70-1 分断です
(三人称)
二人組の男女が、尖り屋根の家の裏に辿り着いた。
「此処にあるのね」
「あぁ、鍵を探すように設定したコイツが反応してる」
10代半ばであろう男女。
その片方の手には、金属製の卵があった。
卵は淡く光って揺れている。探し物を見つける道具のようだ。
「よし! じゃあさっさと回収しましょう!」
女が明るい声を共に一歩踏み出した瞬間、足元から━━━━二人をバクンと、大きな口が飲み込んだ。
「どうなってんのー!?」
第一声は女のもの。
真っ白な部屋の中に閉じ込められたその表情は完全なる涙目である。
一方、男の方は表情が輝いていた。
「成る程……これが『〇〇しないと出られない部屋』トラップか!」
「なんで嬉しそうなのかな?」
「え? だってこんなん、彼女と閉じ込められれば美味しい展開しか待ってないのがお約束じゃん」
あっけらかんと返す男。
この男女、カップルで組んでいた。
リア充爆ぜるべし。
「さぁ、エロいお題を探そう! いざ18禁の世界へ!」
「嫌ァァアア!! 死ぬ程汚されるぅうう!!」
そんな二人の前に、沢山の金塊の入ったクリアケースと、紙が一枚現れる。
【最後まで立っていた者のみ出られる。30分以内にクリア出来れば、もれなく金塊1kgプレゼント】
「金塊は私のモンだだらっしゃああああ!! くたばれオラァアア!!」
大金の前に愛などゴミッ!!
金に目の眩んだ女の拳は、重く素早く的確だった。
歯が飛び、血が飛び、男が満身創痍で地べたに叩き付けられた時、部屋はもう消えていた。
「ふぅ、恐ろしい罠だったわね」
「お題、が……エロくない、だと……?」
「幼女が闊歩してるんだから配慮されたんでしょ」
「…………スヤァ」
こうじゃない。納得出来ない。
そんな腐った根性で投げた男の疑問に女が即答した瞬間、一気にモチベーションの下がった男は召された。
「ちょっと、アンタの試験でしょ。私だけでこの後頑張るとかダル過ぎなんだけど……?」
女は、肩に誰かの手が乗った感覚を覚えて後ろを向く。
「スコーンは、いらんかね?」
大きな梟のようなフォルムの老婆が、ギョロリと、これまた大きな眼で、覗き込んでいる。
あまりにも唐突なホラーである。
故に女は、気付くのが遅れた。老婆の腕に巻いてある黄色いスカーフに。
失格条件━━②黄色いスカーフを着けたエキストラに捕まった者。
問答無用で脱落。
***
私、七夜月。
引き続き水沫君に抱えられてるの。
「こっちも考えたわけさ! ラップ調の呪文を言わせさえしなきゃ、魔法少女化は避けてんだろって━━」
此方、ついさっきエンカウントした受験者のオッサン。
なんかムカついた。
「ふん!」 ←イッツ ミー!
「あの台詞必須じゃ無いんかぁあああい!」
セクシー魔法少女にしたった中年オジさんの、悲痛な叫びが五月蝿い。
あれから幾チームか魔法少女にしていた所、ある程度観察して襲ってくる慎重派が動き始めた。
結果、口が開かなくなるガス(※結界併用)を撒かれてビックリしたけれど、普通に敵じゃ無かった。
うん、あの台詞必須じゃ無いよ。博士と一緒に色んな意味で危なく無いように考えたんだよ。
水沫君が周囲を囲っていた結界から飛んで出れば、口はまたちゃんと開くようになった。
「粗方地獄になりましたね。……俺、多分この試験終わったらもう此処来れない」
至る所から「水沫ー!」とか「あの癖毛野郎見つけ次第殺す!」とか「あれ意外と俺に合う!」とか聞こえて来る。
「すこししたら、アル博士がもとにもどるホウホ、みんなに おしえてくれるよ?」
「そんな手筈でした? 駄目だ。今日ずっと色んな場所飛び回ってるから、訳分かんなくなってきた」
水沫君頑張って。博士がヘイトまた稼げば、水沫君への恨み辛みが大幅に消える筈だ。そもそも水沫君は私の運搬係なだけだから、彼に怒りが向いてるのがちょっと道理に反してるんだよ。
その時、キーンという、不快な音が頭に響いた。
体が宙に投げ出される。
水沫君、……今意図的に放り投げた?
「水沫君!?」
「姫様は着地に集中して下さい!!」




