17-1 道連れです
「うわぁ……」
白雨君がドン引きしている顔で、私と絶賛天に召されっ放しの藤君を見ている。
「そっか、そっちだったかぁ。てっきり俺、横の頭悪そうな夢魔がそうなのかと思ってた。そりゃ暫く戻って来られねーし、寧ろ戻って来たら殺すわ」
「姫様ぁ、やっぱり此奴放り出しましょ♡」
ナチュラルに貶されたメイシーは可哀想だけれど、放り出すような事は言ってないから、やんわり止める。
「メイシー、あたまなでてあげるから、おち━━」
「はいぃ! 落ち着きまぁす♡」
イチゴミルクみたいな色の頭が、撫で易い位置に即座に現れた。早まった気がする。声音が全然落ち着いてない。
「此処、変態動物園?」
国宝級のご尊顔に、白い目で見られるのって辛い。
「……何で俺の事、連れて来たの?」
「あばれたりされたらこまるからよ」
「俺何だと思われてんの?」
……何だと、かぁ━━━━。
何だと思っているのか聞かれたら、『登場シーン大量殺戮機』。
私、漫画より先に創作物から入ったからね。いきなり夜の街を燃やしてて、『悪役じゃん!』て驚いた。
でもその事は言えない。まだやってないもん。
……取り敢えず、彼の問いには無難な返事をしよう。
「見た事ない程のイケメンだった」
「同じような面の奴、そこに居るじゃん」
なん……だと? さっきの既視感そう言う事かー!
「メイシー!」
「御意ッ」
メイシーに取り押さえてもらっている間にあの前髪を上げようという作戦だ。
しかし、そこで藤君は正気に戻りやがった。
「おわあ!! っぶねェ!!」
「こら! バシャのなかであばれちゃダメでしょ!」
「前髪あげる気が無いなら毟り取るのはどうですぅ?」
「姫様の言う事はご尤もですけど! メイシーちゃんは悪意の塊だよねぇ!?」
馬車の後方、下に降りるための階段付近で前髪を死守する藤君。なんて強情な奴だ。
「……ていうか、おなじようなツラってことは……」
白雨君の方を見ると、彼はケロッと、
「俺等、腹違いだけど兄弟。俺が弟で、愛妾の子ね」
「ですよねー」
軽いノリで答えてくれた。
「いやいやいや! 姫様普通に受け入れすぎではぁ!? 何かエッグい事言いましたよ此奴!?」
「しってた」
「さっすが姫様ぁ! でも何で!?」
漫画でその設定知ってたから。とは言えないので、言い返せない回答をする。
「オンナのカン!」 ←どやぁ!
「カスみたいな返答ですが、ドヤ顔が可愛いので納得しまぁす!」
チョロい子を黙らせてから藤君を一瞥し、もう一度私は白雨君に向き直った。
「藤君のカオは、あとでおがむね。良いじょうほう、ありがと」
で?
「私もしつもんがあるの。あなたのようじは なぁに?」
原作開始軸の彼なら、気まぐれで遊びに来た……と言われても信じられる。
でも私は、貴方が まだ壊れていない 事を知っている。
「……答えなきゃダメ?」
ニコリと。やや間を置いて、白雨君は微笑んだ。
強者故の生意気な態度……。これ、漫画だったら何とも思わなかったけど、現実でされるとカチンと来るね。




