51-2 プッツン後に誘拐です
さて、そういう訳で兄ちゃん達が通う学校近くに霊道を開けて、兄ちゃんは週一で現世に帰るれど、基本は常世に帰ってくる。
……マ●カーしたかった。
ジィジも麦穂も、5歳児相手なのに完膚なきまでに叩き潰しに来るんだもん……グスン。
メイシーと藤君はあからさまな接待プレイするし。程良く手加減してくれるのって、中学生トリオ(※兄ちゃん、彩ちゃん、紙弦君)と水沫君だけだ。
簪? あの子とは純粋に互角だよ。
……しくじった。状況整理のハズが●リカーへの執念が強過ぎて脱線した。
今私が思い出すべきは、此処に来た経緯だ。
マ●カ…………は、置いておきなさい私。
話が進まん。
七五三で千歳飴をいっぱい貰った私。
流石に毎日舐めてたら飽きてきた。
だから麦穂に『今日のおやつはコレでプリンにして』って頼みに行くつもりだったのだ。
アレンジで検索かけて、プリンのレシピが出て来た時は吃驚したよ。
その途中で眠たくなって…………あれ? そこから記憶が無い。
お昼ご飯に睡眠薬が盛られてたのかな?
「……水沫君、やっぱり私の事誘拐してる?」
「濡衣ぅ!!」
あ……独り言のつもりだったけど、水沫君たら自分に言われたと思ったみたい。
復活しちゃったぜ。
「私、たぶんユウカイされるところだったっぽいんだよ」
「どういう事です?」
薬を盛られて寝てしまった事を話すと、水沫君は私が起きた時に蹴って穴を開けた茶色い革張りの旅行鞄を広げた。
「うわマジだ。姫様がてっきり隠れんぼでもしてたのかと思ったけど」
水沫君て、時々私の事何だと思ってるのか気になる事言うよね。
流石に隠れんぼで他人の旅行鞄に入ったりしないよ。
「激似だから気付かなかった。これ俺のじゃ無ェわ。着替えも歯ブラシも、一色無い……」
つまり私を攫おうとした不届者は、眠った私を茶色い大きな旅行鞄に突っ込んだ。
すると運悪く、よく似た水沫君の鞄と入れ替わったって事か。
「水沫君グッジョブ!」
「うーん、姫様が無事な事に関しては良いけど……この後の出費がな〜」
「ぜんざいさん、きえた?」
「勝手に消さないで? 貴重品はそもそもそっち入れてません」
「レンキンジュツにいるもの入ってた?」
5歳児が入る大きな旅行鞄だから気になった。
「いや、……そっちもコレに入ってるんで」
水沫君は、耳についているピアスに触った。
え……ピアス型の収納アイテム? おっしゃれ〜! ていうか、そんなの有るなら水沫君はやっぱり犯人じゃ無いね。
トランクよりそっちに私を無い無いした方が確実だから。
「生き物は入らねェんで、実験ラットは置いて来ましたけど」
「水沫君は じぶんのジョウキョウを不利に もってく のが すきね」
その正直なとこが美点ではあるんだけど。残念な子だなぁ。
「え、じゃあ きがえと ハブラシと……何入れてたの? あんな大きな旅行鞄なのに」
「履歴書とか羽根の手入れブラシとか、靴も入ってましたからね」
羽根の手入れブラシか。
私は羽根が結晶化するから常に浄化されてて無縁だけど、普通の子はそういうの要るんだね。
ドンッ!!
大きな音と振動に、ふと乗合馬車の外を見た。
あら此処、一般街道なのに尾花中州が見える。
ウチの領内で1、2を争う程よく魔物が出るかなり広い中州だ。
魔物だけでは無く魔族も出て、もう本気で敵も味方も分からなくなる最前線だから、私も投入された事は無い。
(※あまり焦点を当てていないが、翼が揃っていた時は、数日置きにやや小規模の戦線で魔物を間引いてた)
今日もウチの戦闘員達が元気に魔物とか狩ってるね。あ、火柱だ。
「あの中州の光景も、此れが見納めか〜。あそこの誘導符作りが一番最初の仕事だったんだよなぁ」
……誘導符?
「なにそれ?」
「え、姫様知らなかったんですか?」
正直に頷くと、水沫君は説明してくれた。
初雷領は、領民全員が外出時に封印符の所持が必須な場所だ。大きな衝撃による歪みが生まれれば、領内の至る所に魔物が現れるから。
しかし近年、封印符や術符の開発が進み、魔物の大半は決まった場所に現れるよう誘導出来るようになりつつあるらしい。
その凄いアイテムが誘導符。
やったね! 小さな摩擦で引火する乾燥地帯みたいな領地がちょっと安全地帯になるね!
何で私、教えてもらってないんだろ?
「あー、あの中州ともう1ヶ所は上手くいってるんですけど、それ以外がイマイチだからかなぁ」
精度が悪いから実験段階なのね。
まだ実験段階の試作品を勝手に私が使ったりしないようにって事かな?
……私、結構いたずらっ子だと思われてる?
(※キレたら手段を選ばないクレイジービーストという共通認識)
ていうか、尾花中州が見えてるって事は……。
「王都いこうとしてたの?」
「その予定でしたけど、先に姫様を送り返すんで次の停留所で━━」
「来ちゃった♡ 馬鹿弟子」
水沫君の肩に、細く綺麗な手が触れる。
そして後ろを見れば、
━━━━痴女が居た。




