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71-2 不意打は正義です

(水沫視点)


 なんか、姫様が鬼畜な事をした気がする。

 今何処で何してるのか、ちゃんと目視で確認出来ては無いけれど。


 だって今滅茶苦茶忙しいからな! 弾幕避けなきゃいけないから!


 何で銃使うんだよ! 『殺す』のは意気込みの話であって、ガチじゃ無ェって━━


「どこぞのマッドが言ってたの聞いてなかったのかこの馬鹿シモン!!」

「五月蝿ェ卑怯者! さっきから蝿みたいに飛び回りやがって、それでも男か!」

「男ですゥ! 性別関係ありませーん! 翼がある種族で御免あそばせバーカ!」


 弾が耳を掠った。

 何発弾が入ってるのか……いや、そもそも普通の球じゃ無いだろう。そこを考える事など見当違いな短機関銃。

 ソレを両手で構えて……と、言っては語弊が少しある。


 翼を持たないシモンの周りを、二丁あるソレ等は意思を持っているかのように飛び回り、シモン自身は鞭を持って、器用に弾幕と一緒に打撃を与えようとして来やがった。

 クソがッ。俺は男との過激SMなんざ微塵も興味無ェんだわ。

 けど……、この馬鹿が俺狙ってノコノコ一直線に来たのは好都合だ!

 ド腐れマッドに煽られて、アイツの方に行くのを優先するかという心配があったから。


 俺は『賢者』なんて全く目指して無いが、関係無いお館様に舐めた口聞いた此奴の根性矯正したくて今日来たんだからな。

 ただ……今回の試験て、本来はテスターが錬金術師の作った物で競うのであって、錬金術師の当人同士が自分の錬成したモンで殴り合うんじゃ無い。


 だから俺が狙われる試験内容とか、こうして直接俺がその辺のレンガから足止め用の壁を錬成したり、幾つかの錬成薬と錬成した武器を合わせて、弾幕切ったり、溶かしたりしてる現状は、可笑しいんだよなぁ!


「━━ッラァ!!」


 無数の球の中、若干色の違う弾が混じっていた事には気付いていた。

 気付いていたが、警戒を怠っていたのが完全なミス。

 気付いたのは、シモンがその球を鞭で粉砕した瞬間だ。


 静電気なんてレベルじゃ無い。明らかな紫電が一瞬走り、球が前方、つまり俺の方へ飛ぶよう、砕け散った。


 思わず舌打ちして風を起こす。

 風を操るのは俺達(天狗)の十八番だが、正直俺はこれが余り得意じゃ無い。


 今は火事場の馬鹿力で成功させたけどな。ガチで死ぬとこだったから!

 もうこれ破片手榴弾じゃ無ェか。


 しかも風で軌道を反らせたはずなのに、追尾してくる!?


「面倒臭ぇな!」


 そんなふうに言ってる内に、脇腹と肩を幾つか破片が貫通した。

 ……ッ!!


 熱と、目の前が一瞬白一色で遮られた不快な感覚。

 呑まれるかと思った。けれども奥歯を噛み締めて……、耐え切る!


「あ゛ァー!! 糞ウゼェッ!」


 貫通した部分に霊力を集中させる為、翼を仕舞う。

 自由落下する体目掛けて、まだそこらじゅうを飛んでいた破片━━鋼片が向かって来たのは、言わずもがな。


 だが、━━ソレで良い!

 シモン、お前はイイ奴だよ。

 しつこい仕様になんざしなきゃ、もう少し俺をコケに出来たんだぜ?


 向かって来た破片が体を貫く寸前に、出したのは扇。

 姫様に強請られて作った物の一つ。

 姫様じゃ無くて俺が持つのかよ、と今朝複雑な気持ちになったが「水沫君、なんでもそのバでつくれるからって、丸腰はダメなのよ!」と、グイグイ押し付けられた奴だ。


 閉じたまま、最後は広げて。

 破片を一つ残らず受け止めると、俺はさっき、『ウゼェ』と文句を言いつつも読み込んで理解したコマンドを書き換えた。


 追尾はそのまま。

 ただ対象を変える。

 流動性にはさっき出た俺の血を。

 けれども鋼片はそのまま活かす。


「あ?」


 シモンの怪訝な顔が一瞬見えたが、こっちは慣れねぇモンを、この土壇場での初使用だ。そんなマジマジ観察してはいられない。


 ━━ヒゥンッ!


 蝶が舞い、蜂が刺すように、足を捕らえる。


「しまっ! 足が……ッ」


 破片を元に、その場で作った追尾型のワイヤーは、シモンに気付かれるよりも前に、容易く跳んでいた奴を目の前に引き摺り落とした。


 俺たちの現在地は、役所の上。

 この建物、側面や内装はベネチアの総督邸みたいなデザインだが、屋上は普通にビルの屋上状態だ。

 どこもかしこも丸いか尖ってるか、ゴテゴテしてる此処らの建物の中じゃ、一番立ちやすい。


 そして俺は、クレーター作って仰向けに倒れているシモンを見下ろした。


「良い格好になったなぁ……糞野郎」


 シモンは咳と一緒に血を少量吐いていた。

 心は微塵も傷まない。


「んじゃ、とりま━━━━10発は殴らせてもらうぜ?」


 指の関節をバキバキ鳴らす。


「100発行きたいけど大サービスだ。喜べ」


 俺の口角は、此処数日で一番上がっている。


 何故ならこの為に、受ける気なんてまるで無かった二次試験を受けに来たのだから。

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