13-2 侍女です
なんだ……残念。
羅刹ちゃん━━正式名称は『紺煌羅刹』。
鬼族の家宝で、指輪と大鎌、大太刀にも形状変化する凄く綺麗な金棒だ。紺色に光る長い金属バットに、星屑みたいに光る粒が浮いてリボンみたいに巻きついている。
普段は簪が指輪にして持ち歩いているんだけれど、戦う時よく大鎌にして使っているのだ。そう、あの穴熊擬きと戦った時に使ってた大鎌がこれだ。
私は自分専用の武器を未だ持っていないから、とても羨ましい。
「お主の侍女に手紙が来ておったのじゃ。何故か妾宛ての分に混じっておっての」
「わかった。わたしとくね……らせつちゃん━━」
「駄目じゃ」
バッサリ切られましたー。
しょんぼりー。
簪と小鞠さんが廊下の角を曲がって見えなくなると、私は早速麦穂を探しに行く事にした。
麦穂、皆に頼りにされがちだから簡単に見つかるかな?
聞き込み1人目、洗濯係の麦穂の同期。眼鏡美人さん。
「麦穂ですか? さっきお醤油詰め替えながら庭師の権三爺様のどら焼き空中キャッチして伝書鳩飛ばしてましたよ」
どういう状況?
聞き込み8人目、お風呂係のおばちゃま。ベテランの美魔女。
「麦穂ちゃんかい? さっきスッポン捌くのと同時進行で、風呂桶でダルマ落とし大会した馬鹿共締め上げてからケーキ焼いてたよ」
何でスッポン料理じゃ無くてケーキ作ってんの?
聞き込み13人目、何故か私を見る時だけ目にハートが浮かぶ後輩女子。この邸では珍しいメイドさん。
「先輩ですかぁ? さっき休憩室で一位のお馬さん全部当てつつ、厨房から逃げて来たチーズ泥棒のハムスター軍団を手懐けて、お館様にオカメインコ隊と猫隊に次ぐ諜報部隊としてどうか提案しに行きましたよぉ」
家、そんなにオカメインコと猫が居たの!? 知らないんですけど? 居るなら愛でたい!
聞き込み最後、ジィジ。
「ジィジ、インコちゃんとネコちゃんどこ?」
「麦穂の居場所知りたかったんじゃ無ぇのかい??」
「インコちゃんとネコちゃん」
「すまんなぁ。アイツ等は現世の別荘本拠地にしてるから、此処には滅多に来ねェのよ」
私、今ならしおしお萎びた野菜の気持ちがよく分かる。
「じゃぁ、麦穂のばしょでいいや」
「お前さんの様子見に居間に戻った筈だぞ」
待っときゃ良かった。
ジィジの部屋から出て居間に戻ると、麦穂が急須と茶杯を片付けている姿が見えた。
「麦穂」
名前を呼ぶと、すぐに麦穂は振り返る。
「姫様、途中で聞きましたよ。私をお探しだったんですね」
「うん。麦穂のにちじょー、おどろきにあふれすぎだね」
「今日は優しめでしたよ」
初っ端から大分ぶっ飛んでたと思うんだけどなぁ。
「あのね、麦穂におてがみきてるよ」
「え? このご時世にまた……古風な事する人がいますね」
差出人は水沫君だ。
今、ジィジがどこかの家に派遣させてるんだっけ。
水沫君は天狗だけれど、雄天狗では珍しい黒髪だから、大体のところに潜入出来る。雌天狗は黒も茶も珍しく無いが、雄天狗は、ほぼ髪色が派手なのだ。
鳥って雄の方が綺麗な色してるもんね。
「……成る程、塵ですね」
「なにかいてたの?」
「特に変わった事は書いておりません」
見える様にしてくれた手紙を覗く。
『 助 ケ テ 』
わーお、鬼気迫る血文字のSOSじゃないですか。
「放置です」
「だいじょうぶなの?? せんにゅう、しっぱいじゃない?」
「ただの雑務です。鞍馬家に仕えたる者、雑務の手伝いでくたばるならばソレまでです」
家ってブラック企業?
ドドドドドドドドドド!!
「なんの音?」
「愚か者2号が来ましたね」
徐に軽い準備運動をした麦穂は、金髪が微かに障子の陰から見えた瞬間に跳んだ。
「麦姐さん! 先輩が━━」
「廊下は走んなっつってんだろがッ!!」
ギャアーッ……と、推し声優(仮)のレアな悲鳴……有難うございます。
数分後、麦穂に首根っこを掴まれ、引き摺られて来たのは藤紫さんだった。知ってた。
「それで? 愚か者1号が何ですって?」
面倒臭そうに聞く麦穂。
……麦穂にヒデェ呼び方されてる2人は、普段一体何してるんだろう?
「先輩がまたお婿にされそうなの!!」
「解散ッ!!」
「集合!! 聞いて!!」
藤紫さんの印象が、どんどん面白ェ男になっていくなぁ。




