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50-2 一緒に暮らします

「ただいまじゃ〜」

「おかえり〜」


 実は簪は向いの部屋だけど、出かけた後私が暇そうにしていると、よくこっちの部屋に来る。


「群雨さんさんどうだった?」

「毒は抜けてきとるが、まだ阿万寧姫に世話される日々継続じゃな」


 お兄さんは、やっぱりお見合い相手が駄目な輩だったらしい。

 しかも人間で、とんでもない改造した工具や毒を使って群雨お兄さんと渡り合ったそうだ。

 簪がギリギリで割り込まなかったら正直、結構危なかったらしい。

 相手も致命傷多数あったらしいけどね。逃げられちゃったんだって。


 何を考えてそんな事をしたのかは分からないけれど、お見合い相手は鵺のおじさん達を脅して阿万寧さんとジィジをくっ付けさせようと計画した張本人だった。


 全く、ジィジはバァバ一筋なのに何してくれてんだか。

 歳の離れ方もエッッッグイしね!

 人間感覚なら祖父と孫どころか、骨と胎児にもならないでしょうよ。


「おんみょーじ、だったんだよね?」

「兄者の話じゃとな。騎士団と捕方衆が、術を使った男に尋問したら、幻月領の現世への出入り口を、過激派に見つけられたそうじゃ」


 陰陽師も一枚岩じゃ無い。

 全世界の妖と敵対してたら非合理的すぎるよね! 普通に食ってけないよね! という妖にも人にも優しいのが温厚派。

 結構居るけど、やっぱり古い家や個人的な恨みでそっちの道に進む人間も居るし、政治とかお金がねぇ、絡んじゃうとやっぱりややこしい事になる。


 そうしたごった煮で生まれた妖に優しく無いのが過激派。名家の落ちこぼれや、陰陽師の中でも手に負えないアウトローなのが集まって、妖なんざ人じゃ無ェから殺しまくれ! て暴走する集団。


 妖……じゃ無くて、妖魔に家族や恋人を惨殺された復讐ならまだ同情の余地あるんだけど、本当にそういう経緯でそっちの業界に足突っ込んでるならアウトローにはなってないと思うんだよ。復讐するより先に破滅する確率高いから。


 話を戻すけど、まぁそんな連中に常世へ繋がる道、謂わゆる『霊道』を見つけられたのか……それは焦っちゃうかもね。

 落ち着けばサクッと塞いで新しい霊道作ったら良いだけって気付いただろうに。


「で、近々姪か甥が出来る」


 口に入れようとしていた丸いチョコを、思わず畳の上に落としてしまった。


「ふぁっ!?」


 そんな話だった!?

 ゲンド◯ポーズで深いため息を吐く簪は言葉を続ける。


「さっきな、……兄者の見舞いに行ったら、物凄い顔の父上が仁王みたいに立って兄者を睨んでおっての。怖かったのじゃ」


 いや……うん。そりゃね、色々問題ありまくりだよね。えーと、何歳だっけあの2人……?? 体格からして15は絶対超えてるよね??

 18ギリいってる? 産む頃にいく? へぇ……兄ちゃんと結構歳離れてたんだな〜。


「というわけで、兄者と阿万寧姫、婚約成立じゃ」


 結婚は2人が18歳になったらだって。

 そりゃそうだわ。


「お、おめでとう。おむつケーキ、じゅんびするね」

「お主がオムツを手配したら、お主自身が使うのと間違われまいか?」

「オムツはいてないもん!」


 失礼しちゃうよ全く。


 ぷんすこと頬を膨らませる私だが、実は内心は「いいなぁ」と、とっても阿万寧さんを羨ましく思っている。


 私達みたいな身分になると、恋愛結婚出来るってレアだからね。

 私はなんとなーく藤君とこのままゴールイン出来そうな気がしてるけれど……何処かで何か、ボタンのかけ間違いが有れば……それこそ屑カス野郎が要らないことして勝手に私の婚約者でも決めてきたら、あっさりと崩壊してしまう。

 だから、望まないお見合いからの大どんでん返しで、好きな人との子どもにまで恵まれて、限り無く結婚に近い婚約をした彼女が羨ましいのだ。


「姫様、到着されましたよ」


 麦穂に呼ばれて、私は立ち上がった。


 ━━━━来た!


 いつもはやっちゃ駄目だけど、今日は多めに見てくれるらしい。

 階段を降りて、廊下を一直線に進む。


 そして広い玄関に立つ人影に、私は飛びついた。


「兄ちゃん! ようこそ鞍馬本邸へ!!」


 今日から、兄ちゃんも初雷領で暮らします。

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