34-1 空飛ぶ列車は快適です
「えー」
「お前さんアイツの面拝んでからグイグイ行き過ぎじゃね?」
「はじめてみた時は にげようとしたよ」
いやもうアレはね、しょうがない。
目から浄化され過ぎて辺な悲鳴あげちゃったよ。
異様に伸ばされた前髪で隠されていたパーツが全て明らかになると、藤君は堀の深い、ド級のイケメン顔だったのだ。
いや、確かに顔小さいし、唇も綺麗だと思ってたよ? 骨格も白雨君に似てたから平均よりは美人さんが顕になると思ってましたよ?
実際は、似てるけど違うじゃないですか! だ。
前世で数多の女を狂わせた白雨君は、正直カラーの組み合わせもあって綺麗過ぎたから、芸術品って感じだったのだ。だから私は前世でも沼には嵌まらなかったし、今世も目の保養って思うくらいで緊急退避なんかしなかった。
しかし藤君は白雨君ほど芸術品という顔では無かった。
生き物としての温かみがある状態で完成し過ぎている。
長い睫毛に縁取られた瞳が灰色にも薄い水色にも見える所謂アイスブルーという色で、何処の異世界の王子様ですか? 顔面が国宝っていうか、こんなんもう世界遺産じゃん! ってなったよ。
この顔で推し声……言い方は良家の娘としてはよろしく無いが、くっ付いて声聞いてたら耳から孕んじゃうと思い、初めて拝んだ日は全力で逃げようとした。
失敗して無様を晒したけどね!
でもよく考えてみろ。そんなド級のイケメンが私にゾッコン(?)とか言ってんだぜ?
全力で大事にして結婚しちゃるってなるでしょ普通!
「ね!」
「いや、何が『ね!』だよ」
「であいは いしころみたいに ころがってないのよ。獲物みつけたらガンガンいかなきゃ!」
という訳であれ以降、甘えられる時は最大限に甘えさせていただいている所存である。
あんまり慣れられたら、私が年頃になった時に色々仕掛けても効果無くなる可能性があるから、そのうちマンネリ防止で何か考えなきゃね。
……それ以前の問題が、ちょっと発生してるけどな。 ←(遠い目)
「うん、そこはジィジ似て欲しく無かったな〜」
誰に? あ、さっきから話題になってるバァバだね。
本当にバァバの話気になるぞオイ。
「ジィジ、なれそめくらいは、お話きけそ?」
「まぁ……そんくらいならいけるかぁ」
ジィジは何処か遠くを見つめていた。
緩やかに、時々雲を割って進む車窓の外では無く、昼前の柔らかな光の梯子でも無い━━昔の情景だろう。
「━━胡富はなぁ、ある嵐の晩にいきなり転がり込んできたのよ」
「とこよに!?」
バァバは人間だ。
妖に拐われた訳でも無く、人間が常世に来る事は普通は出来ない。
「いやいや、現世だよ。大昔は常世と繋がる道がそこかしこにあったがな、平安の頃に晴明が発狂しながら塞いどった」
ケラケラ笑うジィジ。
せいめい……晴明!? ソレ、安倍晴明さんでは!?
「あの時も楽しかったぞ彼奴はよく『やったー! 18連勤終了だー! 明日は寝るぞー!』とか言ってたが、すぐ次の穴埋めの仕事が入るんだ。そんで『マジふざけんな帝と藤原家【ピピピーピピピピピー】今度こそ退職届叩き付けたらぁ!』つって、よう便秘か腹痛起こすような呪いをかけておった」
何故だろう? 頑張って穴を塞いでる晴明さんに、指差してゲラわらいしてるジィジが容易く想像出来てしまう。




