表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/76

24-1 合流です

(三人称)


 水沫の実家、大峰(おおみね)家は元々物への付与術を得意としていた。天狗の中でも、霊力が異様に少ない家系だった為、術式構築に重きを置けたのだ。


 が、水沫はそんな一族の中で、普通の天狗より少し多い霊力量で生まれた。霊力量が多い事を責める者など当然居ない為、一人だけ異質であったが虐げられるような事は無かった。しかし、家族が当たり前に出来る事を自分一人だけが出来ないという悔しさと寂しさが、成長するにつれ募った事は言うまでも無いだろう。

 そんなある時、物質変換と創造の技術━━錬金術を、彼は知った。


 錬金術は付与に似ている。当時の彼はそう思った。実際留学して学んだ所、別物だと発覚した訳だが、錬金術をベースにして、水沫は独自の、本来の付与術の上位互換のような技術を編み出したのである。


 それは、まだ人類では加工出来ない金属の加工。作りたい物と同じ成分の金属では無い、ただの類似物からの製造、複製。

 この世に存在しない物質の創造等。


 それ等による、あらゆる概念を無視した付与。


 無論、無制限にという訳では無いが、トリックスターの役割を果たすには十分だ。


「水沫? どれくらいで貴方の付与した病はこの汚物を殺せます?」


 今回は━━霊的存在にも━━通用する病を付与した次第である。術で操っているなら、必ず細い糸だろうが妖力だろうが、何がしかで繋がっているのだから。

 遠隔で殺れるなら、本体を探す必要は無くなる。後は逃げれば良いだけだ。が、


「20分……肉体をどうにか出来れば、ですけど」


 それが上手く行くのは、どれ程の時間逃げ続ければ良いのか、分かっている時である。


 社 誠志郎は己の肉体を礎に聖霊を封印している。妖である事、また封印維持のために朽ちていようとも肉体は封印場所に残っていると想定される。だがやはり、封印場所は分からない。


 否、湖だろうという事は絵巻物によって2人共分かっているのだが、霧ノ香地区に、絵巻物のような湖が有るなどと記憶していないのだ。


 ━━あるとすれば玄武の森……。けれども、あそこは、妖精達が見張っていて深くまで潜れない。


「あいつ俺等の体も操って来ますよね……またソレされたら、今度は━━」

「いえ、其方はもう心配しなくて宜しい」

「え? 何で━━麦姐さん!!」


 びっしりと呪符が巻き付いているかのように張られた無数の鎖。ソレ等全てが拘束したのは、麦穂の体だけだった。


 ━━俺と姐さんの距離、全然遠く無いのに何で姐さんだけ!?


 対して、水沫がそう思った一瞬のうちに、麦穂は自身の状態を分析し終えていた。


 ━━狛犬の使う元御使(もとみつかい)としての、本来の能力。必殺技では無い。けれども、妖術や神通力でも無い。

 直に見る事により、決して、ある存在を除いて()()()()()()解くことの出来ない拘束の()()……。かつては仕えた主人に一切の敵を寄せつけず、また追い詰められた主人を逃す時間稼ぎに使用された物。


 彼女はため息を一つ溢した。


「学生時代に使われたアレは……まだ序の口だったという事か」


 奇跡は、術の類では無いため『月の兎』の特性が効かない。そもそも、ここ迄の反則レベルになれば術の類でも効かないだろう。その上、鎖は麦穂の妖力を今大量に吸い始めた。妖力が増えれば回復力も上がる。折角弱らせたというのに、意味が無くなった。


 そんな絶望的状況は、一瞬では終わらない。黒い影が麦穂を頭上から覆う。赤獅子だ。痛みが和らぎ動いたのだ。

 病は完全に癒えない故もう手遅れであっても、唯では死なないという、殺意が剥き出しだった。

 確実に、圧し潰して殺す為に、ソレは跳んでいた。


 ━━()()()()()()のおかげで、水沫が無事だった事だけでも良しとしましょうか。嗚呼……でも……。


 麦穂の脳裏を過ぎるのは、小さく愛らしい自分の主の姿。

麦穂の体の特性は、後々更新される軽い設定で書いてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