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7-1 お喋りします

 簪は私より二つ年上だが、体型は私とそれ程変わらない。

 だから私のパジャマを貸しても、全く問題が無かった。


「すまぬ」

「なにが?」


 本当は敬語を使いたいけれど、簪が嫌がったので普通に話している。


「妾の事情に巻き込んでしまった事じゃ」

「べつに巻きこまれてないよ」


 ジィジ断ったからね。貴方達に寝床を提供しているのは外の天気が最悪だからだよ。


「……お主、ちと冷たくないか?」

「フツーよ。あなたのキョリ間がバグってるのよ」


 今もお布団がぴったりくっ付いてる。私達、そこまで仲良しじゃ無いのに……。

 あと麦穂、部屋から出ていく時に「姫様にようやくお友達が!」て感激してたけど、私友達ゼロじゃ無いもん! ←(※嘘)


「……そうじゃよな。半妖となど、本当は一緒に居たく無いじゃろう」

「ちがうよ。あかの他人だからだよ」

「半妖云々より酷い返しが来て妾泣きそう」


 ふわぁ……ねむい。


「ねよ、おそいし」

「そうじゃな」


 明かりを消して布団に入る。


 ザアアアァァ! ガタガタガタガタッ!


 駄目だ。雨と風が強過ぎて寝れない。何これ季節外れの台風?


「のう、もうちょっとお喋りしても良いか?」

「うん」


 簪も同じだったらしい。


「なに話す?」

「そうじゃな……お主は婚約者おるのか?」


 この子メンタルどうなってんの? 婚約者に裏切られて殺されかけて来たばっかだよね。その状況で婚約者の話しようってか?


「いないけど、この話つづけていいの?」

「妾、婚約者に思い入れは全く無いからの。じゃが恋バナとやらには興味がある」

「マセガキかよ」

「うむ、そうじゃ」


 今日一キリッと答えたな。


「顔は夜凪殿が一番好みじゃ」

「兄ちゃんかよ」

「泣き黒子のセクシー感めっちゃ好きなんじゃ!」


 ああ、そういえば泣き黒子の影ある美人だったな。前世の漫画でしか見た事ないけど。


「のう、夜凪殿との写真とかあったら見てみたいんじゃが……」

「ない。兄ちゃんとは、はなしたこともないしね」

「え?」

「わたし、父おやにきらわれてるから。だからウツシヨにはあんま行かないんだ。あっちのかぞくも、トコヨには来ない」


 常世に来ないのはジィジが出禁にしたからだけど。

 2年くらい前だったか。正月の挨拶に、阿保親父だけ来た事があった。アレは、偶然廊下で鉢合わせた私を愛用の仕込み刀でいきなり斬りつけたのである。ジィジ(多分)が駆けつけてアレを瀕死の重傷にしてくれなかったら死んでたね。


是是(ぜぜ)殿は、賢者と名高い御方じゃぞ? ……実の娘を何故そんな邪険に……」


 誰だそれ?? ていうかアレそんな名前だったのか、知らなかった。此処の在住者は皆『阿保』か『カス』か『クズ』って言ってるからね。


「さあ? どうでもいい」

「……嫌な事を聞いてしまった。すまぬ」

「べつに。……あなたは、きょうだいいるの?」


 本当は居るのを知っている。が、他の話題で切り込むと、とても会話が弾みそうに無い為、知らないフリをする。


「兄が3人と、姉が1人いるぞ」

「仲いい?」

「勿の論じゃ。ただ、姉様は去年嫁いでしもうたから……大分っ寂しい」


 ふーん、この頃は仲良かったんだ。原作では、目も当てられない程に兄妹の絆は壊滅していた。……何が原因であんな事になったんだろ?


「末の兄様も、そろそろ現世に留学されるしの」


 柊恩寺家の三男かぁ……兄ちゃんの友達になるキャラだ。そしてよく兄ちゃんとの二次創作CPになってた子だ。正直私も栄養補給に使ってた。


「そっか。……ねぇ、ハンヨウのとくせいの話、かぞくはしんじてないよね?」


 話していて分かる。やっぱりこの子は、普通に愛されている。


「そうじゃな。家族以外の使用人達も、凶暴化した者など居らんからな」


 綺麗な黒曜石の目が、青く光っているように見えた。

 鬼の特徴だ。暗い所では真っ直ぐ見据えられた時にそう見えると、漫画で読んだ。


 …………ああ、ずっと感じていた違和感と、ジィジが何を気にしていたのか、やっと分かった。


「ふぁ、ねむいね……ねる?」

「そうじゃな……いや、やっぱりまだ眠とうない。それどころか少し目が冴えた」

「……よし、悪いことしよう。ウツシヨの棒のスナックがし、それからアンパン●ンチョコ、たべたことある?」

「ほう、興味深い」


 電気は消したままだけれども、机の上の灯りを付ける。お目当ての物を数点手にすると、そこからはバリバリ音を立てて、暫くお菓子を食べた。

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