24-2 合流です
(三人称)
━━姫様、もう少し……大きくなる姿を見とうございました。
諦めて目を閉じたその時だった。
「私のフクシンにッ!! なに しんとんじゃクソッタレがああぁぁあああ!!」
巨大な亀に乗った幼女が怒鳴り散らし、その亀が赤獅子を横から吹っ飛ばしていた。
「「は?」」
鎖が砕け散る。
だがソレに気が付くより先に、麦穂と水沫は、思考が停止した。
***
「ふーん、たいへんだったねぇ」
「みぃ、みぃみぃ」
「え、おわってないの?」
「みー! みみみ」
「待って、そこから?」
「みみぅ、みぃー」
「うーん。……よし、じゃあイ草くれるならいいよ」
「「「待ちなさい」」」
巨大亀の言葉を代弁する今まで一緒に居た亀の言葉に了承した瞬間、静かにしていた藤君達が声を揃えた。
「さんにんとも、仲良しになったね」
「違います姫様。今何を承諾したんですか?」
真剣に藤君が聞いてくる。ので、今聞いた色々な事を話してあげた。
この大きな亀は、ほぼ神様になりかけの大精霊らしい。けれども、昔この辺りで暴れていた魔物を倒したら、狛犬の当主(ヤンデレ化の末失恋)に封印されてしまった。
封印した当主と狛犬一族が、一定周期で封印の補強をするせいで出られなかったけれど、最近この湖が枯れて封印が弱まってて、そこに藤君達が封印石(妖の屍製)を半壊。次いで私が全壊して出られたという訳だ。
が、話はそれだけでは終わらない。
「おっきいカメの中でね、イケニエにされた子のタマシイ(?)なんにんか、ほごしてるんだって。でも よわりすぎてて、ハンスウしたら、くうきにふくまれてるヨウマの障気できえちゃうから、ヨウマにトドメさしたいんだって。だから、てつだってって言ってる」
「へー……あの『みぃ』にそこまでの情報量があったんだ……」
白雨君の目の前に代弁亀を持ってくると、多分無意識で人差し指だけ使って頭を撫で始める。
原作通り……! 隠してるけど小動物好きって情報、原作通り! 表情変えずに自然と小さい生き物愛でるイケメン悪役(※まだ違う)、解釈の一致です!!
「てか、妖魔っつった?」
「うん」
後ろで、藤君とメイシーが緊張感を含んだ顔つきになった。
「そこまでヤバい?」
「ヤバいですよぉ! この中で今まで妖魔と戦ったことある人挙手ぅ! ……ほらゼロですぅ!」
いや、私以外3人だけだしな……。ていうか、言い方からするに妖魔って珍しいのかな。漫画では数とか出会う確率の辺り、触れて無かったと思うから気にして無かったけど。
「ふーん」
「いや、七姫様、そんな流暢に相槌打つ内容じゃ無いんですよ? 手伝いなんて━━」
アワアワしてる藤君には悪いけど、ちょっと言葉を遮らせてもらう。
「そこでイシになってたの、コマイヌの当主なんだよね?」
巨大亀の方に確認。
すると、大きな頭でゆっくりと一回頷いた。
「じゃあフツーしんでるよね? でも当主は、いきてる?」
矛盾した事を言うけれど、封印補強している面子を態々『その時の当主と狛犬一族』って言っていたのを、私は流さない。
代弁亀がまた「みぃみぃ」と鳴く。
「ちがう? ……せいしんたいに、なってる……ああ、そっか」
妖魔の成り立ちくらい私も知ってる。答えに辿り着けない訳が無い。
妖魔は、精神体になった狛犬の何代か前の当主だ。
だから私は、少しだけ怒り始めた。
だって、狛犬一族には、今正に私の侍女━━腹心が関わっているのだから。
「あなたはいま、せいしんたいがどこで何してるのか、もしかしてわかってるの?」
巨大亀が、代弁亀とアイコンタクトをとる。
すると一拍開けて、私たちの前に画面から切り取ったような、別の場所の光景が映った。
赤獅子に押さえつけられて、丁度血を吐いている麦穂が居た。
「 こ ろ す 」
後で代弁亀が教えてくれた。
私はこの時、霊力の暴発という物を起こしていて、あの場面を写した巨大亀が『見せるとこ間違えた』と、怯えて後悔していたらしい事を。




