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4-2 ジィジです

「ちょっとねぇ、俺じゃ無かったら今の死んでるよ? 冗談も程々にね」

「そりゃこっちの台詞だペド狐。何が『アリ』だ」


 しれっと、左隣から右隣に移動してんじゃ無ェ。


「ん? いやいや、流石に俺じゃ無いさ。出来の良い孫が他に居てね。一回合わせてみないか?」

「死んでも断る」


 少なくとも200年は嫁に出さん。


「普通に長いよ。引くわ……」

「長命種の適齢だ」

「それお前の個人的主張でしょ。七チャン絶対に反抗期ヤバいぞ……あ、終わった」


 喧しいわ。貴様に反抗期を心配される謂れは無い。


「んじゃ、流石に行くよ。お前が何時迄も動かなかったら、七チャンが俺に気付いて何かしてくるかもしれない」

「派手に騒いでんのに誰も反応しねぇと思ったよ。勝手に儂の精神を隔離してやがったのか、お前さん」


 最初は認識阻害で近付いてた。

 そこは間違い無い。て事は、丁度七の名前を気安く呼び始めた辺りで器用に術式を編み、自分と儂の精神を体から離したんだろう。

 警戒心の強い王族もすぐ近くに居るってぇのに、酔狂な事をしやがる。


「彩雲さぁ、ちょーっと丸くなり過ぎじゃないかな? 俺、今回はお前の事9割殺せたよ?」


 簡潔に言おう。ニヤリと笑う目の前の狐に、カチンと来た。


 精神感応系の呪術で、コイツの右に出る者は今の所存在しない。

 それは知っているが、


 ━━バリンッ!!


 特殊な隔離空間を拳で叩き割ってやった。


「……うっわぁ」

「はっはっは、脆いなぁ」

「そういう問題じゃ無いよ。こういうのは物理法則通じ無いんだよ。何で物理で破れんだよ?」


 うむ。ドン引きして吼えてる顔の愉快な事。


「常識破りで儂の右に出る者は居ねェのよ。忘れてたんなら、お前さんもボケが始まってるんじゃないかい?」


 ━━━━尾も、九本あった癖に八本に減ってる事だしなぁ。


 視線だけで言ってやった時だった。


「お館様、そちらの方は……」


 俺が物理で強引に術を破ったから当然と言えば当然だが、周囲に狐の存在が知れた。


「はぁ、……全く」


 奴は肩をすくめ、素早く印を切った。

 周囲の者の目がガラス玉のように虚になる。

 記憶操作と、再び認識阻害の術を編んだようだ。


「俺が来ているのがバレたら、馬鹿息子どもが調子に乗って面倒臭いんだ。誰かさんに刺されたせいで残機も減ったしね、本当にもう帰るよ」

「おー、もう来んなよ」


 狐の姿が見えなくなるのと同時に、周囲の様子が元通りになり、丁度良いタイミングで七も戻って来た。


「ジィジー」


 手を振って此方へ来るので、満面の笑みで抱え上げる。勢い余ってクルクル周りもした。

 こうすると、改めてまだ小さいなぁと思う。


「良くやったぞー! 帰りに好きなモン買ってやろう!」

「くらぶ◯りえ」

「良いな、あそこのバウムクーヘンは美味い」


 下らん茶番に何時迄も付き合ってやる程お人好しでは無い。

 侍女と、阿保息子の代理で来てる男を連れてその場を離れようとした時だった。


「待て」


 野暮な幼子の声が、耳に届いた。

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