41-2 もうコイツは巨大な猫です
(萌芽視点)
辿り着いた悠揚で感じ取ったのは懐かしさ……では無く、お出汁の匂いじゃった!
吾輩も何か食べたいのじゃ〜。
見合い潰したら阿万寧タソと一緒に食べるのじゃ〜。
吾輩、こう見えて計画無しに出てきた訳では無い。(※虚偽)
①群雨君に接触し、今回のお見合いは吾輩反対してる事を伝える。
②阿万寧タソを回収し、お昼ご飯を食べて帰る。
……うむ! 完璧!!
名付けて『わがはいのかんがえる⭐︎さいきょーのらんちまえのうんどう』じゃ。
さあ! 行くぞい!
「━━鏡花流・双閃舞」
吾輩は、いきなり背後から走ってきた何かに思い切り拳でぶっ飛ばされた上、着地点に先回りしたそれに、今まで突き進んでいた方角に対して直角に曲がるよう蹴り飛ばされた。
死んだと思った。
「おやぁ? 他の式より頑丈ですねぇ」
なになになに!? え、メイドさんじゃ!
本物か? 吾輩、メイドさんを見るのは初めてじゃ。
メイドさんは、コキリと首を鳴らしてこっちに歩いてくる。
あの、首を鳴らして近付いて来るメイドさんとか吾輩解釈違いなんじゃが……。
その動き玄人の殺し屋じゃないかの?
……もしかしなくても、今吾輩を吹っ飛ばした『何か』は、あの可愛らしいメイドさんかの?
『式』とか言ったな? どこぞの式神と勘違いしておるのか?
たらたらと、冷や汗を流しながら、吾輩はもふもふ後ろに下がる。
「まだ残っていやがったのかと、目障りだったんで瞬殺する気でしたがぁ」
ニッコリと、メイドさんが笑みを浮かべる。
「丁度良いですぅ。今頃ぉ、私の超ッッッ絶可愛い姫様がぁ、取るに足らないダボハゼ野郎とお散歩デートしてる事を考えたら虫唾が走るあまり耳から脳髄垂れ流しそうだったんですよぉ」
顔と台詞が合ってない! 恐ろしい事一気に言った!!
やばいぞ。……これはヤバいぞ。
「サンドバッグになれや」
うひゃぎょうぴゃやびぃぃいいいい!?
訳の分からん絶叫を上げてしまっておるが、聞いて驚く勿れ。
吾輩、もっふもふの体毛ともっちもちの脂肪で防御力は高いが、
━━━━戦闘力は塵紙以下なんじゃぁぁああああ!!
三十六計、逃げるに如かずじゃああぁぁぁあああ!!
「みゃごみゃごみゃみゃごみゃご! みゃごみゃごみゃごみゃご!」
吾輩は全速力で逃げながら必死に説得を試みた。が、
「あ゛ア゛!? 『当てれるもんなら当ててみろ!』だとぉ!? 鞍馬家のメイド舐めんなあああ!!」
通じんかった!
ていうか『鞍馬家』の子じゃったぁあああ! やっぱり彩雲君に関わるとロクな目に遭わんのじゃー!!
「みゃごみゃごみゃあ!」
「死なすッ」
目の色が変わった。
何? 何て訳したの!? 絶対にまた誤訳じゃあああ!
この前の会議の時もそうじゃった。
王様ってば、末姫様を殺そうとしたあの護衛を吾輩が粋な男とか言うたと抜かしおった。
言ってなーい!
吾輩は『この部屋エアコン効き過ぎゃない? 吾輩寒いの苦手じゃ』って言ったんじゃ!
なのに『お前の感覚ではそうなのか』……からのアレじゃよジーザス!
いやふざけてる場合じゃ無いのじゃ! マジでヤバい誰か助けてぇぇええええ!!
そんな怖いメイドさんとの鬼ごっこは、唐突に終わりを迎えたのじゃった。
メイドさんの拳が届く寸前に、吾輩は道端に転がり、助かった。
そして今現在。
吾輩、この術知ってる。
もふもふぽてぽて。
歩き続ける事約15分。
周囲は魑魅魍魎の大行進。
イタチに狸、河童に仏に相撲取り。花魁、化け猫、天女に舞妓。
酒の匂いと煙管の煙が行手を覆うも、悪い物は全て木造家屋の間を揺れるお化け提灯達が嗤い飛ばして吹き飛ばす。
数多の天灯と、月が照らす美しい花街。
うむ。これ、吾輩が昔よく使ってた術じゃ。
吾輩達は、狐や狸のように幻術は得意では無い。また龍や天狗の上位種は転移をホイホイ使いよるが、それも不得手じゃ。
どれもこれも、大抵の妖の能力は使用出来るが、中途半端より上手━━所謂『器用貧乏』という奴じゃ。
では、幻術で見せている物でも、転移で移動したのでも無いなら、この空間は何なのか。
過去に見た空間を記録して切り取り、現実に持って来る術!
しかも術者である吾輩達が見た空間に限らず、術の対象範囲内にいる全生物が見た空間じゃ。
これで夢万歳のテーマパークみたいになって面白いのじゃ。
そんなモン何故使っておったのかって?
知れた事よ。
強過ぎるバトルマニア系の輩から逃げるためじゃ!




