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43-1 絶望到来です

 大変だ……。


「乗り心地は?」

ゆう()!」

「良えお返事やねぇ」


 プイプイに乗っての移動中。

 頭を撫で撫でされる私の顔面は、とっても強固に笑顔を貼り付けている。


 鞍馬夜凪が……しっとしりた関西弁。


 原作では普通でした。

 誰かは全然思い出せなけれど、別にそういうキャラ居た筈だよ。

 鞍馬夜凪は、ただの標準語で涙黒子のある色気漂うイケメンだったよ。

 それが、コテコテと言うより、素朴で柔らかくてしっとりした感じの関西弁。


 性癖刺さるうううぅぅぁああああ!!

 これはもう傾国の域! なんでそんな事なってんのなってんの兄ちゃん!?

 妹の性癖クラッシュしてどうする気なの!?

(※どうする気も無い)


「どこむかってるの?」


 平静を保て私。

 荒ぶる内心(ボロ)が出ないように聞けば、これと言って目的地がある訳では無いらしい。

 付き添いの子達は拾いたいみたいだけど。


 ここみたいな巨大な閉鎖空間を創る術は、創ってる術者の脳に負荷を掛けて掛けて掛けまくり、虚空を見てブツブツ言わすか、泡吹いて白目剥かせるのが有効らしい。

 なるほど、だから兄ちゃんさっきから壁をいきなり壊したり斬ったりしてたんだ。


 術者に修復で労力使わせられるもんね。


 ギザギザハートのお年頃で非行に走ってるのかと思った。


「お題方式やと、お題を解かな出られへんから、今回はずっと簡単なんよ」


 それ、もしかしなくても『〇〇しないと出れない部屋』というヤツでは?

 兄ちゃん入ったの?


 詳しく聞こうとしたら、プイプイの動きが止まった。

 時にプイプイの尻尾がどう見ても蛇なんだが、……鵺の関係者じゃ無いと信じたい。

 極上もふもふ。絶対に家に連れて帰るんだ。ジィジに可愛く可愛くおねだりして、家で飼うんだ。


みゃごみゃごみゃご(誰か近づいてくるぞい)


 ふむふむ。


「おなかすいたのね」

みゃご(違う)!」


 その時、私の視界の端を蝶がひらりと飛んだ。


「鞍馬の若君に姫様! 見つけられて良かった」


 あ、料亭の中居さんだ。

 簪と一緒に行った時にも声を掛けてきた中居さんだ。蝶の妖だったんだ。


「このような事になってしまい誠に申し訳御座いません」

「いや、謝らんで良えよ。お姉さん等のせいちゃいますやろ」


 兄ちゃん優しいな〜。てか中1でナチュラルに中居さん(外見年齢40後半)を『お姉さん』呼び出来るの、末恐ろしいな。


 中居さんは兄ちゃんの言葉に凄く辛そうな表情で「とんでもございません」と言っている。

 想像しなくても分かる。

 この現象は料亭全体に及んでいる。

 私達以外にもお客さんは沢山居た筈だから、……最悪の事態だって起こっているだろう。

 本当なら謝って許される事ですらないし、今兄ちゃんが言ったような大らかな言葉も、普通の仕事観を持っているなら、喜んで受け入れられない。


「戦う事の不得手なお客様は、皆様此方で確保した場所に避難させて頂いております。御二方……失礼致しました。御三方は如何致しましょう?」


 プイプイの扱いも私達と一緒なんだ。

 優秀な中居さんだ。


「俺はええわ。2人、拾わなあかんの居るから。この子等を連れて行ったげて」

「かしこまりました。では行きましょう」

「いい」


 直ぐに首を横に振ったのは、勿論私である。

 困ったように兄ちゃんを見る中居さんと、これまた困った表情になる兄ちゃん。


「我儘言うたらアカンよ。お父さんとお母さん、心配するやろ?」

「どっちもいないから、だいじょーぶ!」


 ここぞとばかりにサムズアップして言い切る。


「あれ? この話題まさか地雷やった?」

「ちっとも」


 死んでないし。母親の方は知らないけど、塵野郎はピンピンしてるらしいからね。


「それに、私もみんなが気になる」

「せやったら、尚の事避難所行った方が……」

「蛮族だから、おとなしくヒナンジョになんかいないよ」

「身内に失礼過ぎひん?」


 事実だからしょうがない。

 そもそもこんな所で尻尾巻いて逃げるような妖は、鞍馬家に居ないのだ。簪ですら今や立派なバーサーカーである。


「……畏まりました。七夜月様の仰せのままに致しましょう」

「え、中居さん本気?」

「七夜月様でしたら大丈夫でしょう」

「その根拠何なん? この子はまだ小さいんやで?」


 中居さんは、至って不可思議な物を見る目で、首を傾げた。


我々()に小さいも大きいも関係ございませんでしょう? 相手を殺す力をもっているのなら」

「……っ」


 兄ちゃんの顔が歪む。

 余りにも現世の人間社会に浸かった兄ちゃんの美点であり、弱点でもある感性。

 此処で下手に反論させたら、後々面倒臭い事になる。

 以前殺した狐のせいで、兄ちゃんが天狗の頭領になる事を拒んでいるのは、一部の妖に知れ渡っているけれど、それはまだ子ども故の反抗期だと、誰も問題視していない。

 でも此処で『妖の感性を失いつつある事』までバレたら問題だ。


 ジィジのおかげで纏まっている分家の天狗達が騒ぐだろう。

 そうなれば、他家が付け入る隙だって生まれる。


 ……原作通りになればまだ良いけれど、私というイレギュラーのせいで、展開が前倒しになるかもしれない。

 それは良くない。

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