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10-2 綺麗な角です

 護衛━━朧の目が光を失い、口から血以外の物が出てきた。


 何だこれ? 割れたビー玉?? 妖力でも霊力でも無い……気持ち悪い気が微かに出てる。


「わっ!?」

「出るぞ!!」


 簪に抱えられて、10分はかかる道をほんの数秒で出た。同時に地響きが聞こえて……待ってコレヤバいんじゃ無い? 雪崩とか起きるんじゃ━━━━。




 殴られたみたいに鼻の奥がツンとして、気付いた時には、両耳の鼓膜が破れていた。

 簪がクッションになってくれた様だけれど、何処かに吹っ飛ばされたらしい。

 身体中が痛い。

 現在進行形で元に戻っていってるけれど……何が起きたのか本当に理解出来なくて……駄目だ、駄目だ駄目だ。

 心臓がバクバクいってる。混乱しまくってる。


「七! 七ッ、しっかりしろ!」

「……ひゅぁッ!?」

「息をしろ! ゆっくりで良い」


 言われた通り息を吸って吐き出す。

 少しずつ落ち着いてきて、周囲の景色が見えてきた。

 知ってる所……初雷の外じゃ無い。

 屋敷からとても離れた場所。とは言っても、領民達が暮らす方角とは逆にある開けた草原地帯だ。


「すー、はぁ……ぁ、なにが、おきたの?」

「……」


 簪がなんとも言い難い表情で後ろを向く。

 何も、無い? いや……家はある。

 有事の際に発動する結界が、ちゃんと仕事したんだろう。けど……、


「山だけ……なくなった?」


 爆発したわけでも、崩れたわけでも無く……綺麗に、水晶部屋のあった山が消えているのだ。

 待って、あそこには麦穂が居た筈……。


「大丈夫じゃ」

「え?」

「扉を開けた時、麦穂の姿を確かに見た。ほぼ同じ場所に居た妾達が飛ばされているという事は、麦穂も何処かに飛ばされておる。怪我はしとるじゃろうが、妾達の様に治る」


 脳裏を過った最悪の想像。けれども、杞憂に終わりそうだと分かって、少し息が楽になった。


「……あれ、なんだったの?」

「妾も書物で読んだだけじゃが……恐らく殺生石じゃ。……というかお前さん、千里眼使えるのに、彼奴が持ってる事に気付かんかったのか?」

「せんりがん、つかえないよ?」

「は?」


 うん、ごめん。そりゃ目がお皿になる案件だよね。

 試したんだよ。使いたかったんだよ。でもアレ、すんごい情報量入ってきて冗談じゃ無く脳が焼け焦げそうになったから、無理って判断したの。


「お主『見た』とか言うとったよな?」

「みたよ。なんとか動機と、すてゴマなりにはあくしてるナカマだけ」


 死なない様に欲しい情報だけどうにか見ようとして、縦向きと横向きに規則性無く流れてくるコメント機能みたいな文字に、脳も目もバグりそうだった。その状況で、それだけ見れた私を褒めてほしい。


「な、なかなか使い熟すのが難しいのじゃな」

「うん、がんばった。……ところで、セッショウセキって、たまものまえが封印されてるんじゃないの? ほんとうは小型ばくだんな的なものなの?」


 殺生石については、前世のちょっとした伝説程度の知識しかない。

 漫画では登場しなかったアイテムだ。


「封印? 何処でそんな出鱈目聞いたんじゃ。玉藻様は20年くらい前までピンピンしとったらしいぞ」


 この世界って、そうなんだー。


「玉藻様は製作者じゃ」


 あ、掠ってはいるのね。


「殺生石は、大陸側で玉藻様が皇后やってた時代から集めた人々の恨みつらみ、その他諸々の負の感情を圧縮して呪術で煮詰めた数珠状の呪具じゃ」


 要らねぇモン作りやがって……。


「何を考えて作ったのかは分からんが、使用者に厄災をもたらしつつも必ず願いを叶えるという強力な効果があってな」


 いやソレ『猿の手』……。

 何か違うアイテムと混同している気がするので口を開きかけたが、簪の表情が少ししょんぼり気味だったため、言葉が出なくなった。


「妾……朧に最後、認められたと思ったんじゃがな。此処まで大規模に殺しにかかってくるとはの」


 あ、いやそれは━━


「グゥオオオオオオオオ━━━━!!」


 ━━来ちゃったわ。

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