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38-1 デート(?)です

※デートという認識は幼女のみ。


藤紫→姫様と一緒の時間、至福 (脳内ぱやぱやお花畑)


ジィジ→くれてやって良いとは言ったが今じゃ無ェ。デートじゃ無ェからな。履き違えんなよ? (圧)


簪→「デートだから」でマウント取られてちょっと悔しい (可愛い)

 さてさて『見合いなんてガンガンぶっ潰そうぜ⭐︎』となった私達だが、そう易々と自分の予定を変えられる訳が無い。

 よって、部屋に近付く藤君の気配を察知した私は、一番乗りで戦線離脱と相なった。


「じゃ! デートだから!」


 アデュー⭐︎ と、指2本で敬礼して障子の前に行く。


「そうか、デートならば仕方ないな━━なんて言うと思うたか!? ちょっ! 待たんかぁぁあああい!!」


 簪の静止の声を振り切って廊下に飛び出した私は、頭上に疑問符を浮かべる藤君に抱っこをせがみ「ゴー!」と、部屋から遠ざかるよう指示を出した。


「今、簪姫怒鳴ってませんでした?」


 そう後ろを気にしつつも、ちゃんと進んでくれるのが藤君の良い所だ。


「ししゅんきなだけだよ。気にしないであげて」


 私は出来る女豹()

 狙った男の子とのデートチャンスを逃すようなヘマはしない。


「ていうか、簪がくるの藤君しってたの?」

「はい、麦姐さんが言ってたんで」


 麦穂……、私にも言っといてほしかったかも。


「どこか行きたい所有りますか? 昨日下見済ませたんで、紫陽花園も美術館も陶器市も案内出来ますよ」


 陶器市もやってるんだ。

 料亭の敷地からは出るの?

 ふーん、気になるけどジィジとのご飯の時間を考えると覗くのは難しいかな。


「じゃあ、あじさいえん」


 此処は季節の花も当然咲くけど(※青い色合で)、年中紫陽花が咲いている名所でもある。

 さっき、ジィジと料亭の敷地に入った瞬間ちょびっとだけ見えた。

 水の匂いと少しだけ冷たい空気が漂っていて、絶対に綺麗な雰囲気だったから、ちゃんと見てみたい。

 あ、でも先に、


「藤君がつかれてたら、やっぱりラウンジとかでやすむのでいいよ」


 元気だからって私1人ではしゃいでも楽しくない。

 きちんとお仕事してる藤君のへの気遣いが先だ。

 なんか藤君の服に、悪意みなぎる気配が染み付いてるのが気になるんだよね。

 執念深い奴と戦った後たまにつくの。


 此処は魔物が出ないはずだけど……何と戦ったんだろう? 意外と治安が悪いのかな?


「姫様と一緒に居たら、疲れなんてすぐ吹き飛びますよ」


 …………。


「藤君、『すし』って10かいいって」

「へ? えーと、すしすしすしすし━━」

「私のことは?」

「す━━何言わせる気っすか!?」

「チッ……!」


 顔を真っ赤にして「もー、揶揄っちゃダメですよ〜」なんて、藤君は私の背中をポンポンする。

 今の私の気持ちを、馴染み深い言葉で言うなら『遺憾の意』。


 藤君に私が番なのか聞いたあの日から……正直、私たちの関係性は変わった。


 私が意識したからね!

 そう! 私が意識してるの! 意識! してるって! いうのに! ←※重要


 恋人同士になど、なってません。

 夢のまた夢。普通に仲の良い近所のお兄さんと幼女!

 まぁ、私まだガチで幼女ですし? しゃーない所もあるでしょう。

 でも1番の理由は、藤君が良く言えば『鉄壁理性の持ち主』、普通に言うと『恐ろしくヘタレ』だから!


