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13-1 侍女です

しばらく、麦穂・水沫・藤紫と新キャラちゃん等のターン!

 青いガラス瓶の中、炭酸の波と一緒にカラコロと動くラムネ瓶のビー玉って大好きだ。


「姫様、3本目なので終了です」

「あっ! しゅわしゅわー!」


 じわりと汗をかいていたラムネ瓶を麦穂に没収される今日この頃。


「駄目です。歯が悪くなりますよ。喉が渇いているのならお茶をどうぞ」


 あぁ、私の癒しが……。ラムネ瓶が、急須と茶杯に変わる……あ、お茶冷たい。

 これはこれで良いかぁ。と、居間の大きなテーブルに突っ伏していれば「暑い〜」という私以外の幼女の声が聞こえてきた。


「ただいまじゃ〜」

「おかえり簪」


 頬をほんのり赤くして帰ってきたのは柊恩寺 簪。

 あの山一個消えた事件から早一ヶ月。簪は暫く家で暮らす事になった。


 簪を殺そうとしていたのは、単純な半妖反対派閥じゃ無く、王族に半妖が居る事を許さない頭の固い分家の老害達が殆どだ。簪のお父さんは頑張って簪が半妖である事を隠そうとしていたみたいだけれど、壁に耳有り障子にメアリー(目有り)。完全に隠し通す事なんて出来てなくて、元々知ってる人が多かった。朧もそういう連中が送り込んだんだしね。あ、あとお隣の虎の一族とは婚約解消になったって。

 王城の会議でその首謀者達は居なくなった(※意味深)し、グルになってた身内も捕まったみたいだし、虎の一族は婚約解消と同時に殲滅されたみたいだけれど、まだ安全とは言い切れない。

 それに例え安全だったとしても、今は簪が本当に辺境で療養していると思わせておく必要がある。

 実しやかに流れてしまった簪の半妖説が完全に忘れられた頃戻る予定だ。

 それまでは……うん、


「はぁ〜、魔物退治がこんなに丁度良いストレス発散になるとは……兄様達にも教えたいの〜」


 ウチの領地に貢献してもらおう、という事になった。この子、普通に強いからな……何なん? 漫画の情報ガセやん。この半妖鬼娘、魔物ばかすか狩るんですけど。本人は『同胞()殺しは抵抗あるが、魔物はゴキと同じじゃろ?』って言ってるけど絶対違うよ。因みに御前試合の時、母親狐に殺気向けられてビビってたけれど、あの後王族がその辺の女にビビってはいけないと特訓して慣れたらしい。どんな特訓かは、怖いので聞けていない。


「そうだ……小鞠(こまり)さんがさがしてたよ」


 もう一杯の茶杯に冷たいお茶を注いで渡す。

 小鞠さんは、王城からやって来た簪の新しい侍女だ。

 渡されたお茶をすぐ飲み始めた簪だったけれど、私がそれを伝えた瞬間、固まった。

 この反応には見覚えがある。


「…………妾ちょっとトイレ━━」


 パンパン、と手を叩いた。すると、私の背後の障子の一つがスッと開く。

 現れたのは、常に笑顔の白髪美女。左の額から頬へと、雪の結晶が降っているような銀の特殊な刺青を見た時は、目を疑った。綺麗だけど使用人として良いの!? って。けれどアレは、彼女が雪女である証らしい。今まで簪の使用人は皆分家の鬼だったけれど、分家の人の数が減った為、鬼では無い彼女が雇われたのだ。


「七姫様、ご協力有難うございます」

「このくらい、いつでもするよ」

「七酷いのじゃ! あ、小鞠抱えるな!」


 小鞠さんに抱えられて、簪は部屋から連行されていく。何処にって? 簪の寝室兼書斎だ。

 ガチのお姫様は、もう公務を始めているらしい。……が、こうやって逃げ出そうとして、それを小鞠さんが抱え上げて阻止したという事は、この子、多分3日くらいサボったな。


「簪、がんば!」

「頑張るけど、けど! ちょっと小鞠待ってくれ! 七に渡す物があるのじゃ!」

「! らせつちゃん、くれるの!?」

「ンな訳あるか!」

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