60-1 夢も希望も無ェです
間が開きましてすみません!
なろうも更新再開です!
(水沫視点)
「……かくれんぼ?」
意外に優しい単語に思えた。
いや、でもコレは隠れる側と探す側が誰なのかで難易度が変わってくるな。
『隠れているのは私だ。詳細は後日話すが、この都市の何処かに隠れている私を見つけ出したまえ』
都市!? 広範囲過ぎるだろ……。
千葉市か奈良市と同じ広さあるぞ此処。せめて夢の国範囲にするのが現実的だろ。
周りからも「無理無理無理無理!」とか「アホなの!?」ってツッコミが飛んでるぞ。
『そしてこの隠れんぼには、お邪魔虫が参加する』
完全にこっちの意見はスルーかい!
『……が、比較的無害なお邪魔虫だから安心したまえ。という訳で今回、臨時バイトで入ってくれたナナキュベータ君だ』
『水沫くーん!』
かつて麦穂姐さんの不興を買い、ガチで殺されかけた時の踵落としと同じくらい、ヤベェ威力で頭を強打された気分だった。
「何してんすか姫様ぁぁぁあああ!!??」
思わず叫んだ俺に、至る所から視線の集中砲火。
だがコレを突っ込むなというのが完全に無理な話だ。
スクリーンに写っていたのは、小さな石が付いているクリスマスのオーナメントみたいな星の杖と、食べ物が入ってそうなパックを持つ姫様だった。
見覚えの無いロップイヤーのウサ耳帽子まで被っている。
『みてのとーり、ジョシュやってる』
エッヘンと胸を張ってるところ悪いが師匠はどうした。俺がいない間、しっかり姫様の面倒を見ててくれてる筈だろ。真逆とは思うが、姫様撒いた?? ちょい姫様、場合によっては説教だぞ。
「師匠はどうしたんですか?」
『乃杏せんせ? ……いま、おとこのこを ハダカで土下座させて、たかわらいしてるよ』
成る程。幼児に見せて良い光景じゃ無ェな。
「後で師匠ブン殴る」
『みてみて! どらやきのカワもらった!』
余程嬉しい物を貰ったのか、あまり俺が怒ってる事には気付いていないらしい。
姫様の手には、透明なパックに何枚も押し込まれた柔らかそうな薄い焼き菓子……では無く?? ……いや、焼き菓子に入るか、どら焼きの皮があった。
それで買収されたのね。
ちょっと分かる。皮だけって妙に上手いんだよな。
……だがソレはソレ、コレはコレ。
「姫様、良いですか?今すぐそれを後ろのマッドサイエンティストに返してください。そいつは関わってはいけない奴です」
『博士、いいヒトよ? さっきから私をずっとみてた子ね、しばりあげたの』
「そうですか……は? 何そのいきなりの不審者情報!?」
気付かなかった。あー、でも考慮はすべきだったわ。
会場前の一件で、この辺ロリコンがウヨウヨ居るって分かってたのに!
『尚、縛り上げた哀れな生に……実験モル……では無く、子羊が此方』
姫様の登場で一瞬消えてたマッドが、不穏な単語を言い掛けつつ台車に乗せて運んで来た人影は小さかった。
てか会場に入る直前に見たお子様だ。つまり、シモンの主。
「坊ちゃぁぁああん!?」
シモンが目を剥く。
手足を縛られ口も猿轡を噛まされている少年は、涙で目を潤ませていた。
何人かが「絵面がヤベェ」「もう帰って良い?」等と引き攣っている。
『んー!』
「なんで……執事長は!?」
切羽詰まっているシモンの問いに、姫様が返す。
『しゅくじょをジロジロかげから かんしするなんて、しんしのショギョウじゃないって言ったら、なっとく してくれたよ』
姫様とマッドの後ろ側が映る。
優雅に茶を飲む老執事の姿があった。アイツもちゃっかりどら焼きの皮を貰っている。
「執事長!?」
『シモン君、我々の仕事は坊ちゃんを甘やかす事では有りません。時には厳しく躾なければならないのです』
「いや先に止めろよ!」
『坊ちゃんも10歳です。ご自分で気付いてくださると信じていたのですが、いやはや……私も修行が足りませなんだ……ふむ、柔らかく甘すぎない良い皮ですね。どちらのお店で購入を?』
坊ちゃんの教育方針については、どら焼きの皮に持って行かれてしまった。




