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16-2 推しの一人です

 ビ……ックリしたぁ。

 ちょっとお饅頭買いに行っただけで原作キャラが居るんだもん。


 洞爺 白雨(とうや はくう)君。


 正直、テンション爆上がりである。

 何たって彼は、『碧天は今日も』の推しキャラTOP3の1人だから!


 この世界に来た時は3次元のイケメンってよく分かんなかったけど、流石に4年も経てば分かる。何より白雨君は、2次元の時でもエグかった。


 睫毛なっが……顔ちっさ! なのに骨格はちゃんと男の子! そこに色素も総合すると、『「美!」と言うのがやっとになる呼吸困難者が続出』という都市伝説を生んだキャラだ。そんなだから、某創作サイトでもイラストの量が半端なかったなぁ。補足するが、勿論彼の人気は複雑な生い立ちとか性格とかも有ったよ。


 ……でも実物見てみたら、顔のサイズ感と体格……身近な誰かとそんなに変わんないかも?? 誰だっけ? ま、いいや。


 そんな彼がどうしてか藤君とメイシーに絡んでいたので、原作知識で『水が苦手』だという事を知っていた私は、遠慮なく神通力で水溜まりを作った訳である。加減が難しかったけど、洪水なんかにしちゃったら後が大変だからね。


 そして水から一番遠くて逃げて来易い建物で待ち伏せしていたら、ドンピシャで跳んで来た。後は首の後ろをトンをさせて貰った次第だ。楽ちんだった。……ので、


「姫様、やっぱりソレ置いて行きません?」

「飼う気ですかぁ? そんなの飼ったら馬鹿になりますよぉ。捨てましょう?」


 藤君が困った雰囲気だし、メイシーがとても酷い事を言っているけれど、私は今気絶中の彼も連れて、乗合馬車に乗っているところだった。


 馬車と言っても、引くのは馬では無い。調教に成功した熊に似た常世の獣だ。温厚な種で、六足大熊(むつあしおおぐま)という名前通り足が6本ある熊が、二階建てのバスのような馬車を引いている。

 今回、この馬車の乗客は私達以外に1組の老夫婦だけだった。お年寄りは階段を上がるのが辛い為下の階を利用していて、私達は2階を悠々と使わせてもらえた。

 だから2人の呼び方も『お嬢様』から『姫様』に戻ってる。


「おいてったばしょで、あばれられたりしたら嫌でしょう?」

「癇癪持ちのモンスターでも想定してますぅ?」


 漫画では代表的な敵キャラなんだよねぇ、この子。足引っ掛けられた程度でどっかの町を壊滅させてたのよ。とは言えないので、話を逸らす事にした。


「藤君、手ぇだいじょうぶ?」

「あ、ええ……今は━━って姫様?」


 藤くんの隣に座って、黒ずんでいる手をとって見つめる。おぉ、指フェチの心をくすぐる良い手をお持ちだね。ソレはさて置き……、成る程、藤君って呪い持ちだったのか。


「これ、フクのしたジワジワ黒くなってくヤツ?」

「……いいえ、広がって行く呪いじゃありません。黒くなる範囲は決まっていて、普段は何とも無いんですけれど……少し、昔の事を思い出すと……」


 色が出てくるのね。了解。

 にしても、白雨君と関係ある呪い持ち……心当たりがちょっとだけ有る。藤君て、設定だけ出て来たキャラかも。もしそうだった場合、家で働いてる理由がイミフ過ぎるから、確証は無いけれど。


「ごめんね、ヤなことするかも」

「え?」


 藤君の手を両手で自分の額に持って行く。家にはお抱えの解呪班が居る。にも関わらず、こんな呪いを放置してるって事は、専門家達にもどうしようもない呪いなんだろう。そんな物、私ではとても解呪出来ない。でも気休めに、進行を遅らせたり、少し戻す事は可能だ。

 何処ぞのボケクソ親父が、一時期やけに呪って来た時期があったので、ソレを敢えて解呪せず呪詛返し(目には目を歯には歯を)してたら、いつの間にか霊力に免疫が出来てたんだよね。前回、呪いの発覚が家の中じゃ無かったら、簪にも使ってた。

 ただ、霊力流すのに直接触れる必要があるんだよね。

 ん……こんな感じかなぁ?


「うん、もどったね。……へ?」


 色を確認した直後に藤君の顔を見上げると、すんごい穏やかな顔……だが、召されていた。


「藤君!?」

「あれ……? 此処は……」


 代わりに白雨君が目を覚ました。

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