水沫君……キミはウチで働いて何を学んでいたんだ。女性に年齢の話なんてしちゃダメに決まってるじゃん。


「アンタ、今失職中でしょ。ちょうど良いから、試験を受けさせようと思って来たのよ」

今年の文字「熊」でしたね!

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