 この男は熟練の女たらし宜しく、こっちが嬉しくなっちゃって期待しちゃう発言は自然に口から飛び出す。

 なのに『好き』みたいな意識して直接的に好意を示す言葉を私に言わない。

 言ったら爆死でもするのかと聞きたいくらい、理性と戦って瞬殺する。

 しかも、


「からかってないもん。私はすきよ」

「カハッ……(吐血)」


 こっちが好意を告げると吐血するってどういう事かな? いや吐血とは限らないんだけど、おかしな反応するの何なん?


「すみません……嬉し過ぎてつい。着物無事っすか?」


 嬉しいのは良いとして、こっちは吐血されるの全く嬉しくない。


「ぶじ」


 口調も、本当は敬語が素じゃ無いのを知っている。慣れてきてくれたのか、最近ちょっと崩れる事あるけど。水沫君達とかほどじゃ無い。

 まぁ、そこはお仕事上の立場があるから割り切る必要があるって分かってるよ。

 ……でもいつか、せめて10年後には、2人っきりの時くらい普通の口調で話せるようにしときたいね。


 あ、水沫君でまたイラっくる事思い出した。そう、私の居ないところでは、藤君てば私の事好き好き言ってるらしいんだよ。

 水沫君とメイシーが言ってた。直接聞けるのマジ羨ましい。

 そんでもって、水沫君に抱っこされたりしたら分かりやすく妬くんだよ。

 水沫君がよくボロボロになって道場から戻ってくる。

 一回水沫君が泣きついてきたから藤君に「めっ!」てしたけど、全く懲りなかった。


 ……いや本当にもう大好きじゃん!! 態度で丸わかりじゃん今更照れるな! 此処ぞって時にヘタれるなよ!!


「メイシーたちに、『ヘタレ』って言われない?」

「い、言われてます。……ムッツリとも」


 聞いてない情報まで出てきたよ。

 藤君ムッツリなんだ。……ほう?


「だいじょーぶ! ムッツリな男の子、私すきよ」

「天使かな?」

「ざんねん。テングです」


 待って! 「尊すぎ!」って急に拝み出さないで、落ちちゃう!






「わ、わわわわわ! いけにうかべてる! かわいい!」


 お庭に出て紫陽花園に入ると、私の顔と同じかちょっと大きいかなってくらいの紫陽花がいっぱい咲いていた。

 土の匂いと水の音が心地良い。


 青、水色、紫。どれも可愛くて、見ていて飽きない。ただピンクの紫陽花もあれば、もっと綺麗だったろうなぁ。

 あ、カタツムリ。ほっこりするね。


 そんな中、私が特に気に入ったのは、池に浮かべられた色とりどりの紫陽花達。

 花房から大体2〜5センチくらい下で切って浮かべるんだって。


「よく見たら底にビー玉敷き詰めてますね」


 池の底が青、赤、黄、七色。

 水面が揺れると空から吸い込んだような光がより一層反射して、独特の美麗な世界観を生み出していた。


「まだスペースあるから、きっとかんせいしてないんだよ」

「成る程、つまり紫陽花が敷き詰められるまではビー玉で景観をカバーしていると……」


 多分だけどね。管理体制完璧だよね。


「あれ?」


 藤君が奥を見て瞬きした。

 私も同じ方を見て「あ」と小さく声を溢す。

 小さな橋の向こう。

 奥の一角、青じゃ無い……たくさんの色の花が浮かんでる。

 気にならない訳が無い。


 ゆっくり進んでみると、黄色と焦茶のふわふわした小さい子達がいた。


 か、鴨の赤ちゃんだ!


 初めて見た。小っちゃい。つぶらな瞳がとってもキュートだ。


 4匹ほど、池の隅にある大きな岩の上で屯している姿があまりにも可愛くて、思わず「はわわ」と口元を抑えてしまう。


「いいか! やろうども!」


 しゃべってる! 声まで可愛い!


「30れんきん当たり前! サンハイ!」

「「「30れんきん当たり前!」」」


 ……今なんか怖い台詞聞こえなかった?

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