4-1 ジィジです
(彩雲視点)
鬼族、龍族、天狗族、狐族、鵺族、人形族。
以上が、常世では六華将と呼ばれる。
300年に一度王位を争い、王座を勝ち取れなかった一族は魔族の侵攻が多い領地の護り手を担う。
下級の妖たちからは敬われる存在だが、戦闘力を鑑みればンな可愛い事言っちゃいらんねェ。衝突すれば被害が大きい。
故に普段王族の蔵で埃を被っている上級結界の巻物をあの鬼っ娘は引っ張り出して来たんだろうが。
ソレは戦う者同士の実力が互角だった場合だ。
……あの狐の若いのと七じゃ、話にならん。
「はぁ〜、人除けの結界だけで十分なのになぁ」
宙に浮かぶ結界内の様子に、目が霞む。
「簪姫は用心深く、身内に甘い。不必要な怪我人を出さない為なら、アレくらいはするさ」
「御前試合には同意してんのにかい? 無茶苦茶だねぇ…………で、お前さん何でこっちに居る?」
今儂の隣で話しかけている存在に気付いている者は、他には居ない。
認識阻害は本来ぬらりひょんの十八番だが、狐で此れを駆使する物好きは1匹だけ。
先代の狐の頭領だ。
銀の髪を持つ20代半ばから後半の人間の見た目だが、頭と尻に狐特有の耳と九本の尾が付いている。このぴこぴこ動く耳か九尾を何度引き千切ろうとした事か。
「ゴミがきっちり掃除されるか、気になってね」
「ゴミ……お前さんの孫にしては妖力が少ないと思っていたが、もしかしなくても……ってとこかい?」
「あぁ、あの嫁が人の子と遊んで出来たんだよ。全く……うちの馬鹿息子は、つい先日までそれに気付かなくてね、本当に困った子だ」
あんなに弱っちぃ頭領の息子が直々に出るってんで、狐連中は頭が沸いたのかと思ったが、……成る程な。
問題ばかり起こす不義の子をサクッと処分するのに利用されたって事だ。
あ、相手の体が結構細かくバラされた。
「え、今時の4歳児ってあんな事出来んの? 怖っ」
「優しく撫でただけじゃねェか。大袈裟だなぁ」
「俺の知ってる『撫でる』と違うな〜」
とか思っていた矢先、七は身体の一部を本来有るべきでは無い場所につけて、キメラを作っていた。
「ねぇ、七チャン逸材過ぎない?」
「人の孫娘気安く呼ぶな」
「良いじゃんかー。ていうか女の子良いなー、うち孫は男の子ばっかだからさー」
ウゼェ……。
狐との確執などトンと興味無い儂が言うのもアレだが、コイツは距離感がバグっている。今だってしなだれ掛かっているし、何なら揺らして来やがる。
「4歳かぁ……アリだな」
不穏な事を宣った口に、ドスを突き立てた儂は悪く無い。




