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8-1 夜更かしと翌朝です

━━裏切り者の護衛が、麦穂達に捕まる数十分前。


 変だと思ってたんだよね。

 此処に来てから、道中命をかけて自分を守ってくれた護衛じゃ無くて、私にくっ付いてた事。

 護衛の前じゃ全然話さなかった事。

 護衛が、こっちが聞いた訳でも無いのに、隠せた筈の半妖云々の情報ペラペラ漏らした事。

 姫君の護衛も侍女も、強さ、冷静さ、どれをとっても指折りの鬼ばかりなのに、予想だにしない襲撃にあったとはいえ、たった1人しか生き残らなかった事。


 この護衛は裏切り者だ。

 ただ、どうして簪がその事を言わないのか分からなかった。

 だからジィジは、私と一緒に居させる事にしたんだ。率直に伝えられない理由があるのなら、子供同士の会話の中から大人達が情報を得て、どうにか出来るように。

 しかし私達は、もっとシンプルな方法を選んだ。


『舌に呪を彫られた』

『え? 舌? 何それ怖』


 話せないなら筆談、しかし現在はタブレットという物が存在する。お菓子をとる時、一緒に机の上のタブレットを取って、メッセージアプリのトーク画面を開いた。

 メモ機能を使わないのって? こっちだったらトークしてる相手もすぐ見れる。今は麦穂がきっちり見ている筈だ。既読が付いてるから。


「何じゃお主、知らんのか?」


 バリィッ!!


 敢えて大きな音で掻き消した。どうやらこの部屋の声は、護衛の男に筒抜けらしいのだ。

 だ・か・ら、こうやってタプタプしてんのにこのスカタン姫!


『すまぬ』


 言わんとしている事を、お分かりいただけたようで何よりだ。


『気をつけてね。それより、舌大丈夫? 痛くないの?』

『大丈夫だ。舌は痛まん。呪いを直に注入されているから、明日あたり死ぬほど腹を下すだろうがな』


「だいじょうぶじゃ無い!!」


 ベリッ!! ガッ!!


 勢いよくアン●ンマンチョコを口に突っ込まれた。


『不自然な発言禁止じゃ!』

『ごめん』


 チョコおいしい。


『青柳領に入る前食ったもんに、何か入っとったみたいでな。分析が出来たし解呪しようとしたが、被呪者本人では出来ない仕様にされとる』


 簪がベロをを見せてくる。紫色で、何か小さな模様が書いてあった。


『その時点ならまだ侍女さん達生きてたでしょう? 誰もソレ気付かなかったの?』

『誰が裏切り者か分からんかったし……それに嫌な仕掛けがしてあるんじゃ』


 仕掛け? と、首を傾げていれば、既読が付いて『どう言った物ですか?』という問いが書かれていた。麦穂、入力早いね。


『一つは、呪いや裏切り者について知らせようとすれば喋れなくするもんじゃ。タブレットじゃから言えるが、筆談だったら実はこの事も書けなんだ』


 筆談にも制限してあったんだ。

 そうだよね、口使えないなら文字使うって、なるよね普通。


『もう一つは、妾達()が元来制御し辛い『怒り』の増幅作用じゃ』

『鬼ってそんなに切れやすいの?』

『違うわい!』


 あ、麦穂が打ち込んだ。何々?


『比較的温厚な種ですね。ただ一度切れると大抵死人が出ます。陛下のお父様の話が有名ですね。花や野菜を育てるのがお好きで、動物とお話まで出来る穏やかな方だったらしいですが、大陸側の常世の国一つ滅ぼしてます』


 麦穂のこれ音声入力かな?

 てか簪のお祖父ちゃん、白雪姫の皮被って国落とししたのか……すっげ。


『うむ、妾もお祖父様の武勇伝は好きじゃ。特に、彩雲殿と一緒にピンチに陥ったお祖母様を助けに行った話が面白いぞ』


 何それ凄い気になる。気になる……けど! 今度聞こう。

 脱線したけれど、つまり鬼という生き物は『普段おとなしい子ほど切れるとヤベェ』のお手本なのね。


『この作用のせいで、本人を前に少しでも口を開こうもんなら彼奴への怒りが抑えられんでの……結果、喋れない事項に含まれる言葉ばかり羅列しようとしてしもうて……爆死しかけるんじゃ』


 自分の毒にあたるマムシか。……否それより爆死って言った?


『爆死?』

『あぁ。妾と彼奴では妾の方が強い。身体中の血管ブチ切る覚悟でゴリ押しすれば案外いける』


 ……あんがいいける。


『じゃが喋った瞬間にこの辺更地になる』


 ……さらちになる。


『妾、半妖じゃが妖力はアホほど多いからな』


 ……アホほど……。


『麦穂、解呪班の手配ナウ』

『手配済みです。爆発物処理班も向かわせました』


 この後、3分で解呪出来ました。

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