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25-1 怪獣映画大好きです

(メイシー視点)


 姫様はとんでも無かった。

 まず、四神(玄武)に至る寸前の大精霊に「とべ」と強要した。

 これが朱雀や青龍であればまだ分かる。だが玄武である。漫画やアニメではよく飛んでるが、現実では飛ばない。大精霊も、そして亀の姿を取っているが眷属の妖精も固まった。

 亀は飛ばないという常識を、私達も改めて教えたけれど、


『えいがなら飛ぶ。ジィジとみたから、しってる』


 全く引き下がらなかった。

 バッドタイミングだ。先週の金曜日の夜、怪獣映画で京都駅半壊する話を見たばっかりに……。


 必死に首を振る大精霊に『がんばって。できる』と、言い回しと声が可愛らしくも圧をガン乗せで無茶振りした結果、


 ━━大精霊(カメ)は飛んだ。


「「「何でッ!!」」」


 甲羅の上で、またしても藤先輩達と声が揃う。ぶっちゃけると誠に遺憾だ。

 そんな私達の渾身の叫びなど全く気にせず、姫様は大精霊(巨大亀)の頭に乗り、自身も頭に妖精(小亀)を乗せてカッコ可愛く風を切っていた。

 あ、頭も四肢も引っ込めてない。

 高速スピンするタイプの飛び方じゃ無いみたいで良かった。


「ていうか姫様ぁー!」

「なぁにー?」

「目的地ぃ、分かってるんですかぁー?」

「カメがしってるっていってるー!」


 ……何気にずっとスルーしてたけど、そろそろ聞いた方が良いだろう。


「妖精の言葉ぁ、分かるんですぅー!?」

「にゅあんすー!」


 ニュアンスにしては精密に心情聞き取ってた気がするんだけどなぁ。


「つーか、流されるまま乗っといて何だけど、さっきの女って誰? 君達とどういう関係なの?」


 私達2人は、余りにも信じられない事を聞かれた気がした。


「え? 麦先輩をご存知無い? 鞍馬家のセバス◯ャンと名高い侍女様ですよ?」

「初雷領のデグレ◯ャフとも名高い侍女だよ?」

「知るかよ。俺思いっきり部外者なんだわ。あとそのキャラ執事と軍人だろ」


 …………あ! そうでしたぁ!


「藤先輩が無駄に外付けした喋る部品かと思ってましたけどぉ、今日初めて会った全く他所の生き物でしたねぇ!」


 ウッカリ忘れてましたぁ! テヘ⭐︎ と、自分の頭を小突く。


「なぁ、お前舐められ過ぎじゃね?」

「そうね。この子、僕の事をポンコツなパソコンだとでも思ってたみたい……後で死ぬほど泣かすわ」


 先輩の弟と先輩が話している最中でした。

 姫様から、「3人ともー!」と声をかけられたのは。


 何故だろうか? 可愛い可愛い姫様の声なのに……嫌な予感しかしない。


「なんかー! けっかいはってあるー!」


 前方に視線を向けると、確かに妖力の幕が見えた。暗くなろうとしている世界に、もう一つ空。しかしソレは、上空のものより宇宙の━━星の輝きが顕著だ。


「カメがねー! フツーに入れるっていってるー! スピードー、バイになるからねー!」


 バイ……倍?

 呑気に首を傾げていたら、真後ろに飛ばされそうになった。


「ひぎゃあああああああああ!!」


 そしてそのまま、でっかい赤獅子に大精霊は突っ込んでいきまして……、


「みいいぃぃぃいん!!」

『ああああああ゛あ゛あ゛!!』


 グチャッ ベチャッ ブチブチブチィ!!


 大精霊、赤獅子を喰い始めました……。

 グロい。これもうガ◯ラじゃ無い。どっちかと言えばエヴ◯だと思う。

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