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70-2 分断です

 水沫君の姿はちゃんと確認できなかったけれど、声とほぼ同じ位置から、高い金属音が聞こえた。

 あっ! シュシュさんまで一緒に投げ出されてる!

 反射的に捕まえると、クルクル変わる逆さまの世界を見渡す。


 大聖堂、街、橋、河。

 目を凝らして見て、肌で感じて、記憶、確認。

 それでも、明確にこっちを害そうとしている影は見えない。


 そもそも今の音、私━━というか水沫君を害すための物だったんだろうか?


 取り敢えず、着地の準備をしなくちゃ。

 着地する場所……水沫君は……居た。大聖堂の上だ。誰かに襲われてたっぽいけど、今は一旦離れられたのかな?


 いや、それより自分の事しよう。何処に何が潜んでるか分からないから、無理に遠い建物の上には行かない。

 降りるなら、それなりに広い場所━━普通に真下の橋だ。


 そうして着地した瞬間、沢山の物に囲まれた。


 様々な角度で四方から囲む拳サイズに何百ものソレ。見覚えがある……何だっけ? 真ん中に球体が入ってて、リング状のものが幾つかそれの周りにあるんだけど……あ、思い出した天球儀だ。ふぅ、スッキリ〜。


 ……いや、そうじゃ無いな。


「私への こい の こーげき、リタイアになっちゃうのにいいの?」


 橋の真ん中で天球儀に囲まれている私を見据えるのは、金色の瞳。

 橋を渡り切った位置で、ちょっとビクッとしたけど、考え無しとか悪ノリでやったって訳じゃ無さそうだ。


「ぼ……僕は……吸血鬼だか━━」


 ほぼ反射的に動いた体。そして手は、血を振り払う動作に移す。

 ……どうしよう、この子遅い。

 すんなり行き過ぎて自分でもビックリしてる。表には出さないけど。


「━━らっ!?」


 彼の声が不自然に切れたのは、即座に移動した私が、首を手刀で胴から切り離したからだ。


「にゃー!?」


 頭に引っ付いてるシュシュさんがツッコミ気味に鳴いた。

 いや、……だって『吸血鬼』とか言うんだもん。


「試さなきゃでしょ?」

「にゃにゃ?」



「なにって……━━━━どれくらいで死ぬのか」



 首チョンパなんてすれば、普通の妖は即死する。

 けど……、


「よ、容赦無さ過ぎではぁぁああ!?」


 首を拾って直ぐにくっ付けた彼は、到底たった今斬首された奴の感想とは思えない軽さのセリフを吐いた。


 まぁ、想定の範囲内だ。

『碧空は今日も』の原作にも出てたんだよね、吸血鬼。


 彼等の再生能力は、妖より遥かに上。

 なるほど、即リタイアって聞いてたのに何でまだ生きてるのか不思議に思ってたんだけど、ちゃんと頭が一回破裂してるんだな。

 リタイアの仕掛けが意味を成さない種族だ。

 ダメじゃん博士。吸血鬼がテスターに居るの把握してなきゃ。


 ……狙うなら一撃必殺しなきゃ。


「……くびはダメだね。やっぱ心臓ねらわなきゃ」

「殺しは流石に御法度だと思います」

「いきごみのはなし。だいじょーぶ」


 痛くない痛くない。

 一瞬で抉るか潰すかしてあげるから。


「な、何故だか大丈夫な気配が微塵もしない!」


 もう一度距離を詰めようと思った刹那、またしても天球儀が私の周囲を取り囲んだ。

 何だろう? テンプレなら謎の光線的なので集中砲火されそうな配置だ。


 なんて思いながら踏み込んだはずなのに、私は動けていなかった。


 ━━は?


「き、君はそこで大人しくしていて下さい。シモンが大伴さんと真剣勝負をしたがっているんです!」


 上を見上げる事は普通に出来た。


 水沫君がシモンさんと空中戦してる。

 シモンさんは翼が無いから、建物の屋根から屋根に飛び移ったり大聖堂のピナクルを足場に兎に角跳んでる。凄いタフだね。

 あと水沫君、付き合い良いな。普通に飛べない位置で浮いてれば良いのに……。


「それじゃあ、僕はもう行きます」

「マジ? 私、ほーち?」

「だって、此処じゃシモンのかっこいい所が良く見えないですから」


 シュンとする少年に、犬耳と尻尾が付いてるように錯覚しちゃう。可愛いな。

 しかし、あまり呑気にしてはいられない。

 このままだと滅茶苦茶暇を持て余す事になる。

 何故ならさっきから動こうとしてるのに、一歩も進まないからだ。


 いや、全く動いてない訳じゃ無いんだよ?

 でも動いても直ぐ戻っちゃうの。

 これアレだね。時間を多分即座に巻き戻されちゃってる。

 周囲の天球儀に、チラリと視線を移す。

 勝手に動いてるな。


「言っておきますが、壊すのは不可能ですよ。触れられませんから」


 天球儀が一個、スススと寄ってきた。

 触ってみろと? ……あ、本当だ。

 片手で触ってみようとしたけれど、ソレはフワフワと感触が無い。

 触れた手の表面から沈んで、そのまま擦り抜けてしまう。


 ……幻覚かな? 沢山ある天球儀全部で私の動きを封じてると思わせてるの。

 で、本当は一つしか天球儀は此処に無いってパターン。

 若しくは、此処の天球儀が全部幻覚ってパターン。


 怪我はしないけど地味にウザい。


『ピンポンパンポーン♪ ハァイ! フリフリロリかギリギリセクシーになったミジンコ諸君、今どんな気分かね?』


 わー……アル博士の救済措置もとい【絶望のお知らせ】が始まったよ。

 この辺には見当たらないけれど、なんか一筋くらい向こうの通りとか、もうちょっと遠くから、怒りの雄叫びが多数聞こえてきた気がする。


『ふむ、諸君らの叫びは心地いいね。思わず二度寝しそうになるよ』


 寝ないで博士。


『さて、今回は諸君らの頭のおかしい衣装を正常な文明人の衣服に戻すための方法を伝授しよう』


 嗚呼……「頭おかしい衣装になった元凶作ったのはお前だろうがー」なんて叫びが聞こえる。


『では先ず『解除コード』と唱えたまえ』


 アル博士のその一言で、目の前の子は真っ青な表情で硬直し、私は4日前の事を思い出した。

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