72-1 ハーレム野郎に分からせます(※全年齢)
(三人称)
狂った女は、もう止まれなくなった。
見つけたのだ。見つけたのだ。
娘を生き返らせる方法を。
そしてもう、決して奪われない為の手段を。
「アッヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ! ねェ頂戴? 貴女にもし娘が生まれたのなら、私にその子を頂戴!」
狂った女の前には凛と美しく、儚げながらも芯の強い瞳を持つ女が立っていた。
美しい女は言い放った。
「━━愚か者。恥を知れ」
そうして狂った女の背後に、ソレは一瞬で降り立って、意識を刈り取った。
水沫とシモンの確執について。
一体いつからなのか、正確には水沫も知らない。
元々水沫は、シモンの事を口の悪い男だと思っていたが、気付けば険悪になっていたと記憶している。
だが、シモンにとっては違った。
自覚した当初は此処まで険悪になる気は無かったのだが、水沫の態度やその周囲を見ていると、口を出さずにはいられなかった。
そして元々気性が荒い為、口が出たら自然と手足も出て今に至る。
役所の屋上で、マウントを取られて淡々と拳を振り下ろされるシモン。
対して、冷たい表情で拳を振り下ろす水沫。
「ンで、コレがうちのお館様達に暴言吐いた分な」
10発目の拳で水沫がそう告げる。
━━いや、その分まだだったのかよ。じゃあ9発分は何だったんだよ……。
内心でそんな非難混じりの疑問を浮かべられるシモンには、幸いにもまだ余裕があるらしい。
「学生時代に食堂Aランチのラスト取られた分とか、一人暮らしする後輩女子に、防犯用でパンツ寄越せって追われてた時見捨てた仕返し」
下らないような、そうで無いような複雑な理由だった。
「つまり俺が今も根に持ってるトップ9の事案と試験会場前での件な」
「小せェ奴……」
口の中が切れている為小声だが、しっかり言い切ったシモンの上から水沫は退いた。
「お前さ、そろそろ俺に突っかかってくる明確な理由言えよ。生理的に無理になったのって、多分途中からだろ?」
留学して来た当初は、さほど絡みはしないものの嫌悪感は抱かれていなかった。
昨日や今日、過去を思い返した水沫は、そう思っている。
━━いや御免なさい嘘です。姫様の助言(?)です。
1時間前の事。
「シモンさんは、絶対つんでれ!」
「姫様何言ってんの??」
「こうみえて、水沫君よりはレンアイじょーずの私の目にくるいはないぜ」
「5歳児がドヤ顔で何言ってんの??」
普通猫に成り果てているシュシュを膝の上で撫でる七夜月の言葉に、頬杖をつきながら水沫は返していた。
「私はシュシュさんの こうい に気付かなかったコが なに いってんの? って いいたいよ」
「いやシュシュのは……」
「にゃーん」
訳:私、水沫さんガチでラブでしたが、昨日ライクに落ちて止まりました。
「そうだったの!?」
「はんせーして。そしてエリをただして話をきけ」
「アッ、ハイ……申し訳ありません」
腰に手を当てて仁王立ちする幼女の前で、綺麗な正座で座っているが、表情は情けない青年の図が完成した。
「ほぼ確定してることをいうね。水沫ハーレムのなかに、シモンさんのイチューのあいてがいます」
「マジか」
「うん。そして水沫君は、そのコを全くそういうタイショウとしてみてない」
その言葉に、水沫は首を傾げた。




