21-1 「みぃ!」です
メイシーをウツボカズラから引っこ抜いた直後、私は視線に気が付いた。
何処からかと思えば、苔石に残骸の中から、綺麗な目がこっちを見ている。
何あれ?
近寄ってみると、其れも苔石なのかと思ったが、違う。可愛い顔と少し太い四肢が、丸い苔石━━では無く、甲羅から除いている。
「かめ?」
「姫様ぁ、そんな矮小な爬虫類拾っちゃダメですよぉ」
メイシーは、亀に何か恨みでも有るんだろうか??
「みぃ!」
鳴き声かわよ……。
「さ、行きますよぉ」
「みぃ! み! みみぃ!」
…………。着いて来ている。短い足で、落ちてるちょっと太い枝とか小石とか超えて来てる。可愛い、応援したくなっちゃう。
「みみぃ! みぃみみぃ!」
ううぅ、凄く置いて行きづらい鳴き方してるよぉ。
「メイシー」
「ダメです」
さっきまで語尾が少し伸びる喋り方だったのに、今は普通、しかもガチトーンだ。
「なんで?」
「原生林の、明らかに普通の亀じゃ無い亀ですぅ。雑菌とか病気とか持ってるかもしれないのでダメでぇす」
うぅ、確かに……。甲羅に苔があってお花とか咲いてるけど……。
「さ、行きますよぉ〜」
「みぃぃ」
「カメ、ばいばーい」
メイシーに抱っこされてしまったので、亀とは泣く泣くお別れするしかなかった。
ところで、私達が何処に向かっているかと言えば、藤君と白雨君が居るだろう場所だ。
だって、あっちから苔石が大量にいきなり来たんだよ? 気になってしょうがない。
「正直ィ、あの2人が何か喧嘩とかしてても驚きませんけどねぇ。想定の範囲内ですぅ」
「バシャのなかじゃ、なかよしだったよ?」
どっちもお互いを、別に嫌ってる訳じゃ無さそうだった。……ちょっとだけ微妙なとこはあったか。白雨君がちょっと手を掴もうとしただけだったのに、藤君は急に冷たくなった。でも白雨君はアレに慣れてたのかな? 全然怒ってなかったっていうか……アレは、諦め的な空気だった。
「メイシーは、リュウのいちぞくのこと、くわしい?」
「まさかぁ、あの一族は超絶閉鎖主義ですよぉ。私の知ってる事なんてぇ、お館様が2年くらい前に揉めたって事実くらいです」
凄い身近で事が起きてる! ジィジ何してんの!?
「私が来るよりも前の話ですから、何で揉めたのかまでは分かりかねますねぇ」
「そっか」
2年前……そういえば藤君って2年前から見かけるようになったな。……白雨君のお兄ちゃんって事は、龍の一族の跡取り候補1位な訳だから……あぁ〜、揉めそう。てか揉める。一人っ子ならまだセーフだったと思うけど、白雨君が居るから。当主教育の大事な時期じゃん? なのに家で就職とか、白雨君跡取りにされたら困る方々お怒りだよね。
「でもあの弟……アレ、ヤバいですね」
「……どういうこと?」
「アレは、自分を殺し続けた生き物の目ですよ」
自分の何かを見透かされた訳でも無いのに、メイシーの言葉に冷やりとした。
メイシーは、そんな私には気付いていないようだ。
「親ガチャ失敗は自分のせいじゃ無いのにぃ、意味も分からず心無い言葉に晒されてぇ。大切な物を次々奪われていくぅ……そんな幼少期を過ごして、感覚がイカれつつも完璧を求められる。まぁまぁ出来上がったくっそ気色悪い人形ですわぁ」
確かに漫画で、そんな描写を読んだ。正にメイシーの言う通りだった。




