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15-2 畳についてです

「本気ですか?」

「超ほんき」

「……そうですか。うちの店でも其れは対応可能です。……しかし、一つ問題があります」

「なに?」

「イ草を狩るためには『狩人』、『請負人』、日本の常世にはほぼ居ませんが『冒険者』のいずれかの資格が必要なんですよ」


 あー、ですよねー。そういうのってやっぱり何処かが管理してる物だよね。

 漫画にも出てきたわー、冒険者と請負人。


「ざんねん……ん? メイシー?」


 指でトントンと肩を叩かれたので見上げると、メイシーが幾何学模様と名前、二つ名等の書かれた青いカードを物凄いドヤ顔で見せてきた。

 そ……そのカードはまさか、ファンタジー世界で割とお馴染みのアレでは!?


「冒険者ライセンス持ってないと、うちの地元国外に行けないんですよぉ!」


 成る程、パスポートなんだね!


「メイシー良い子! てんさい! かわいい!」

「お嬢様に褒められちゃったぁ! ……あ、藤先輩は褒めてくれなくて良いですぅ。全く嬉しく無いんで」

「お前後で道場な」


 校舎裏も屋上も無いので、家の使用人達が喧嘩する時は、訓練施設に同情を使うのがお約束だ。

 道場行く元気、残ってると良いね。


 だって今から、霧ノ香地区でイ草狩りするから。




 ***


(メイシー視点)



「姫様、遠出結構慣れてるんですねぇ」

「お館様が何かと連れ回してるからね」


 乗合馬車の出発時間まで、まだ余裕がある。その間、待合の椅子で不本意ながら藤先輩と並んで座る事になった。


 本当は姫様とお喋りしたかった。

 でもね、お小遣いの入ったお気に入りのガマ口財布を持って、「おまんじゅう、2人のぶんも かってくるね!」なんて……ニッコニコで買いに行くの止められない。善意と可愛さで泣いちゃう。


 すぐそこの饅頭屋は『安い・美味い・大きい』が売りの名店だ。並んではいるが、客を捌くのが美味いので10分くらいで戻って来るだろう。


 護衛しなくて良いのって? 目に見える範囲なら移動一瞬だし、そもそも姫様自体がラスボス級だからノープロブレム。


「ところで先輩」

「何?」

「先輩って姫様といる時は口調真面目ですよねぇ?」

「お姫様にタメ口は拙いっしょ」


「真剣ならぁ、猫被るのは逆効果でぇす」


 前髪で隠れている先輩の視線と自分の視線がぶつかるのを感じた。


「……ふっ、まだまだ僕の事を分かって無いな、メイシーちゃん」


 なんか格好つけ始めたよ? 何宣う気なの?


「いや、分かりたく無いですぅ」


 取り敢えず先手を打った。が、


「ようやく最近喋れるようになったとこよ!? 普通に喋るとか難易度ハード過ぎだから!」

「だから分かりたく無ェって━━いや本当に知りたくなかった! 唯のヘタレか!」


 碌でも無い事聞かされた。しかも藤先輩、キレ気味に言ったと思ったら頭抱え始めちゃったし。


「正直姫様が20過ぎるまでにどうにか出来たら良いかなって思ってたんだよぉ。でも姫様が才媛過ぎて他が姫様放って置いてくんないぃぃ!」


 ……ん?


「……先輩、ロリコンだから姫様が好きなんじゃ無いんですかぁ?」

「勘違い止めてよ。僕は七姫様が良いの。ロリはどうでも良いの」

「姫様にそこまで……一体どんな理由でぇ?」

「無い」


 予想外の即答が聞こえた気がする。

 幻聴かな??


「え、あのぉ、今何と?」

「いや、だから理由は無いんだよ」


 意味が分かんない……ぞ?


「ッ!」


 私は思わず立ち上がった。

 今、何かが背筋を走った。

 よく知ってる物なのに、知らない感覚に思えてしまった。


 何で? だって今のは、ただの視線の筈なのに。


「魅了を使いこなす種は、勘が良いね」


 背後から、肩に手を置かれて、知らない男に耳元でそう囁かれた。

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