59-2 マッドはビッグバン煽り師です
(水沫視点)
続いてさる年の、都市を挙げての祭りの日。
奴は男女の性別を逆転させる薬をドローンで散布して、都市に住む12歳以上の性別を逆転させた。何故12歳以上かというと、薬の効き目がそれより下には出ないよう調整したらしい。
━━無垢な子どもを実験動物にするなど、紳士の所業では無い。
などと、奴は供述。
訳分からん薬をゲリラ散布してる時点で何が紳士じゃボケェエエ!! それに13歳も14歳も子どもだろうがァ!!
下手したら一生男の体とおさらばする前に戻れたから良かった……なんて思う訳が無く、俺の中での奴の評価は最底辺だ。
逃げたい。今すぐ全力クラウチングスタートで。
『早速だが本題に入らせてもらおう。まず筆記試験を受けている諸君、喜びたまえ。今年は大盤振る舞いだ。全員、例え答案が白紙だろうと合格とする!』
「「「はいぃぃい!?」」」
その叫びは、俺もシモンも含めたこの場に居る全員のものである。
受ける意味無ェじゃん!! 俺の頑張り無駄じゃん! それなら見直してる間ずっと寝とけば良か━━
『しかし、諸君等の屑以下の努力でもやはり評価はすべきだろう。よって、点数が低い者から死に易くするから、そのつもりで』
何をさせられるのか分からんが、もう一度答案用紙を捲ってガン見し始めた。
きっと今の俺は、瞳孔まで開いているに違いない。
「『死にやすく』って……流石に試験で殺しは……」
誰かが言う。
甘いな、奴ならやりかねない。
『当然、己が知識欲を競う場で殺しなどナンセンス』
え?
『私達は知識を尊ぶ生き物だ。獣では無い』
なんか、まともな事言ってる?
『つまり、精神的にとか社会的に死ぬと言う意味だから、安心したまえ』
「安心出来るかぁあああ!!」
「同じ事同じ立場で言われてみろ糞マッド!」
「『安心』の意味辞書で引いてこい!」
やっぱダメだわ! キラッキラした笑みで何つー事言いやがる。
スクリーン目掛けて物を投げ出す奴まで出てくる程、試験会場は混沌とした。
此処のスクリーンて、材料に世界樹の枝とか使ってる凄い物なんだが、何奴もこいつも頭に血が上りすぎてるなぁ。俺も血管が沢山切れたけどな!
『では早速、二次試験の内容を軽めに伝える』
試験会場内の殆どが、ツッコミと八つ当たりで暴れて疲れ切った頃に、奴は言った。
……優雅にコーヒーを飲みながら。
腹立つ!
『今年はパフォーマンスでは無い。毎年毎年、飽き飽きしていたんだ』
ゼェゼェと、肩で息をする者が大半の空間で、何人かの空気がピリつく。特にシモンの様子が変わった。
『だが、殺し合わせるのも如何なものかと思う。先ほども言ったが、私達は知識を尊ぶ生き物だからな』
ニコリと。奴の目が、俺を見据えた気がしたのは、きっと気のせいじゃ無い。
『ところ私は今日、興味深い話を聞いたんだ。なんでも……日本の常世には、『〇〇しなきゃ出られない部屋』なるものが実在するそうじゃないか?』
だ…………誰だ奴に要らん知識を与えたのはぁぁあああああ!!
そのジャンルはもうオワコンだろうが!
ていうか錬金術界隈で実在してなかった事の方が吃驚だよ!
何だよ! もう分かるよこの後何言われてやらされるのかよぉ!
『諸君等には、そんなお題を出される場所に、テスターと閉じ込めさせてもらう』
「「「え……」」」
「「「何ですって?」」」
……今、草食系と肉食系の反応が明らかに割れたな。
きっとテスターを恋人なんかに頼んでる連中だろう。
言わずもがな、前者の青い顔で固まってる方が草食系。後者がガツガツ行く肉食系。
肉食系ども、揃いも揃って何する気なんだ? 目が血走ってて怖ェよ……。
『ただ、一つの部屋に普通に閉じ込めたりはしない。そんな物は私が楽しくないからな。諸君等には、
【隠れんぼ】に尽力して貰おうじゃないか』




